Primer
急性リウマチ熱とリウマチ性心疾患
Nature Reviews Disease Primers
2016年1月14日
Acute rheumatic fever and rheumatic heart disease
急性リウマチ熱(ARF)は、A型溶血連鎖球菌感染症が原因で生じた咽頭炎に対する自己免疫反応の結果である。ARFの1回の重度のエピソードまたは頻回の再発エピソードによる心臓弁の長期損傷は、リウマチ性心疾患(RHD)の名で知られており、世界中において資源が乏しい環境での罹患率と死亡率の顕著な原因となっている。近年、この疾患の病因に関するわれわれの理解は深まっている。しかし、診断方法はいまだにジョーンズ基準を用いた臨床兆候に頼っており、治療方法も含めて目覚しい改善には至っていない。実際、数十年もの間、治療の中心はペニシリンであり、ARFのエピソード後にRHDが発症する可能性やその重症度を変えるだけの治療法は他に存在しない。最近の進歩としては、①ARF患者をはじめ、RHDの早期発見に向けたスクリーニングへの心エコー診断の導入、②A群溶血連鎖球菌ワクチンの開発における進展、および③RHD患者の実体験(lived experience)とQOLを改善する必要性への焦点化、における促進が挙げられる。これらの進歩によって数年内に、この顧みられない疾患(世界中の特に貧困層を中心に影響を与える疾患)に光明が差す日がくるだろう。
PrimeView
急性リウマチ熱の1回または頻回のエピソードによって心臓弁が重度の損傷を受けると、慢性疾患であるリウマチ性心疾患をきたし、やがて心不全に至ることがある。このPrimeViewでは、これらの疾患が、発展途上国でもっともよく見られること、および、社会経済的不利と強く関係することについて明示する。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2015.84