Primer

外傷性脳損傷

Nature Reviews Disease Primers

2016年11月17日

Traumatic brain injuries

外傷性脳損傷
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外傷性脳損傷(TBI)は臨床的重症度に応じて、軽度、中等度および重度に分類される。軽度TBI(重症度が最も軽いもの)は脳震盪としても知られており、鈍的損傷による非穿通性の頭部外傷が起因することが多い。軽度TBIの最もよく研究されている発症機構として、外傷による軸索の伸長および剪断と、それによるびまん性軸索損傷の誘発が知られている。軽度TBIは臨床的背景に定義されているにもかかわらず、軽度TBI患者のニューロン損傷の有無を判定できる十分に検証されたイメージング技術または液性バイオマーカーは存在しない。ほとんどの軽度TBI患者は直ちに回復するが、脳震盪後症候群と呼ばれる症状が持続する症例も報告されており、その病態生理はほとんど明らかにされていない。脳震盪に至る程度、もしくは至らない程度(subconcussive)の頭部損傷の繰返しは、神経変性疾患である慢性外傷性脳症(CTE)と関連しており、コンタクトスポーツの選手や爆風に曝された兵士の死後検査ではCTEが認められる。重度の損傷やCTEから得られる洞察は、軽度TBIに関与する細胞プロセスと分子プロセスを解明するのに役立つだろう。タウ病理のPET検査に加えて、軸索損傷の同定と評価を行う軸索タンパク質のMRI技術および血液検査は、縦断的臨床研究でCTEの病態生理を解明するツールとして有望であるのみならず、CTEの診断ツールとしても開発されるだろう。CTEが頭部外傷の繰返しに起因するならば、スポーツ団体や議員によるルール変更によって予防できる可能性がある。

PrimeView
外傷性脳損傷(TBI)は、あらゆる年齢の人々に発症する可能性があり、世界の障害と死亡の主原因となっている。このPrimeViewでは、軸索損傷、炎症および血管障害を含むTBIの発症機構について取りまとめる。
本Primerの図解サマリー

doi: 10.1038/nrdp.2016.84

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