Primer
糖尿病網膜症
Nature Reviews Disease Primers
2016年3月17日
Diabetic retinopathy
糖尿病網膜症(DR)はよく見られる糖尿病合併症の1つで、中高齢患者の失明の主要な原因である。糖尿病患者の1/3がDRを発症する。増殖DRのような重症のDRは、網膜新生血管の異常成長が原因であり、網膜の中心部に滲出と浮腫が生じる。DRは、糖尿病、高血糖および高血圧の持続期間と強く関連している。DRはこれまで細小血管疾患と考えられていたが、網膜神経変性も関与している。DRの発症には、高血糖によって引き起こされた複雑な相互作用を有する病態生理的機構が関わっている。これらの機構には、遺伝的およびエピジェネティック因子をはじめ、フリーラジカル、終末糖化産物、炎症因子および血管内皮増殖因子(VEGF)の産生増加が関係している。DRの発症予防と進行抑制には、糖尿病患者の血糖および血圧の最適な管理が基本となる。抗VEGF療法は、現在、失明と関連のある糖尿病黄斑浮腫の適応を有しているが、増殖DR患者における重度の視力低下の予防にはレーザー光凝固術が行われる。これらの治療法に加えて、国民意識の高まりと網膜写真によるDRの定期スクリーニング実施の促進、さらに、疾患の初期段階に対する新しい治療法の開発によって、DR患者の転帰が改善されて失明が予防されるだろう。
PrimeView
糖尿病患者の1/3が糖尿病網膜症(DR)を発症する。このPrimeViewでは、糖尿病黄斑浮腫を伴う、あるいは伴わない軽症DRから重症の非増殖DRと増殖DRまで、さまざまな病期の病態生理に焦点を合わせて取りまとめる。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2016.12