抗リン脂質抗体症候群
Nature Reviews Disease Primers
2018年1月11日
Antiphospholipid syndrome
抗リン脂質抗体症候群(APS)は、ループス性抗凝固因子、抗カルジオリピン抗体、抗β2グリコプロテイン1抗体のような抗リン脂質抗体と呼ばれる自己抗体の存在を特徴とする自己免疫疾患である。APSは、静脈血栓症や動脈血栓症だけでなく、微小血管血栓症や産科合併症などのさまざまな臨床表現型を呈する。APSの病態生理学的特徴としては血栓症が顕著であるが、補体活性化のような他の要因も重要な所見である。APSによる血栓症状の予防には生活習慣の改善が有用であるが、高リスク患者では、低用量アスピリンが使用される。血栓性イベントの予防と治療では、ビタミンK拮抗薬の投与が中心になる。免疫抑制療法および抗補体療法については、逸話的な報告はあるものの、十分な検証は行われていない。APSは、原因不明の習慣流産や胎児死亡に加えて、子癇前症、早産または胎盤不全の原因となる胎児成長制限などの後期産科症状を含む不育症とも関連している。現在の産科症状の予防では、低用量アスピリンおよび低分子量ヘパリン、またはそれらの併用が基本になっている。その結果、妊娠転帰が改善され、70%以上の妊婦が生児出生を達成している。ヒドロキシクロロキンおよびプラバスタチンによって、妊娠転帰がさらに改善される可能性が報告されているが、今後、臨床試験によりこれらの効果を検証する必要がある。
PrimeView
抗リン脂質抗体症候群(APS)は、ループス性抗凝固因子、抗カルジオリピン抗体および抗β2グリコプロテイン1抗体などの抗リン脂質抗体の存在を特徴とする自己免疫疾患である。このPrimeViewでは、血栓症および産科合併症を主徴とするAPSの病態生理学を中心に解説する。
本Primerの図解サマリー
doi: 10.1038/nrdp.2017.103