Primer
外傷性脊髄損傷
Nature Reviews Disease Primers
2017年4月27日
Traumatic spinal cord injury
外傷性の脊髄損傷(SCI)は患者の肉体的健康や社会的健康だけでなく職業的健康にも深刻な影響を及ぼす。SCIの人口動態では、高齢者の罹患率が増加する傾向にある。初回の物理的損傷(一次損傷)によって神経細胞とグリアの透過性が亢進されると、病態生理学的に二次的な損傷カスケードに移行し、その後数週間にわたって進行性細胞死や脊髄損傷が誘導される。その間、時間とともに病変部ではリモデリングが起こり、嚢胞空洞化やグリア性瘢痕が形成されて再生が著しく阻害される。この病理学的プロセスを模倣するために、いくつかの動物モデルとSCIの補完的行動試験が開発されたことで、前臨床的な、あるいはトランスレーショナルな神経保護療法と神経再生療法の開発に必要な基礎がもたらされた。診断では、患者病歴の聴取をはじめ、神経学的生理学的検査や脊髄の放射線画像検査が行われる。診断後、集中治療室での血行動態モニタリング、早期外科的減圧、昇圧薬投与などの速やかな介入が必要となり、可能であればメチルプレドニゾロンの投与が行われる。大腸や膀胱の機能障害、褥瘡の発生、感染症などのSCIの合併症の管理では、その患者のすべての損傷した椎間関節への対処が重要になる。
PrimeView
外傷性脊髄損傷では、初回の物理的事象により脊髄が損傷されると、病態生理学的機構が連鎖して、損傷が進んで神経学的機能が悪化する。このPrimeViewでは、外傷性脊髄損傷の病態生理学的機構を中心に取りまとめる。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2017.18