統合失調症
Nature Reviews Disease Primers
2015年11月12日
Schizophrenia
統合失調症は、脳発達初期に影響を及ぼす多様な遺伝的背景と神経生物学的背景を有する慢性精神疾患で、幻覚、妄想、解体などの精神病症状と意欲障害や認知障害が組み合わさって発現する。この疾患の平均生涯有病率はわずか1%にも満たないが、都市化の程度(urbanicity)の違いと移民の分布の違いのために、有病率に明らかな地域差が認められる。統合失調症では、脳全体に特徴的病変は認められないが、特異的細胞集団と細胞間コミュニケーションにおいて、わずかな病理学的変化が見られる。統合失調症は、究極的には、脳の情報処理における認知障害ならびに行動障害といえる。実際、神経イメージング研究から、初回エピソードおよび慢性の統合失調症患者の情報処理機能に異常があることが示されている。薬物治療によって統合失調症の精神病症状が軽減されることはあるが、一般的に、そのような薬物が、社会的、認知的および職業的機能を十分に改善することはない。認知行動療法、認知機能改善療法および学習・就業支援などの心理社会的介入は治療効果を高めるが、適用に一貫性が見られない。何年も前から統合失調症の診断が一般的に行われていることを考えると、この疾患のリスクを有する者と初期段階にある者の同定、ならびに予防方法の探索は極めて重要である。
PrimeView
統合失調症は精神疾患の1つで、多くの場合、思春期に発症し、成人期に入ってから精神病症状が現れる。このPrimeViewでは、統合失調症の管理法、その発症機構と患者の健康への影響、およびこの疾患の特徴となる陽性症状、陰性症状および認知症状について要約する。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2015.67