クロストリジウム・ディフィシル感染症
Nature Reviews Disease Primers
2016年4月7日
Clostridium difficile infection
グラム陽性細菌であるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile )による大腸の感染は生命を脅かす可能性があり、特に高齢者や抗菌薬曝露によって腸内微生物叢の腸内菌共生バランス異常が発生した患者には注意が必要である。クロストリジウム・ディフィシルは医療関連感染性下痢症(医療ケア関連感染性下痢症)の主原因である。クロストリジウム・ディフィシルの生活環は抗菌薬、宿主免疫系および宿主微生物叢とその関連代謝物によって影響を受ける。クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の主なメディエーターは、クロストリジウム毒素の大部分を占めるトキシンA(TcdA)およびトキシンB(TcdB)であり、二元毒素CDTを産生する菌株もある。これらの毒素によって宿主の複雑な細胞応答カスケードが刺激され、CDIの主症状(下痢、炎症、組織壊死など)が発現する。クロストリジウム・ディフィシル菌の流行原因はほとんど分かっていない。反復感染することが多く消耗性になることがある。毒素の検出による診断は正確な疫学研究をはじめ、最適な管理と予防戦略に重要である。この感染症は特異的な抗菌薬で治療されることが多いが、反復感染には糞便微生物移植法が有望である。今後、クロストリジウム・ディフィシル感染に対する生物学的治療法は、主要な腸内微生物叢の特定の組合せに応じた方法になると思われる。
PrimeView
クロストリジウム・ディフィシル感染症はよく見られる医療関連感染性下痢症(感染性医療ケア関連下痢症)として増加傾向にある。このPrimeViewでは、この細菌による発症機構、特に抗菌薬投与後に発生しやすい腸内菌共生バランス異常について取りまとめる。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2016.20