慢性閉塞性肺疾患
Nature Reviews Disease Primers
2015年12月3日
Chronic obstructive pulmonary disease
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はよく見られる疾患で、世界でも高い罹患率と死亡率を示す。COPDは、可逆性の乏しい気道閉塞(肺活量から確認)を特徴とし、これには、空気とらえこみや労作性の息切れにつながる末梢気道の閉塞(慢性閉塞性細気管支炎)や肺気腫が含まれる。最もよく見られるCOPDの発症リスク因子は喫煙である。この他に、特に発展途上国では、屋内空気汚染物質への曝露などの環境要因によってCOPDリスクが影響される。COPDはすべての喫煙者に発症するわけではなく、その疾患感受性の原因は十分に解明されていない。COPDの発症機序はほとんど理解されていないが、通常、コルチコステロイド抵抗性を示す慢性炎症が関係している。また、COPDが酸化ストレスによる肺の加齢促進と修復機構の異常に関与していることも示されている。予後不良に結びつくため、主にウイルス性または細菌性感染により惹起される急性増悪は深刻である。安定期の管理では長時間作用性の吸入気管支拡張薬が中心となるが、好酸球性炎症や、より可逆性の高い気道閉塞のような、主に喘息の合併症状を有する患者にはコルチコステロイドが有用である。禁煙以外に疾患の進行を抑える治療法はない。この疾患の発症機序をより深く理解するため、また、疾患の活動性と進行を抑える新たな治療法を開発するためには、さらなる研究が必要である。
PrimeView
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、可逆性の乏しい気道閉塞を特徴とし、喫煙との強い関連を有している。このPrimeViewでは、COPDの疫学、診断および管理について要約し、気道で起こっている本疾患の発症機序を明示する。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2015.76