Primer
卵円孔開存
Nature Reviews Disease Primers
2016年1月21日
Patent foramen ovale
卵円孔開存(PFO)はもっともよく見られる胎児起源の先天性心臓異常であり、世界の成人人口のおよそ25%に発生している。卵円孔は、胎児期では右心房から左心房に血液が直接流れ込むための正常な構造であり、これにより肺循環を迂回できるが、出産後に閉鎖不全が起きるとPFOになる。PFOは脳卒中のリスク上昇と関連することが以前から知られている。これには、PFOを通じて左心房に直接向かう血流シャントに静脈内血栓が流入したことによる奇異性塞栓症が起因となる機序が考えられている。しかし、無症状のPFO患者で脳卒中のリスクが上昇することを示した研究はなく、PFOが起因する脳卒中既往例でも脳卒中の再発リスクは低い。経頭蓋ドプラ法に加えて、経食道および経胸壁心エコー法の登場により、PFOは臨床現場で日常的に検出できるようになった。薬物治療に関しては抗血小板療法または抗凝固療法が推奨されている。現在のところ、経皮的インターベンション術によるPFO閉鎖を行っても、通常の薬物療法と比べて、脳卒中のリスク低下が見られないことが3つの大規模臨床試験で示されている。潜因性脳卒中とPFOのいずれの場合でも、至適治療戦略に関する多くの議論が残されている。このPrimerでは、PFOの疫学、発症機序、病態生理学、診断、スクリーニング、管理とQOLへの効果について考察する。
PrimeView
卵円孔は、胎児期では右心房から左心房に血液が直接流れ込むための正常な構造であり、これにより肺循環を迂回できるが、出産後に閉鎖不全が起きると卵円孔開存(PFO)になる。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2015.86