Nature Astronomy に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
A dynamical systems description of privilege, power and leadership in academia
doi: 10.1038/s41550-019-0961-2
学術界における公平性を妨げる複雑な問題は、コンフリクトを力学系として記述するという、社会科学で開発された方法の観点から理解され、閉鎖的な文化への固執と単純な決定の不適切性を説明する。
Diversity and inclusion in Australian astronomy
doi: 10.1038/s41550-019-0954-1
オーストラリアの大学や研究機関のもっとも有望な画期的取り組みとともに、オーストラリアにおける多様性、文化、風土にインパクトを与える全国的なプログラムを概観する。
Promoting gender equality in the European astronomical community
doi: 10.1038/s41550-019-0936-3
ヨーロッパで男女不平等に立ち向かう長年の献身的な努力は、前向きな流れを見せているが、依然として男女平等は達成されていない。今月号のPerspectiveでは、科学技術におけるごく最近の取り組みを、特に天文学の分野に注目して報告する。
PhD bridge programmes as engines for access, diversity and inclusion
doi: 10.1038/s41550-019-0962-1
PhDブリッジプログラム(PhD bridge programme)は、過小代表グループから来る学生向けに、利用性と包摂を向上させるためのアセット・ベースドのモデルを提供する。論文では米国でのよく知られたいくつかのPhDブリッジプログラムを紹介し、それらの経験から学んだ教訓を議論する。
Water vapour in the atmosphere of the habitable-zone eight-Earth-mass planet K2-18 b
doi: 10.1038/s41550-019-0878-9
K2-18 bはその中心星の標準的なハビタブルゾーン内に位置する、地球質量のおよそ8倍の質量をもつ惑星である。ハッブル宇宙望遠鏡によるスペクトル観測結果は、K2-18 b周辺のかなり(スペクトルモデルにも依るが、最高数十パーセント)の量の水蒸気だけでなく、無視できない量のH2–Heを含む大気の存在を示している。
Uniformly hot nightside temperatures on short-period gas giants
doi: 10.1038/s41550-019-0859-z
12個のホットジュピターのサンプルから得られた位相曲線は、この種の惑星がその中心星から受ける放射にかかわらず、同じ夜側の温度(およそ1,100 K)を保っていることを示している。この効果は、夜側半球での雲の同じ化学物質の光学的に厚い層によるものである。
A super-Earth and two sub-Neptunes transiting the nearby and quiet M dwarf TOI-270
doi: 10.1038/s41550-019-0845-5
トランジット系外惑星探索衛星(TESS)により、サブネプチューンの大きさの2個の惑星と、スーパーアースの大きさの1個の惑星をもつ、近傍の明るい静穏なM型矮星が同定された。この星系は、トランジットのタイミングの変動、視線速度の計測、透過スペクトルの追跡研究に最適である。
Kinematic detection of a planet carving a gap in a protoplanetary disk
doi: 10.1038/s41550-019-0852-6
Pinteたちが、若い恒星HD 97048から130天文単位のところを軌道運動する、木星の数倍の質量をもつ惑星を力学的に検出したことについて報告する。惑星の動径方向の位置は、原始惑星系円盤のガスと塵の成分に見られる間隙と一致していることから、少なくともいくつかの間隙が惑星の存在に関連していることを示している。
Molecular clouds in the Cosmic Snake normal star-forming galaxy 8 billion years ago
doi: 10.1038/s41550-019-0874-0
z = 1.036に位置する銀河系の祖先に、現在の類似天体よりも大きな質量と表面密度、また超音速の乱流を伴った17個の分子雲が確認されている。それらの特性は、遠方の銀河に優勢な周囲の厳しい星間状条件を反映しており、それらが乱流状態の銀河ガス円盤の分裂によって形成されたことを示唆する。
The brightening of the pulsar wind nebula of PSR B0540−69 after its spin-down-rate transition
doi: 10.1038/s41550-019-0853-5
PSR B0540-69周辺のX線パルサー風星雲は、パルサーのスピンダウン速度の変化の後、3分の1ほど明るくなった。この現象は、ほかのパルサーではいままでこのように観測されたことがなく、パルサーの磁気圏の急激な変化によるものであると考えられる。
Magnetic field strengths of hot Jupiters from signals of star–planet interactions
doi: 10.1038/s41550-019-0840-x
恒星と惑星の磁気相互作用に基づいた技術を用いて、中心星に近い4つの巨大ガス惑星の計測された磁場強度が報告される。惑星の内部熱流束に基づく予測に近く、20Gから120Gまでの範囲の値だが、ダイナモのスケーリング則から予測されるものより10〜100倍大きい。
Evidence for an additional planet in the β Pictoris system
doi: 10.1038/s41550-019-0857-1
HARPSの15年にわたる観測によって得られた若いがか座β星の視線速度のデータから、木星の約9倍の質量をもつ巨大ガス惑星で、中心星からおよそ2.4天文単位という、理論的な雪線付近で楕円軌道を描いているβ Pic cの証拠が示されている。恒星の近くに位置する、β Pic bおよびcは、中心星の近くに位置しており、コア集積によって in situで形成された可能性がある。
Rotational evolution of the Vela pulsar during the 2016 glitch
doi: 10.1038/s41550-019-0844-6
2016年のほ座パルサーに起こったグリッチが詳細に研究され、この事象の直前に中性子星の自転の奇妙な減速が明らかになり、中性子星に関する物理学のいくつかの理論的な予測が確かめられた。
Size diversity of old Large Magellanic Cloud clusters as determined by internal dynamical evolution
doi: 10.1038/s41550-019-0865-1
LMC内の老いた星団の大きさの範囲は、必ずしもそれらの内部にある連星系ブラックホールの存在を意味するものではなく、その広がりは、内部の力学的進化と形成条件の結果として説明することができる。Ferraroたちは、5個の老いたLMCの星団を観測することで、力学的に若い兆候を明らかにする。
Are Saturn’s rings actually young?
doi: 10.1038/s41550-019-0876-y
探査機カッシーニが土星とその環の間を飛行したときの、カッシーニの最終ミッションによって得られた計測結果は、環が惑星自身よりもかなり若いとの主張がなされていた。しかし、この解釈は矛盾点のすべてを解決せず、土星の環の年齢の疑問は未解決のままである。
Low thermal conductivity boulder with high porosity identified on C-type asteroid (162173) Ryugu
doi: 10.1038/s41550-019-0832-x
MASCOTランダーは、小惑星リュウグウの表面の巨礫を間近で観測した。巨礫の低い熱慣性は岩石質の巨礫というより、細かなレゴリスや彗星に近く、高い空隙率と低い引っ張り強度を示している。軌道測定の結果からは、リュウグウの表面が似たような巨礫で覆われていることが確認される。
Room-temperature heterodyne terahertz detection with quantum-level sensitivity
doi: 10.1038/s41550-019-0828-6
宇宙全域からの光子のかすかなフラックスの測定には、ノイズを最小化するために冷却された高感度テラヘルツ検出器を必要とする。プラズモニクスに基づいた半導体を有する光混合器を用いて高い周波数を低い周波数に変換することで、テラヘルツ検出を室温で実現できる。
Towards quantum-limited coherent detection of terahertz waves in charge-neutral graphene
doi: 10.1038/s41550-019-0843-7
ディラック点にドープされたグラフェンを使って、90GHzから700GHzまで、また将来的にはテラヘルツの範囲全体にわたって、高感度で信号を検出することができる。そのようなセンサーは、次世代の宇宙望遠鏡に用いられる可能性があり、超電導技術をしのぐ、量子限界に達する検出を行えると期待される。
First light demonstration of the integrated superconducting spectrometer
doi: 10.1038/s41550-019-0850-8
超伝導集積回路を用いて、遠方の銀河から届くミリメートル、サブミリメートル、および遠赤外の光をフィルタリングすることにより、プロトタイプの分光器を、広帯域の分光撮像素子に拡張できる、小型で高感度の広帯域分光器にできることが期待される。
Energetic charged particle measurements from Voyager 2 at the heliopause and beyond
doi: 10.1038/s41550-019-0927-4
ボイジャー2号に搭載された低エネルギー荷電粒子計測器を用いた、太陽圏界面および星間物質からの高エネルギーイオンと電子の計測結果が示された。ボイジャー2号のヘリオポースの通過は、太陽風の状況が異なっているにも関わらず、ボイジャー1号の状況と似ている。
Magnetic field and particle measurements made by Voyager 2 at and near the heliopause
doi: 10.1038/s41550-019-0920-y
この論文では、探査機ボイジャー2号が、太陽圏からヘリオシースおよびヘリオポーズを経て星間媒質へと通り抜けるときに検出した磁場と高エネルギー粒子の測定結果が報告されている。モデルによって予測されるとおり、ボイジャー2号はヘリオポーズに到達する前に、「磁気バリア」に遭遇した。
Cosmic ray measurements from Voyager 2 as it crossed into interstellar space
doi: 10.1038/s41550-019-0928-3
ボイジャー2号がヘリオポーズを通過したとき、太陽圏内部を起源とする低エネルギーイオンの測定値の急激な減少と、銀河系からの宇宙線の増加を観測しており、これは、ボイジャー1号が捉えたいかなる前駆的な磁束管も伴っていなかった。ヘリオポーズの外側には境界層が存在する。
Voyager 2 plasma observations of the heliopause and interstellar medium
doi: 10.1038/s41550-019-0929-2
太陽圏を脱出するとき、ボイジャー2号のプラズマ計測器は、1.5auという広がりを有する境界領域に相当する変化に引き続き、はるかに薄い境界層を観測した後、ヘリオポーズに到達した。ヘリオポーズの外側では、非常に局所的な星間物質は予測よりも高温であることが明らかになった。
Plasma densities near and beyond the heliopause from the Voyager 1 and 2 plasma wave instruments
doi: 10.1038/s41550-019-0918-5
このArticleでは、ボイジャー探査機が太陽圏から星間空間に通り抜けたさいのプラズマ波計測器による測定結果について報告されている。ボイジャー2号の計測器は、数年前にボイジャー1号が記録したのと同様に、20倍の電子密度の増加を記録した。
Enabling Martian habitability with silica aerogel via the solid-state greenhouse effect
doi: 10.1038/s41550-019-0813-0
実験室実験と数値モデルの組合せから、火星の温暖な領域に広がったシリカエアロゲルの厚さ2〜3センチメートルの層が、通年にわたる液体の水をもたらす表面環境を維持する可能性があることが示される。そのようなアプローチは、光合成活動する生命体にとって生存可能な環境を生み出す可能性がある。
Birkeland currents in Jupiter’s magnetosphere observed by the polar-orbiting Juno spacecraft
doi: 10.1038/s41550-019-0819-7
木星の極領域における磁場擾乱の探査機ジュノーによる観測から、予測されたよりも弱く本質的にフィラメント状のオーロラを伴う、ビルケランド電流が示される。北極および南極のオーロラの間では非対称性が観測される。
Migration of D-type asteroids from the outer Solar System inferred from carbonate in meteorites
doi: 10.1038/s41550-019-0801-4
起源天体をD型小惑星とするタギシュ・レイク(Tagish Lake) 隕石の一様に高い13C/12C 比からは、少なくともいくつかのD型小惑星が低温の外惑星領域で 13C豊富なCO2氷のリザーバーから形成され、その後、内側に移動したことが示唆される。
Evidence of thrust faulting and widespread contraction of Ceres
doi: 10.1038/s41550-019-0803-2
衝上断層による急斜面、隆起それに亀裂のような収縮の特性は、水星や火星などの巨大なケイ酸塩の天体に典型的である。ケレスの同様な特徴の証拠は、この氷の天体が大規模に収縮した可能性を示唆する。
A three-dimensional map of the hot Local Bubble using diffuse interstellar bands
doi: 10.1038/s41550-019-0814-z
太陽を含むスーパーバブルは、希薄で非常に高温な物質で満たされている。Farhangらは拡散星間バンド(DIB)を用いた局所バブルの3次元マップを作成して、意外にも2つのDIBの担体がバブルそれ自体の内部に存在することを示す。λ5,780のDIB担体はλ5,797と比較すると硬い。
The prevalence of repeating fast radio bursts
doi: 10.1038/s41550-019-0831-y
72個の既知の高速電波バースト(FRB)の発生源のうち、反復するバーストが観測されているのはわずか2個である。V Ravi は、反復しないFRBの体積発生率を計算することにより、大部分のFRBが一回限りの現象であるとすると、その割には、候補となる激変的な前駆現象が十分に存在せず、したがってほとんどのFRBは反復するに違いないことを示している。
Uncovering the birth of the Milky Way through accurate stellar ages with Gaia
doi: 10.1038/s41550-019-0829-5
天の川ハローに存在する恒星は、厚い円盤部の恒星に比べて年老いており、その年齢分布には10億歳のところにカットオフがあり、天の川へのガイア–エンケラドスの降着を特徴づけている。赤色系列のハローの星は、天の川の前駆天体中で最初に形成された星であり、長らく探し求められてきた in situハローを構成している。
A Hubble constant measurement from superluminal motion of the jet in GW170817
doi: 10.1038/s41550-019-0796-x
GW170817の重力波と新しい電波観測による電磁波データを組み合わせて、ハッブル定数H0の改良された計測値として、H0 = 70.3 +5.3 -5.0 km s -1 Mpc-1が導出される。電波データを伴った GW170817のような事象がさらに15例あれば、プランク衛星の観測値によるハッブル定数と、宇宙距離梯子を用いたセファイド変光星-超新星の距離によるハッブル定数との不一致を解消できる可能性がある。
Realistic simulations of galaxy formation in f(R) modified gravity
doi: 10.1038/s41550-019-0823-y
修正重力を用いた完全な宇宙論的流体力学シミュレーションにより、円盤銀河が形成され、それらの恒星の特性はわずかしか影響を受けないことが見出されている。修正重力は、スクエア・キロメートル・アレイで観測されうる大規模構造に痕跡を残す。
Early formation of moons around large trans-Neptunian objects via giant impacts
doi: 10.1038/s41550-019-0797-9
1,000キロメートルより大きなすべて太陽系外縁天体には衛星がある。流体力学的なシミュレーションからは、そのような衛星が、海王星の移動の前に発生した巨大衝突によって形成され、104〜106年の間、衛星を流体様の状態に保っていたことが示されている。
Trans-Neptunian binaries as evidence for planetesimal formation by the streaming instability
doi: 10.1038/s41550-019-0806-z
太陽系外縁天体の連星の順行する向きが卓越することと傾斜角の広がった分布は、流動不安定性に牽引される微惑星形成の三次元流体力学シミュレーションによって再現され、太陽系原始惑星系円盤における流動不安定性の活性化の証拠を示す。
A sub-Neptune exoplanet with a low-metallicity methane-depleted atmosphere and Mie-scattering clouds
doi: 10.1038/s41550-019-0800-5
ハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡による広範囲の観測から、サブネプチューン太陽系外惑星GJ 3470 bに水素が豊富で金属含有量の低い大気が明らかになった。水蒸気は検出されたが、おそらく光化学的あるいは熱的過程のため、この惑星には意外なほどメタンが枯渇している。ミー散乱するサブミリメートルの大きさの雲粒子は、分子の示す特徴を短い波長では部分的に弱めるが、3マイクロメートル以上では概して透明である。
Multi-filament gas inflows fuelling young star-forming galaxies
doi: 10.1038/s41550-019-0791-2
高赤方偏移ライマンαエミッターの速度マップの理論的なモデルは、中心銀河の星形成率と角運動量を高めるのに十分なガス流入を示しており、このことから、低温ガス降着が星形成のピーク時に銀河を形成していることが示唆される。
Suppressed effective viscosity in the bulk intergalactic plasma
doi: 10.1038/s41550-019-0794-z
かみのけ座銀河団のX線観測から、プラズマ不安定性によって引き起こされる微小揺らぎから外れて散乱される粒子、あるいは局所磁場に対して異方的な輸送過程のどちらかによって増大したプラズマ衝突率が示されている。
Observations of a pre-merger shock in colliding clusters of galaxies
doi: 10.1038/s41550-019-0798-8
合体に特有な衝撃波が、大規模に合体しつつある2つの銀河団の初期段階に発見され、合体の赤道面に沿って外方に伝播している。2つの銀河団の急速な接近により、合体の軸に沿ったガスが強く圧縮されている。
Observational evidence for bar formation in disk galaxies via cluster–cluster interaction
doi: 10.1038/s41550-019-0799-7
スローン・サーベイで得られた近傍の105個の銀河団の研究から、相互作用する銀河団中には棒状銀河がより高い頻度で出現することが示され、このことは、銀河団どうしの間の相互作用がバーの形成において重要な役割を果たす可能性を示している。
A high-mass planetary nebula in a Galactic open cluster
doi: 10.1038/s41550-019-0796-x
Fragkouたちは、惑星状星雲BMP J1613-5406と銀河系の散開星団NGC 6067の関連を支持する複数の証拠を明らかにしている。星団内の恒星は、太陽質量のおよそ5倍のところで主系列星から外れて進化し、この惑星状星雲が大質量の前駆天体をもっていたことが示唆され、惑星状星雲の前駆天体の質量範囲に関する理論的な予測が支持される。
The gravitational-wave detection of exoplanets orbiting white dwarf binaries using LISA
doi: 10.1038/s41550-019-0807-y
TamaniniとDanielskiは、二重白色矮星系のまわりを軌道運動する(大質量の)太陽系外惑星を、重力波を用いて検出するには、LISAが十分な感度を備えていることを示している。この種族の太陽系外惑星はほかの手段によっては探ることができず、検出できれば、銀河系やマゼラン雲に多数あると考えられる惑星が明らかになるだろう。
A stacked prism lens concept for next-generation hard X-ray telescopes
doi: 10.1038/s41550-019-0795-y
光リソグラフィーで作成された高分子化合物のディスクを積み重ねて、将来の硬X線望遠鏡用の軽量かつモジュール式の光学系が得られる可能性があり、これは現在の望遠鏡の角分解能を維持する一方で、有効面積を増加させる。
The next exoplanet mission to fly
doi: 10.1038/s41550-019-0886-9
太陽系外惑星の探査衛星CHEOPS(CHaracterising ExOPlanet Satellite)は今年後半の打ち上げを予定されている。欧州宇宙機関(ESA)のプロジェクトの研究者K Isaakと研究責任者のW Benzが、ESAでは初となる、明るい恒星を軌道運動している既知の太陽系外惑星の追観測に特化した科学ミッションの概観を述べる。
Observational properties of extreme supernovae
doi: 10.1038/s41550-019-0854-4
極端な超新星の種類である、超高輝度超新星および高速青色可視トランジェントという、進みの速い分野における最新の観測的な進展を概説する。次の10年は大型シノプティック・サーベイ望遠鏡のような研究施設の出現で、より多くのそのような天体の事例を検出できるだろう。
Observational properties of thermonuclear supernovae
doi: 10.1038/s41550-019-0858-0
白色矮星の爆発が関与している超新星である熱核反応超新星、そして特にIa型超新星は、宇宙の膨張を観測により測定するための不可欠な探査手段になっている。しかし、我々はこれらの天体、特に超新星爆発を引き起こす前駆天体の範囲について、まだ完全には理解していない。将来の観測によって、私たちの理解をさらに進めることができるだろう。
New regimes in the observation of core-collapse supernovae
doi: 10.1038/s41550-019-0856-2
大質量星の爆発である重力崩壊型超新星の多様性が、観測施設と技術の発展に後押しされて、最近大きく増加している。Modjaz、Gutiérrez、そしてArcaviは、観測による現在の分類を調査し、分類の境界が不明確になリ始めている状況かどうかを議論して、今後得られるであろう超新星の大量のサンプルに期待している。
A new population of dust from stellar explosions among meteoritic stardust
doi: 10.1038/s41550-019-0788-x
赤色巨星が起源であると考えられている少量だが重要な割合のケイ酸塩の宇宙塵は、その考えに反して超新星を起源とすることが示され、これにより、200ナノメートルよりも大きなプレソーラーケイ酸塩のうち超新星起源の塵の割合はこれまで推測されていたよりもかなり高くなる。
Time variation of Jupiter’s internal magnetic field consistent with zonal wind advection
doi: 10.1038/s41550-019-0772-5
木星磁場の系統的な変化を、パイオニア10号からジュノーまで、複数の探査機による最近の45年間に得られたすべてのデータを照合して明らかにすることができる。そのような変動は、帯状風に起因すると考えられ、これは深部の大気層から磁場を移動させる。
Molybdenum isotopic evidence for the late accretion of outer Solar System material to Earth
doi: 10.1038/s41550-019-0779-y
隕石中のモリブデンの測定により、地球が太陽系外縁部(地球の水や揮発性物質の起源であると考えられている)から炭素質物質を降着させた時期が、地球の成長史の後期に絞り込まれ、これはおそらく月を形成した事象と同じであろう。
A stellar flare−coronal mass ejection event revealed by X-ray plasma motions
doi: 10.1038/s41550-019-0781-4
活動的な恒星HR 9024のチャンドラX線観測衛星の分光観測から、恒星フレアとその後に続くコロナ質量放出を示す、プラズマ運動の証拠が得られる。この事象から、太陽以外の恒星のコロナ質量放出、およびはるかに活動性の低い星である太陽との類似点についての重要な情報が得られる。
Two accreting protoplanets around the young star PDS 70
doi: 10.1038/s41550-019-0780-5
2つのHα放射のピークがTタウリ型星PDS 70の円盤内に検出され、1つは原始惑星PDS 70 bに対応し、もう一つは、およそ35天文単位のところに位置して木星の数倍の質量をもつ、降着を受けている2番目の惑星に関係する。2つの原始惑星はほぼ2:1の平均運動共鳴にあり、惑星形成の間に起きた巨大惑星の移動というシナリオを支持する。
A 10,000-solar-mass black hole in the nucleus of a bulgeless dwarf galaxy
doi: 10.1038/s41550-019-0790-3
降着円盤とHα輝線の変動の間の83分という例外的に小さな遅延が、矮小銀河NGC 4395の核から報告されている。ここから示唆される太陽のおよそ10,000倍というブラックホール質量は、質量−速度の分散関係に矛盾しない。
Low-frequency gravity waves in blue supergiants revealed by high-precision space photometry
doi: 10.1038/s41550-019-0768-1
Bowman たちは探査機K2およびTESSの精度の高さを活用することにより、銀河系およびマゼラン雲に存在する青色超巨星において、それらの内部での低周波数の重力波に起因する変動現象を検出した。
Rotational disruption of dust grains by radiative torques in strong radiation fields
doi: 10.1038/s41550-019-0763-6
小さな粒子(数十ナノメートルの大きさ)がさらに大きな粒子に対して卓越していることと、これに対応する、大質量星および超新星周囲のHII領域からの近赤外から中赤外の超過放射は、説明が困難であった。Hoangたちは、大きなダスト粒子に対する放射トルクの崩壊という、観測による絞り込みと一致する方法を提唱する。
Magnetic field morphology in interstellar clouds with the velocity gradient technique
doi: 10.1038/s41550-019-0769-0
速度勾配法を用いて、低質量の5つの星形成分子雲の磁場配向と磁化が測定され、収縮している領域がこれらの分子雲の体積のごく一部を構成することも見出された。
Observing hydrogen from the stratosphere
doi: 10.1038/s41550-019-0866-0
銀河間物質の微かな赤方偏移放射を観測する気球(FIREBall-2)は、紫外光の複数天体の分光観測を行うミッションであり、地球の成層圏の最上部からの z ≈ 0.7 に位置する銀河を取り巻いている微かなガスを観測するように設計されている。プロジェクトの研究者であるErika Hamdenが解説する。
The natural history of ‘Oumuamua
doi: 10.1038/s41550-019-0816-x
オウムアムアは、太陽系外から侵入して我々の太陽系で初めて観測され幾分か詳細に調べられた恒星間天体である。今月号のPerspectiveは、オウムアムアの訪問の間に得られたデータを概説し、その起源や特性を議論して、オウムアムアが地球外生命体の作ったものであるという理論に根拠がないと結論づける。
GEMS and the devil in their details
doi: 10.1038/s41550-019-0833-9
Reply to: GEMS and the devil in their details
doi: 10.1038/s41550-019-0834-8
A brightening of Jupiter’s auroral 7.8-μm CH4 emission during a solar-wind compression
doi: 10.1038/s41550-019-0743-x
木星の両極での7.8μmのメタン放射の増光が、2017年1月の太陽風圧縮の到来と同時に観測され、木星の磁気圏と電気的に中性である成層圏との間の強い結びつきが明らかになっている。
An intense thermospheric jet on Titan
doi: 10.1038/s41550-019-0749-4
タイタンのそれほど探査されていない上部中間圏と熱圏に由来する分子輝線は、高度1,000キロメートルで毎秒340メートルの速度に達する、自転と同じ方向に流れる強力なジェットを明らかにする。
Mapping Saturn using deep learning
doi: 10.1038/s41550-019-0753-8
新しい深層学習アルゴリズムであるPlanetNetは、惑星の広く、不均質な領域にわたって、空間特性やスペクトル特性を速やかにかつ正確にマップ化することができる。土星で発生した2008年の嵐の主要成分が正確に描写され、輻射輸送モデルでさらに深く探査されるべき領域を示す。
Laboratory evidence for co-condensed oxygen- and carbon-rich meteoritic stardust from nova outbursts
doi: 10.1038/s41550-019-0757-4
炭素に富んだ物質と、酸素に富んだ物質が、CO新星爆発に由来するプレソーラー粒子中に混在し、これが隕石LaPaz Icefield 031117中に発見された。したがって、炭素と酸素の両方の濃縮は同じ星周環境で発生しうることになり、これまでの仮定に反している。
Evidence for the accretion origin of halo stars with an extreme r-process enhancement
doi: 10.1038/s41550-019-0764-5
天の川銀河は、矮小銀河とそれらの星を降着させたと考えられる。今回Xingたちはr過程の元素に富みα元素の欠乏した銀河系ハロー星を研究し、この星が、こぐま座銀河に似て最近降着した矮小銀河内で形成されたらしいことを示唆している。
Polarized reflected light from the Spica binary system
doi: 10.1038/s41550-019-0738-7
連星系であるスピカの高精度偏光観測から、伴星から離れた主星からの、またはその逆の光量が、入射光の数パーセントであることが明らかになった。こうした観測は、近接連星系の同定に有用となるだろう。
A corridor of exposed ice-rich bedrock across Titan’s tropical region
doi: 10.1038/s41550-019-0756-5
探査機カッシーニによって行われたタイタンの赤外線スペクトルマップの主成分分析は、タイタンの赤道表面の主要な特性を覆い隠す大気の影響を効率的に取り除くことにより、そうした特性を明らかにした。地形学的あるいは表面下の計測と相関関係のない、露出した氷の岩盤の帯が、6,300キロメートルの長さにわたって見られ、有機堆積物に取り囲まれている。
The changing temperature of the nucleus of comet 67P induced by morphological and seasonal effects
doi: 10.1038/s41550-019-0740-0
彗星67Pの核の日周性および季節性の温度変化は、2014年の2カ月の間、探査機ロゼッタの撮像分光装置VIRTISによってモニターされた。核は熱的に均一のように見え、その温度の変動は主に自己加熱と太陽までの距離に支配されている。
A cometary building block in a primitive asteroidal meteorite
doi: 10.1038/s41550-019-0737-8
隕石LaPaz Icefield 02342内の炭素に富んだ砕屑物の組成と特徴は、この砕屑物が彗星と氷天体に関連した物質からなることを示唆する。砕屑物は、おそらく太陽系外縁部で形成され、内側へ輸送されて、最終的にLaPazの親天体へ降着したのだろう。
Identification of the long stellar stream of the prototypical massive globular cluster ω Centauri
doi: 10.1038/s41550-019-0751-x
恒星ストリームは、潮汐力によって引き裂かれた球状星団が引き伸ばされてできた残骸である。恒星ストリームを同定するためのデータ駆動型探索は、天の川銀河内でもっとも大質量の球状星団である、ケンタウルス座のω星団からの恒星ストリームの物質を明らかにする。
The progress of extraterrestrial regolith-sampling robots
doi: 10.1038/s41550-019-0804-1
太陽系探査の将来は、惑星を含む岩石質の天体の地下にある。ロボットは、地下を探査するのに費用効果が比較的高く安全な手法をもたらす。今月号のPerspectiveでは、ロボットを使って掘削しレゴリスをサンプリングする方法における最近の成果について概要を述べ、中国の将来の宇宙探査計画の概要で締めくくる。
Meteoritic evidence of a late superflare as source of 7Be in the early Solar System
doi: 10.1038/s41550-019-0716-0
エフレモフカ隕石中に存在するカルシウムとアルミニウムに富んだ包有物(CAI)のリチウムとベリリウムの同位体測定から、CAIの固体および気体の前駆物質が太陽の前主系列の進化の後期段階におけるスーパーフレアによる放射線を浴びたことが示唆される。
The case for seasonal surface changes at Titan’s lake district
doi: 10.1038/s41550-018-0687-6
タイタンの北極領域の3つの謎めいた地形は、冬期にカッシーニのレーダーで観測すると湖として現れるが、春期に赤外線で観測すると陸地として現れる。このことは季節的な規模でタイタンの液体が移動している証拠を示している。
Direct measurement of stellar angular diameters by the VERITAS Cherenkov telescopes
doi: 10.1038/s41550-019-0741-z
Benbowたちは大口径チェレンコフ望遠鏡を用いて、折よく生じた小惑星による掩蔽を通じて2個の恒星の視角度を計測し、月による掩蔽方法に対して1桁の解像度の向上を達成した。
Dynamics of a massive binary at birth
doi: 10.1038/s41550-019-0718-y
1.3 mmの連続放射とH30αの再結合線放射を高い角分解能で観測した結果から、見かけ上180 天文単位離れた原始星を含む形成中の連星系が同定された。2つの原始星の速度差から、系の軌道周期と全体質量が絞り込まれる。
Microlensing constraints on primordial black holes with Subaru/HSC Andromeda observations
doi: 10.1038/s41550-019-0723-1
銀河系ハロー中の原始ブラックホールの存在量は、それらによって生じるM31内の恒星のマイクロレンズ効果によって絞り込まれる。数千万個の恒星を観測したにもかかわらず、候補となる現象は一つしか発見されず、原始ブラックホールの存在度に厳しい上限が得られた。
Deep and methane-rich lakes on Titan
doi: 10.1038/s41550-019-0714-2
タイタンの北極領域における、いくつかの湖成地形の測深レーダー測定結果が、2017年4月、カッシーニ最後の接近通過の間に得られた。これらの深さ100メートルのメタンが支配的な湖は、おそらく局地的な降雨によって削られ、補充され、さらに地表下の流れによって調整されているのだろう。
Evolution of Saturn’s mid-sized moons
doi: 10.1038/s41550-019-0726-y
土星の中程度の大きさの内衛星の進化を450万年にわたって扱った、熱的、地球物理学的、そして動力学的な結合シミュレーションから、ミマスが除外される可能性はあるものの、それらの衛星が土星の歴史の初期に形成されたことが示された。共鳴の複雑な駆け引きが、4個の古い衛星に影響を及ぼし、衛星の地質や内部構造を形成した。
Accurate mass and radius determinations of a cool subdwarf in an eclipsing binary
doi: 10.1038/s41550-019-0746-7
低質量、低金属量、低温の準矮星は太陽の近傍ではまれであり、そのためそれらの特性は、観測により良く絞りこまれているわけではない。本論文では、食連星系における低温の準矮星の質量と半径の両方を決定したことが報告され、有用なデータが得られた。
Massive stars as major factories of Galactic cosmic rays
doi: 10.1038/s41550-019-0724-0
銀河系中心部の極めてコンパクトな星団は、マルチテラエレクトロンボルトのエネルギー領域における銀河系内の宇宙線フラックスの主要な要因である可能性がある。銀河系中心部からの拡散したガンマ線放射と、2つの若い大質量の星団の観測は、宇宙線の分布に相関がある。
Experimental characterization of the energetics of low-temperature surface reactions
doi: 10.1038/s41550-019-0729-8
Henning と Krasnokutski は、ヘリウムのナノ液滴内で反応物を一対のみ含む化学反応を行うことにより、宇宙化学に関連する単純な反応のエネルギー収支を測定した。このアプローチにより、表面反応の反応径路をこれまで以上に正確に予測することが可能になる。
A spectroscopy facility for many
doi: 10.1038/s41550-019-0808-x
4メートル多天体分光望遠鏡(4MOST)は、2022年にVISTA望遠鏡に搭載予定の用途の広い可視光探査装置であり、中分解能および高分解能スペクトルと、革新的な操作モードを提供する。4MOSTコンソーシアムを代表して、研究責任者の R de Jong が解説する。
The origin of radio emission from radio-quiet active galactic nuclei
doi: 10.1038/s41550-019-0765-4
本論文では、電波で静穏な活動銀河核(AGN)における電波放射の仕組みを、星形成やAGNのウインドから、光電離したガスからの自由–自由放射やAGN円盤のコロナの活動まで概説する。これらの機構は高感度の電波天文台で調べることができる。
Solar farside magnetograms from deep learning analysis of STEREO/EUVI data
doi: 10.1038/s41550-019-0711-5
太陽の裏側のマグネトグラムは、深層学習を用いて観測衛星STEREOの画像から生成され、ヘールの法則を示す活動的な領域がよく再現される。これらの画像を用いて裏側から表側への磁場の時間発展をモニターすることができる。
A magnetically driven equatorial jet in Europa’s ocean
doi: 10.1038/s41550-019-0713-3
木星の磁場は、エウロパの、場合によってはその他の木星の衛星の内部の海洋循環に、その海洋の塩水中にローレンツ力を発生させることによって影響を及ぼし得る。そのような力は赤道のジェットを生じ、このジェットが、海の動力学に影響を及ぼし、またエウロパの氷殻上のトルクとして働き、場合によってはその表面の特性にも影響する可能性がある。
Reduction of the maximum mass-loss rate of OH/IR stars due to unnoticed binary interaction
doi: 10.1038/s41550-019-0703-5
提案されて数十年経つ「スーパーウインド」の概念は、極端に酸素の豊富な漸近巨星分枝星には当てはまらないかもしれない。それは、増大した星周密度(スーパーウインドに似たもの)の外殻が質量放出ではなく連星相互作用によって生成され得るためである。
A giant impact as the likely origin of different twins in the Kepler-107 exoplanet system
doi: 10.1038/s41550-018-0684-9
ケプラー107 bとケプラー107cは同じ半径をもつが、もっとも外側のケプラー107 cは予測に反してはるかに高密度である。この違いは恒星の高エネルギー粒子の流束による光蒸発では説明できず、ケプラー107 cが巨大衝突事象を受けたことが示唆される。
Obliquity-driven sculpting of exoplanetary systems
doi: 10.1038/s41550-019-0701-7
コンパクトな太陽系外惑星系は、永年共鳴によって引き起こされる自転軌道結合を受けることが多い。これによって、惑星系の構造が形づくられ、惑星が大きな軌道傾斜を保持することが可能になり、惑星の一次共鳴からそれた集積を生じる。
A hybrid envelope-stripping mechanism for massive stars from supernova nebular spectroscopy
doi: 10.1038/s41550-019-0710-6
この論文では、外層が剥がされた超新星の50個以上の後期星雲スペクトルが、これらの天体の大質量前駆星をより理解するために研究された。Ib型とIIb型の前駆天体は、大部分が区別できず、Ic型の前駆天体はおそらく、より大質量の炭素-酸素のコアを有している。
The diverse evolutionary pathways of post-starburst galaxies
doi: 10.1038/s41550-019-0725-z
EAGLEシミュレーションでは、ポストスターバースト銀河に至る3つの異なる進化経路が存在しており、観測から動機付けられたシナリオとすべて矛盾しない。これらの複数の経路は、ポストスターバースト銀河の観測的な多様性を説明する。
Probing the existence of ultralight bosons with a single gravitational-wave measurement
doi: 10.1038/s41550-019-0712-4
単一の重力波測定、たとえばLISAによる質量比の大きな連星系についての測定を用いて、モデル選択による軽いボソンの存在を確認し、得られた信号に対する代替説明を除外して、ボソンの質量を測定することができる。
Multiple regions of shock-accelerated particles during a solar coronal mass ejection
doi: 10.1038/s41550-019-0689-z
2017年9月10日に発生した強力な X8.2クラスの太陽フレアのLOFAR による電波観測と、それを補う紫外線および可視光の画像から、膨張するコロナ質量放出に沿って電子ビームに見られる複数の衝撃波の特徴(ヘリンボーン模様)の位置が特定されている。
A pathfinder for imaging exo-Earths
doi: 10.1038/s41550-019-0773-4
SCExAO(スケックスエーオー)は、地上に設置された望遠鏡で地球型系外惑星の直接撮像により可能になる新境地を開拓する、すばる望遠鏡に搭載された観測機器である。SCExAOの研究グループを代表して、T Currieが解説する。
Unveiling the secrets of a habitable world with JAXA’s small-body missions
doi: 10.1038/s41550-019-0745-8
2010年に小惑星イトカワからはやぶさが帰還した後、日本の宇宙機関JAXAは、地球がどのようにハビタブルになったかを調べる計画を立てた。小惑星リュウグウへのはやぶさ2探査機のミッションは、我々の太陽系のあらゆる場所の水と有機物をたどることを目的とする、この探査計画のまさに一部である。
Arrival, touchdown and sequel to the voyage of Hayabusa2
doi: 10.1038/s41550-019-0750-y
2018年6月27日、はやぶさ2探査機は、小惑星リュウグウに到達した。この小惑星は、非常に暗い表面と多くの巨礫をもつコマのょうな形をした炭素質の天体である。安全で平坦な着陸地点を慎重に探索した後、最初のタッチダウンが2019年2月22日に成功した。
A kilometre-sized Kuiper belt object discovered by stellar occultation using amateur telescopes
doi: 10.1038/s41550-018-0685-8
有松たちは、それほど大型ではない一対の望遠鏡を用いて、キロメートルサイズのカイパーベルト天体(KBO)によって引き起こされたと考えられる掩蔽現象を観測した。サイズがこの規模のKBOはこれまで検出されていなかったが、カイパーベルトではもっとも多いサイズの天体の代表的なものであると考えられる。
A water budget dichotomy of rocky protoplanets from 26Al-heating
doi: 10.1038/s41550-018-0688-5
惑星系における26Alの初期の存在度により、その固体惑星の表面環境が決まる。26Alの高いレベルは、微惑星を脱水させ、我々の太陽系の地球型惑星に似た、水に乏しい世界をつくり出した。26Alのレベルが太陽より低ければ、選択的に海洋惑星が生成されるであろう。
The ice composition in the disk around V883 Ori revealed by its stellar outburst
doi: 10.1038/s41550-018-0680-0
若い星であるオリオン座 V883星からのアウトバーストは、その原始惑星系円盤の氷インベントリーの大部分を蒸発させ、複雑な分子を含む豊富な有機成分が一意的に明らかになった。
An intuitive 3D map of the Galactic warp’s precession traced by classical Cepheids
doi: 10.1038/s41550-018-0686-7
1,300個以上の古典的セファイド変光星までの精度の高い距離を用いて、Chenたちは天の川銀河の恒星円盤のたわみを20キロパーセクより遠くまでたどった。銀河系のこのたわみは、大質量の内側円盤によってもたらされるトルクのために起こっている可能性が高い。
Dissipation of the Solar System’s debris disk recorded in primitive meteorites
doi: 10.1038/s41550-019-0696-0
隕石中のヨウ素–キセノンの記録を使用して、デブリ円盤の散逸中の、太陽系内の後期過程を調べることができる。ほとんどの始原的な隕石は、このおよそ5,000万年の期間に26Al の崩壊ではなく、衝突によって変性を受け加熱された。
Evidence for widespread hydrated minerals on asteroid (101955) Bennu
doi: 10.1038/s41550-019-0722-2
フィロケイ酸塩に似た含水鉱物の特徴がベンヌの表面に広がっており、顕著な水質変成作用を示している。およそ100メートルという小さいスケールまでスペクトルの空間的な変動がないことは、比較的均一な粒子サイズ分布と、組成の分離のないこととの両方を示しており、ことによると表面の再分布過程によるものであろう。
Properties of rubble-pile asteroid (101955) Bennu from OSIRIS-REx imaging and thermal analysis
doi: 10.1038/s41550-019-0731-1
ベンヌの表面は、細かいレゴリスからメートルサイズの巨礫まで、多様な粒子の大きさの証拠を示している。その中程度の熱慣性からは、巨礫が非常に多孔質、または薄いダストに覆われていることが示唆される。ベンヌの巨礫は、大きなアルベド変動を示し、このことは異なる起源と年齢の両方、またはどちらかであることを示す。
The dynamic geophysical environment of (101955) Bennu based on OSIRIS-REx measurements
doi: 10.1038/s41550-019-0721-3
ベンヌの表面は、大部分がその加速する自転速度によって引き起こされる継続的な変化を受けており、この加速する自転により過去にその内部が崩壊する結果となった可能性がある。このシナリオは、ベンヌ内部の質量分布の不均一性によっても支持される。
Visualization of the challenges and limitations of the long-term sunspot number record
doi: 10.1038/s41550-018-0638-2
太陽黒点数の時系列は、太陽活動の永年変動を決定するために不可欠なツールであるが、時間的に完全には網羅されていないそのデータを取り扱い提供するには、特別な注意が払われなければならない。今回、現在の研究の状況が示され、長期間の太陽活動のデータを可視化するための新しい方法が提案されている。
The many flavours of photometric redshifts
doi: 10.1038/s41550-018-0478-0
テンプレートフィッティングから、機械学習や組合わせ手法まで、測光赤方偏移を得るためのさまざまな技術を概説し、銀河系外サンプルに関する最新の結果の説明、および探査戦略の選択がどのように赤方偏移の正確度に影響を及ぼすかを説明する。
A basal contribution from p-modes to the Alfvénic wave flux in the Sun’s corona
doi: 10.1038/s41550-018-0668-9
太陽内部から生じる空間的に遍在するエネルギーフラックスは、内部の音波モードによって生じるアルベーン波を通じてコロナに到達する。そのようなフラックスは、全太陽周期の間持続し、コロナのエネルギーに大きく寄与する。
A circumbinary protoplanetary disk in a polar configuration
doi: 10.1038/s41550-018-0667-x
よく研究された四重星系HD 98800のALMAによる観測から、連星系の一方の周りに極方向に整列した周連星円盤の存在が明らかになっており、そのような配置の理論的な安定性が観測により裏付けられた。
Collisionless shock heating of heavy ions in SN 1987A
doi: 10.1038/s41550-018-0677-8
宇宙空間の実験室としてSN 1987Aを用い、Miceli たちは、酸素より重いイオンの衝撃波による加速を測定して、多様なイオンの衝撃波下流の温度が質量に依存することを見いだした。
A new class of flares from accreting supermassive black holes
doi: 10.1038/s41550-018-0661-3
近傍銀河における増大した紫外線–可視領域の中心核の放射と、隠されていないAGNに典型的な輝線およびボウエン蛍光機構の特徴を示しているスペクトルとから、中心の超大質量ブラックホールへの降着が強まる長期間に及ぶ現象が示唆される。
Direct evidence of non-disk optical continuum emission around an active black hole
doi: 10.1038/s41550-018-0659-x
活動銀河核の降着円盤の新しい変光データからは、これまで過小評価されてきた遠方の非円盤成分が存在していて、外側の降着円盤から吹き上げられる高密度の光イオン化した物質を伴っているとする議論が生じている。
Detailed polarization measurements of the prompt emission of five gamma-ray bursts
doi: 10.1038/s41550-018-0664-0
ガンマ線バーストの偏光度検出器POLARによる偏光の高精度測測定からは、ガンマ線放射がいくつかのモデルから予測されるものよりも低いレベルの偏光度しかないことが示唆され、パルス内でその偏光角が進化していることも示される。
The properties of broad absorption line outflows based on a large sample of quasars
doi: 10.1038/s41550-018-0669-8
915個のクエーサーについて銀河中心部からアウトフローガスまでの距離は、典型的には数十パーセクであることが明らかになった。典型的な質量流出率とエネルギーからは、これらのアウトフローがそれらの親銀河の進化に影響を及ぼすのに充分なほど高エネルギーであることが示唆される。
Cosmological constraints from the Hubble diagram of quasars at high redshifts
doi: 10.1038/s41550-018-0657-z
調和宇宙論モデルは、高赤方偏移ではほとんど検証されていない。今回、0.5 < z < 5.1の範囲における宇宙の膨張速度がクエーサーのハッブル・ダイアグラムに基づいて測定されており、それらまでの距離はX線および紫外光放射から見積もられた。
An aqueously altered carbon-rich Ceres
doi: 10.1038/s41550-018-0656-0
探査機ドーンによる赤外分光および中性子分光観測からは、ケレス表面の元素組成について対照的な結果が得られた。このことは、炭素質の小惑星の衝突と、大規模な水質変成作用による生成との両方あるいはどちらかに由来する炭素が、ケレス表面の約20質量パーセントを占めているという仮定に矛盾しない。
Ring dynamics around non-axisymmetric bodies with application to Chariklo and Haumea
doi: 10.1038/s41550-018-0616-8
カリクロおよびハウメア、またキロンもその可能性があるが、これらだけが、巨大惑星以外の太陽系天体で環をもつことが知られている。これらの小天体の環は、巨大惑星周辺の環に比べると、それらの親天体から相対的に離れており、このように遠ざかる原因は、さほど顕著ではない地形学的な特徴あるいは長短度によって引き起こされる共鳴であることが示される。
Interstellar turbulence spectrum from in situ observations of Voyager 1
doi: 10.1038/s41550-018-0650-6
星間物質の唯一の探査手段であるボイジャー1号を用い、Lee らは天文単位スケールからメートルスケールまでの星間乱流スペクトルを計測し、パルサー放射のシンチレーションから得られたより長波長の計測結果を補完した。
A comprehensive three-dimensional radiative magnetohydrodynamic simulation of a solar flare
doi: 10.1038/s41550-018-0629-3
太陽フレアの出現から爆発までの最新の磁気流体力学シミュレーションにより、可視光、紫外、およびX線波長での観測を再現することができることから、フレアのモデルで一般に仮定されていたよりも、高エネルギーの非熱的粒子がそれほど重要な役割を果たしていないことが示唆される。
Mapping of shadows cast on a protoplanetary disk by a close binary system
doi: 10.1038/s41550-018-0626-6
移動する影が、いて座 V4046 星のまわりの星周円盤に確認されており、これは中心の連星系の食によって投影されたものである。幾何学的な議論により、円盤のフレアの程度と系までの距離が計算された。
Unconventional origin of supersoft X-ray emission from a white dwarf binary
doi: 10.1038/s41550-018-0639-1
白色矮星の表面への降着は一般に、核融合に起因する超軟X線放射と幅広い輝線を生じさせる。ASASSN-16oh は、可視光の幅広い輝線を示さいことから、表面の核融合が存在せず、その代わりに拡散層(spreading layer)と呼ばれる白色矮星周辺の帯状領域が超軟X線放射の源泉となっていることを意味している。
A direct test of density wave theory in a grand-design spiral galaxy
doi: 10.1038/s41550-018-0627-5
グランドデザイン渦巻銀河 UGC 3825 の星集団に関する情報を活用して、年齢のわかっている若い星とそれらの星が形成された渦状腕とのずれが測定された。測定されたずれは、準定常な密度波と矛盾しない。
Bustling public communication by astronomers around the world driven by personal and contextual factors
doi: 10.1038/s41550-018-0633-7
2,587名の天文学者を対象にした最も大規模な調査から、地域による偏りと、もっとも活発に携わるコミュニケーターの動機を明らかにした。
The many definitions of a black hole
doi: 10.1038/s41550-018-0602-1
今回、ブラックホールのさまざまな定義が調査、比較された。その結果、異なる定義がさまざまに存在するのは、多くの異なる種類の課題においてブラックホールの研究を可能にし有用なものとする長所であると結論づけられる。
KAGRA: 2.5 generation interferometric gravitational wave
doi: 10.1038/s41550-018-0658-y
KAGRAは日本で建設中の新しい重力波検出器である。これは、LIGOやVirgoとは違い、サファイヤ製の鏡を用い極低温で運用される。KAGRAは、重力波検出の位置決定と放射源のパラメーターの決定の改善に役立つだろう。
Observing black holes spin
doi: 10.1038/s41550-018-0665-z
現在、X線や電波、それに重力波でブラックホールの自転が測定されており、ブラックホールの成長、恒星のコア収縮の力学、それに相対論的ジェットの生成の物理についてのモデルはすでに絞り込まれている。
Observational constraints on the feeding of supermassive black holes
doi: 10.1038/s41550-018-0611-0
超大質量ブラックホールは、銀河の相互作用や合体、銀河団におけるカオス的な低温ガスの降着や、恒星による棒状構造を含むと考えられる永年過程を通じてエネルギーを供給される。異なるスケールでのこれらの機構を絞り込む観測を概説する。
Washboard and fluted terrains on Pluto as evidence for ancient glaciation
doi: 10.1038/s41550-018-0592-z
冥王星のスプートニク平原の北西縁部にある平行な尾根のネットワークは、氷の窒素の氷河作用によって堆積した岩屑物質の痕跡であり、冥王星の歴史の初期に生じ、N2が昇華により消失した後に残されたものである。
A power-law decay evolution scenario for polluted single white dwarfs
doi: 10.1038/s41550-018-0609-7
白色矮星への塵の降着は、屈曲するべき乗則による減衰に従い、塵の源は主として木星型惑星によって擾乱を受けて力学的に落下する小惑星によって届けられるとされる。塵の円盤が、金属汚染過程の初期の段階に存在する。
Extended main sequence turn-off originating from a broad range of stellar rotational velocities
doi: 10.1038/s41550-018-0619-5
銀河系の散開星団内における恒星の自転速度の直接的な測定をシミュレーションと組み合わせると、急速に自転する恒星がより赤化している可能性があり、したがって主系列ターンオフが広がることが示される。観測事実を説明するためには、星団内の恒星の複数の種族は必要ではない。
Anisotropic winds in a Wolf–Rayet binary identify a potential gamma-ray burst progenitor
doi: 10.1038/s41550-018-0617-7
ウォルフ・ライエ星の連星周辺に存在する蛇行する塵のプルームは、連星の構成成分の一つが高速に自転していると考えられる、非等方性の衝突する恒星風系の存在を示す。スピンアップしたウォルフ・ライエ星は、長時間継続するガンマ線バースト源であると考えられる。
Modelling the coincident observation of a high-energy neutrino and a bright blazar flare
doi: 10.1038/s41550-018-0610-1
レプト-ハドロン・ジェットモデルと最近のマルチ・メッセンジャーデータを用いると、ブレーザーのフレアの最中に宇宙線が中程度に増大することにより、ニュートリノのフラックスが増加する可能性があり、これは同時に生成される硬X線とテラエレクトロンボルトのガンマ線により制約されることが示される。
An improved cosmological parameter inference scheme motivated by deep learning
doi: 10.1038/s41550-018-0596-8
畳み込みニューラルネットワークは、シミュレートされた弱いレンズ効果の収束マップから、偏りのない方法で宇宙論パラメーターを推定する。ネットワーク解析は、ピーク高さの峻度に基づいた、収束ピーク数をカウントする新しくロバストなアルゴリズムを触発する。
The origin of polarization in kilonovae and the case of the gravitational-wave counterpart AT 2017gfo
doi: 10.1038/s41550-018-0593-y
可視光の偏光モデルは、将来のキロノバのみならず、重力波イベント GW 170817 を伴うキロノバの爆発による放出物の組成と力学的な進化の研究に向けた枠組みを提供する。
Cryovolcanic rates on Ceres revealed by topography
doi: 10.1038/s41550-018-0574-1
ドーン探査機のデータから得られたケレス上の約30個の低温火山を同定し年代測定した結果からは、低温火山活動が少なくともこれまでの25億年の間、この準惑星で継続しているが、その噴出率は、地球型惑星上の標準的な火山ほどではないことが示される。
Confined pseudo-shocks as an energy source for the active solar corona
doi: 10.1038/s41550-018-0590-1
IRIS 分光器は、太陽の活動領域上に上方に向かう「擬似衝撃波」(プラズマ密度だけに不連続性を示す衝撃波)を観測した。モデル化により、そのような擬似衝撃波がコロナ加熱と質量輸送に大きく寄与することが示される。
Measurement of the primordial helium abundance from the intergalactic medium
doi: 10.1038/s41550-018-0584-z
ビッグバンの数分後に形成されたヘリウムの始原的な存在度は、金属に乏しい局所銀河における星形成領域で測定するのが普通である。今回それに代わり、銀河間のガス雲のヘリウムの存在度が、背景にあるクエーサーの光を用いて計算された。
A giant protocluster of galaxies at redshift 5.7
doi: 10.1038/s41550-018-0587-9
赤方偏移 z ≈ 5.7 の巨大な原始銀河団が、分光学的に確認された少なくとも41個のライマンα銀河を含む巨大な密度超過領域内に発見された。この原始銀河団はこれまでに知られているもっとも大質量の銀河団の一つへと収縮する可能性がある。
No evidence for modifications of gravity from galaxy motions on cosmological scales
doi: 10.1038/s41550-018-0573-2
一般相対性理論(GR)およびさらに説得力のある修正理論に基づいた銀河の集団化に対する予測が、観測と対比されている。前者は驚くほどにデータとよく一致し、宇宙論的なスケールにおけるGRの強力な証拠が得られる。
Low-temperature formation of polycyclic aromatic hydrocarbons in Titan’s atmosphere
doi: 10.1038/s41550-018-0585-y
小さな多環芳香族炭化水素(PAH)は、タイタンのヘイズの層を成長させる核生成の場所であると考えられる。Zhaoらは室内実験と電子構造計算を用いて、小さなPAHがタイタンの低温環境で急速な無障壁反応によって合成される可能性があることを示す。
Quark deconfinement as a supernova explosion engine for massive blue supergiant stars
doi: 10.1038/s41550-018-0583-0
青色超巨星(BSG)は、中心核の崩壊を経て、その結果としてII型超新星を生じる可能性がある。今回 T Fischer らは、特に大質量のBSG(>50 M⦿)について核物質からクォーク・グルーオン・プラズマへの新しい相転移を特定し、そうした星の爆発を説明している。
Observational signatures of massive black hole formation in the early Universe
doi: 10.1038/s41550-018-0569-y
ジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡は、赤方偏移15に位置し、直接崩壊するブラックホールをもち、近傍での大質量で金属のない星形成を生じる若い銀河を、4種類のフィルターを通じて20,000秒という短い総露出時間で検出し識別する可能性がある。
A decade of fast radio bursts
doi: 10.1038/s41550-018-0607-9
最初の高速電波バースト(FRB)は2007年に発見され、その後10年間で25個以上が発見された。現在の状況は、主として電波観測機器により、爆発的な発見の一歩手前にある。この分野のパイオニアの一人であるD Lorimerが、FRBの研究の草創期を概説する。
The future of fast radio burst science
doi: 10.1038/s41550-018-0603-0
高速電波バースト(FRB)天文学の次の10年がASKAPやCHIMEなどの新たに稼働している観測施設による数十個の新たなFRBの検出で幕を開けた。今後の期待と、新しい観測施設がもたらすであろう発見について、Evan Keaneが述べる。
The formation of Jupiter by hybrid pebble–planetesimal accretion
doi: 10.1038/s41550-018-0557-2
宇宙化学的な証拠を用いて、最初の数百万年間の急速なペブルの降着、その後の大きな微惑星によって制御されたゆっくりとした成長、最後の暴走的なガス降着段階という、3つの異なる段階で進展する木星形成のモデルを絞り込む。
Evidence for very early migration of the Solar System planets from the Patroclus–Menoetius binary Jupiter Trojan
doi: 10.1038/s41550-018-0564-3
木星のトロヤ群のパトロクロスとメノイティオスからなる連星小惑星は、巨大惑星の移動が太陽系の誕生後、およそ1億年以内で起こるとした場合にのみ、カイパーベルトから木星の軌道までの移動を生き残ることができ、これまで考えられていた太陽系誕生からおよそ7億年後の後期重爆撃によるものではない。
The mass of the young planet Beta Pictoris b through the astrometric motion of its host star
doi: 10.1038/s41550-018-0561-6
1990年から1993年の間にヒッパルコス衛星によって、さらにそのおよそ24年後のガイア衛星によって得られたがか座β星の運動の精確な測定により、その惑星、がか座β星bの質量を測定することが可能になった。惑星の質量が木星の11 ± 2倍という結果は、「ホットスタート」形成モデルを裏付ける。
A UV resonance line echo from a shell around a hydrogen-poor superluminous supernova
doi: 10.1038/s41550-018-0568-z
水素に乏しい超高輝度超新星における爆発前の環境の探査は、それらが爆発するしくみを理解するために重要である。今回Lunnanたちは、共鳴線の光エコーの発見を通じてiPTF16eh周辺の高速で運動する周殻の存在を推測しており、このことは大質量の前駆天体が脈動的対不安定な周殻の放出を経たことを示す。
Turbulent action at a distance due to stellar feedback in magnetized clouds
doi: 10.1038/s41550-018-0566-1
分子雲内部の乱気流を維持するメカニズムは、十分に理解されていない。磁気流体力学シミュレーションを用いて、分子雲に及ぼす恒星風の影響が研究され、エネルギーはこの恒星の「フィードバック」によって生じる磁気波で効率的に輸送される可能性が明らかになった。
Cold gas outflows from the Small Magellanic Cloud traced with ASKAP
doi: 10.1038/s41550-018-0608-8
オーストラリア・スクエア・ キロメートル・アレイ・パスファインダー(ASKAP)の試稼働時データを用いて、小マゼラン雲(SMC)の一部がこれまでの10倍の解像度でマッピングされた。低温のHiのアウトフローが、SMCのバーからおよそ2キロパーセクに広がっており、銀河の原子質量の最大で3パーセントを含んでいることが明らかになった。おそらく、これらは近傍の銀河との相互作用によって剥ぎ取られたものであろう。
Dark matter self-interactions from the internal dynamics of dwarf spheroidals
doi: 10.1038/s41550-018-0560-7
自己相互作用する暗黒物質のパラダイムの範囲内で行った、銀河系の矮小楕円銀河の「too-big-to-fail」問題(冷たい暗黒物質宇宙論の理論予測と観測結果の間に存在する不一致)のデータ駆動型研究は、そうした矮小銀河の恒星ダイナミクスを良く記述し、純粋な冷たい暗黒物質シミュレーションにおける集中度–質量の関係と整合することが明らかになった。
Predicting the corona for the 21 August 2017 total solar eclipse
doi: 10.1038/s41550-018-0562-5
3次元磁気流体力学モデルにより、境界条件として日食前の10日間に得られた観測結果を用いて、2017年8月21日に起こった日食のさなかの太陽コロナの状態を予報した。予測された画像と観測された画像とはよく一致している。
Identification of Jupiter’s magnetic equator through H3+ ionospheric emission
doi: 10.1038/s41550-018-0523-z
木星の磁気赤道の暗いリボン状の構造は、光電子の欠如に起因する、電離圏のH3+の枯渇を示している。分子状水素との衝突でH3+を形成するこれらの光電子は、磁力線によって方向を曲げられる。
Astronomical detection of radioactive molecule 26AlF in the remnant of an ancient explosion
doi: 10.1038/s41550-018-0541-x
26AlFは、最初の暫定的な発見から30年後、現在では 、恒星の合体の残骸であるこぎつね座CK星(CK Vul)の方向に4種類の異なる回転遷移が観測されたことによって宇宙空間に確実に存在するのがわかっている。奇妙なことに、CK Vul とこれに類似した天体は、銀河系内の26Alの主要な源ではなさそうだ。
The inside-out planetary nebula around a born-again star
doi: 10.1038/s41550-018-0551-8
二重殻構造をもつ惑星状星雲HuBi 1は、低いイオン化ポテンシャルの原子種を放出する内側の殻と、高いイオン化ポテンシャルの原子種を放出する外側の殻をもつ。これは、一般的な場合の逆である。原因は、「よみがえり」現象を経て急激に暗くなっている星雲の中心星にある。
The nature of the lithium enrichment in the most Li-rich giant star
doi: 10.1038/s41550-018-0544-7
恒星TYC 429-2097-1は、どの巨星よりも大量のリチウムを含むが、リチウムは非常に不安定なために恒星大気の深層で存在し続けることはできない。どのようにして濃集がおこるのだろうか?Yan たちは、外的要因(飲み込みや降着)を除外し、「追加混合(extra mixing)」と呼ばれる内部過程を支持する。
X-ray photodesorption from water ice in protoplanetary disks and X-ray-dominated regions
doi: 10.1038/s41550-018-0532-y
変性を受けていない宇宙物理学的な氷からの水のX線で誘起された光脱離はほとんど研究されていない。しかしこのことは、これらの領域に見られる冷たい水蒸気の生成における基本的に重要な過程である可能性がある。本論文では、そのような過程の生成量を実験的に定量化したことについて述べる。
Discovery of a proton aurora at Mars
doi: 10.1038/s41550-018-0538-5
火星探査機MAVENは、太陽風の活動と相関するライマンα線の輝きを観測しており、これは、火星の中性水素のコロナと相互作用する太陽風の陽子によるオーロラの活動に起因するものと考えられる。陽子オーロラは、通常は地球だけに見られるものである。
The delay of shock breakout due to circumstellar material evident in most type II supernovae
doi: 10.1038/s41550-018-0563-4
ショックブレイクアウト(SBO)は、超新星(SN)爆発の最初の電磁気的な兆候である。Försterたちは、探査したほとんどすべてのII型超新星で SBO が数日の時間スケールで発生することを発見しており、このことは、前駆天体が爆発のさいに厚い星周物質に取り囲まれていたことを示唆する。
The Fermi-LAT GeV excess as a tracer of stellar mass in the Galactic bulge
doi: 10.1038/s41550-018-0531-z
フェルミガンマ線宇宙望遠鏡によるデータの8年間の画像テンプレート解析から、銀河系中心部付近のギガエレクトロンボルトの特異な放射が、暗黒物質のシグナルというよりも、恒星(おそらくミリ秒パルサー)によって生成された箱型のバルジによく一致することが示される。
High early solar activity inferred from helium and neon excesses in the oldest meteorite inclusions
doi: 10.1038/s41550-018-0527-8
もっとも古いカルシウムとアルミニウムに富んだ包有物(CAI)中に測定された希ガスの存在度は、太陽系の歴史における初期の強力な太陽放射のバーストを示しており、これはもっと後に形成されたCAIには記録されていない。この結果は、太陽のT タウリ段階と矛盾しない。
An extended hydrogen envelope of the extremely hot giant exoplanet KELT-9b
doi: 10.1038/s41550-018-0503-3
高解像度のスペクトルを用いたCARMENES探査により、これまでに発見された太陽系外惑星でもっとも温度の高いKELT-9bを取り巻く水素の大気が検出された。この水素のエンベロープは、ロシュローブをほぼ完全に満たしており、大気が強く流出していることを示している。
Supervised machine learning for analysing spectra of exoplanetary atmospheres
doi: 10.1038/s41550-018-0504-2
標準的な技術よりも時間がかからない「ランダムフォレスト」アルゴリズムによる教師付き機械学習を用いた、太陽系外惑星に対する大気解析の手法を紹介する。ハッブル宇宙望遠鏡によるWASP-12bのスペクトルでの検証は、標準的な大気解析と矛盾のない結果を示した。
A universal route for the formation of massive star clusters in giant molecular clouds
doi: 10.1038/s41550-018-0506-0
シミュレーションでは、輻射フィードバックの影響にもかかわらず、現在の宇宙に存在する若い大質量星団が巨大分子雲中で自然に形成される。同じ過程が、より早い時代、例えば球状星団が生じたときにも起こった。
Non-thermal X-rays from colliding wind shock acceleration in the massive binary Eta Carinae
doi: 10.1038/s41550-018-0505-1
大質量連星りゅうこつ座η星は、太陽近傍で最も強力な衝突する星風による衝撃波を引き起こす。NuSTARとXMM–ニュートンのデータを用いて、りゅうこつ座η星が非熱的粒子を加速しており、銀河系の宇宙線フラックスに寄与していることが今回示された。
The Andromeda galaxy’s most important merger about 2 billion years ago as M32’s likely progenitor
doi: 10.1038/s41550-018-0533-x
M31の大質量で金属に富んだ恒星ハローは、およそ20億年前に1度の巨大銀河との支配的な合体が起こったと同時にM31の全体的な爆発的星形成が起こったことを示しているようだ。M32は、破壊された銀河の剥ぎ取られたコアであるらしい。
Gravitational lensing detection of an extremely dense environment around a galaxy cluster
doi: 10.1038/s41550-018-0508-y
大質量星団 PSZ2 G099.86+58.45周囲の強力な重力レンズ効果の信号は、宇宙論的な平均値を大幅に超過する環境の物質密度を示し、大質量ハロー周囲の増強機構が非常に効果的となり得ることを示唆している。
The optical afterglow of the short gamma-ray burst associated with GW170817
doi: 10.1038/s41550-018-0511-3
連星中性子星の合体現象であるGW170817を後期に可視および近赤外で観測した結果は、キロノバのモデルと対立するが、ガウス分布を示す相対論的ジェットと一致し、観測者の視線方向に沿って高光度の短時間ガンマ線バーストを放出した可能性がある。
A sociological study of gender and astronomy in Spain
doi: 10.1038/s41550-018-0509-x
著者らは、統計的なデータとすべてのキャリアステージにおける教育職および研究職への掘り下げたインタビューを基に、スペインの女性天文学者の状況について研究した。著者らの結果は、さらなる同様な研究や拡大した研究に対する動機付けとして示された。
Inventory of CO2 available for terraforming Mars
doi: 10.1038/s41550-018-0529-6
火星の系には、現在あるいは近い将来の技術を使ってかき集められる可能性のある十分な量のCO2は存在せず、火星のテラフォーミングを実現しうる十分な温室効果は得られない。
Rotationally driven magnetic reconnection in Saturn’s dayside
doi: 10.1038/s41550-018-0461-9
カッシーニ探査機による磁場とプラズマの観測で、土星の磁気圏の昼側における磁気再結合の証拠が見つかった。このことは、局所的なオーロラ脈動を説明して、急速に回転する磁気圏内でのエネルギー粒子の輸送に重要な役割を果たす可能性を示す。
Evidence for the start of planet formation in a young circumstellar disk
doi: 10.1038/s41550-018-0497-x
惑星形成のもっとも初期の段階である、塵粒子の成長に関する証拠が、低質量の原始星 TMC1A をとりまく非常に若くて大質量の星周円盤に見つかった。そのような系は、まだガスを豊富に含み、系外惑星の質量分布の高質量側の端の原因となっている。
Accretion geometry of the black-hole binary Cygnus X-1 from X-ray polarimetry
doi: 10.1038/s41550-018-0489-x
硬いスペクトル状態におけるブラックホール連星はくちょう座X-1のX線偏光の特性をスペクトルや時間変動データと組み合わせることで、降着円盤のコロナが広がった構造であるか、またはブラックホールから遠く離れたところに位置しているかのどちらかであることが明らかになった。
A luminous X-ray outburst from an intermediate-mass black hole in an off-centre star cluster
doi: 10.1038/s41550-018-0493-1
銀河の中心から12.5キロパーセク離れたところに位置する大質量の星団からの明るいX線アウトバーストが、潮汐破壊事象(TDE)の特徴に合致し、中間質量ブラックホール(IMBH)が存在する可能性が高いことを示唆する。TDEはIMBHを同定するもっとも効果的な方法と考えられる。
Anomalous microwave emission from spinning nanodiamonds around stars
doi: 10.1038/s41550-018-0495-z
原始惑星系円盤にナノダイヤモンドが存在することと、同じ円盤から特異なマイクロ波放射が検出されることの間には強い相関があり、およそ30ギガヘルツのこの不可解な放射特性の発生源が、多環芳香族炭化水素ではなく、回転するナノダイヤモンドであることを示唆する。
Absence of a fundamental acceleration scale in galaxies
doi: 10.1038/s41550-018-0498-9
200個近くの円盤銀河の特性を研究することにより、基本的な加速度スケールの存在に基づいた、修正ニュートン力学(MOND)あるいはMONDと類似する代替理論が、銀河に対する基本的な理論としては10σ以上で除外されることが示された。
Preservation of potential biosignatures in the shallow subsurface of Europa
doi: 10.1038/s41550-018-0499-8
エウロパの表面での陽子と電子両方から、放射線量がモデルによって再構築された。放射線照射されたアミノ酸についての実験室でのデータを用いて、中緯度から高緯度の若い(<1,000万年)領域でわずか数センチメートルの深さに、検出可能なレベルで有機物が保存されている可能性が明らかになった。
Preservation of potential biosignatures in the shallow subsurface of Europa
doi: 10.1038/s41550-018-0502-4
局所銀河の速度から物質密度を線形に再構築する方法は標準的な手法である。非線形シミュレーション結果の集合の密度場にわたる平均は、線形領域におけるよりも強い銀河「バイアス」を示しており、暗黒物質の分布と銀河形成への洞察が得られる。
Science education in the 21st century
doi: 10.1038/s41550-018-0510-4
科学はこれまでとは異なった方法で教えられるべきなのだろうか? 事実に基づく知識の習得ではなく、過程を強調することによって、生徒たちは課題解決の方法を学び、科学を研究以外のキャリアに関係するものとして考えるだろう。
Gravitational waves and the long relativity revolution
doi: 10.1038/s41550-018-0472-6
一般相対性理論は、第二次世界大戦後、概念的な変換を受けたが、この変換を用いてこれまで漠然と定義されていた「一般相対性理論のルネサンス」を理解することができ、これが重力波の予測と最終的な発見に結びついた。
Discovery of rapid whistlers close to Jupiter implying lightning rates similar to those on Earth
doi: 10.1038/s41550-018-0442-z
ジュノー探査機に搭載された波動観測器は、木星に接近するまでのおよそ1年間で約1,600回の雷を検出している。これは、イオのプラズマトーラス中でボイジャー1号探査機によって検出されたものよりも大幅に短い時間スケールでの低分散の急速なホイッスラー波によるものである。
The common origin of family and non-family asteroids
doi: 10.1038/s41550-018-0482-4
これまで考えられていたような特定の種族に属している小惑星だけでなく、すべての主小惑星帯内側にある小惑星は、数個の大きな小惑星の分裂を起源とする。そのような前駆天体の歴史によって、我々が小惑星や隕石で観測する組成の多様性が決まる。
The peculiar shapes of Saturn’s small inner moons as evidence of mergers of similar-sized moonlets
doi: 10.1038/s41550-018-0471-7
土星の近くを軌道運動している一連の小さな衛星は、変化に富んだ形を示しており、そこから衛星の形成過程の手掛かりが得られる。モデルによれば、これらのすべての形が、同じような大きさの小衛星間の衝突と合体という、単一のメカニズムで得られる可能性があることが示される。
Coma morphology of comet 67P controlled by insolation over irregular nucleus
doi: 10.1038/s41550-018-0481-5
ロゼッタ探査機により得られたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)の核の画像と、数値シミュレーションとを併せると、彗星のコマのジェット状の特性は、広範囲の活動が核の地形により集中することに加え、表面への不均一な日照によって形成される可能性が示される。
Global-scale equatorial Rossby waves as an essential component of solar internal dynamics
doi: 10.1038/s41550-018-0460-x
太陽の光球の6年間の時系列SDO/HMI画像の分析から、太陽における全球規模の赤道ロスビー波の存在し、こうしたスケールでの大部分の動径方向の渦度を含んでいることが明らかになった。
The lowest-metallicity type II supernova from the highest-mass red supergiant progenitor
doi: 10.1038/s41550-018-0458-4
超新星 SN 2015bsは、大質量(>18M⦿)で低金属量(<0.1 Z⦿)の赤色巨星の前駆天体によって生じたと考えられる、水素の豊富なII型超新星である。
The mysterious age invariance of the planetary nebula luminosity function bright cut-off
doi: 10.1038/s41550-018-0453-9
最近まで、恒星の進化モデルは、古い星の種族における明るい惑星状星雲の存在を説明できていなかった。今回、M Bertolami(2016)による改良された進化経路を用いて、低質量で寿命の長い惑星状星雲ほど、明るく輝く可能性があることが明らかにされた。
The current ability to test theories of gravity with black hole shadows
doi: 10.1038/s41550-018-0449-5
いて座A*の画像に基づいた、「事象の地平線望遠鏡」(2017年の観測)が、異なる重力理論を判別する能力が予測されたが、判別は不可能であると示唆される。
Equation of state of iron under core conditions of large rocky exoplanets
doi: 10.1038/s41550-018-0437-9
鉄が、地球の3〜4倍の質量の系外惑星のコアで生じていると考えられる圧力にランプ圧縮されて、この結果から、純粋に鉄でできた仮定的な惑星に対する質量と半径の関係の実験的な制約が得られた。
Evidence of a plume on Europa from Galileo magnetic and plasma wave signatures
doi: 10.1038/s41550-018-0450-z
木星の衛星エウロパの凍った表面下に海があるとする仮説は、ガリレオ探査機がこの衛星に最接近通過している最中に得た磁場およびプラズマ密度の計測から推測される、in-situでのプリュームの証拠によってさらに強まった。
Identification of the central compact object in the young supernova remnant 1E 0102.2–7219
doi: 10.1038/s41550-018-0433-0
ネオンと酸素の再結合線で見える可視光のリング状構造をもとに、中性子星(中心部の高密度天体)が超新星残骸1E 0102.2–7219のX線データに同定された。
A wide and collimated radio jet in 3C84 on the scale of a few hundred gravitational radii
doi: 10.1038/s41550-018-0431-2
3C84を干渉計により観測した結果、ブラックホールから重力半径の数百倍のところに、広がった円筒形のジェットが明らかになり、このことから、ジェットがさらに小さなスケールで急速に側方へ膨張しているか、あるいは降着円盤から放出されていることが示唆される。
The unexpectedly large proportion of high–mass star–forming cores in a Galactic mini–starburst
doi: 10.1038/s41550-018-0452-x
銀河系の星形成領域W43–MM1では、恒星の誕生したところの質量分布を記述するコア質量分布関数(CMF)は、生まれたばかりの星の質量分布である初期質量関数(IMF)とは大きく異なっている。これまで、IMFはCMFを反映すると考えられていた。
A relation between the characteristic stellar ages of galaxies and their intrinsic shapes
doi: 10.1038/s41550-018-0436-x
多天体面分光装置(SAMI)の銀河系探査により、空間的に解像された星の運動と大域的な星の種族を結びつけた研究から、銀河の特徴的な星の種族の年齢とその固有の楕円率に強い相関があることが明らかになった。
The evolution of Titan’s high–altitude aerosols under ultraviolet irradiation
doi: 10.1038/s41550-018-0439-7
タイタンの厚い褐色がかったヘイズ(もや)は、カッシーニ探査機によって観測された上層大気から、ホイヘンス探査機によってサンプリングされた低層領域まで輸送されるにつれて、化学的にどのように進化するのだろうか? 実験室における真空紫外光実験により、窒素の化学における観測された変化を説明できる可能性がある。
The seasonal cycle of Titan's detached haze
doi: 10.1038/s41550-018-0434-z
タイタンの孤立したヘイズは、中間圏の季節的な活動の尺度をもたらす主要なヘイズの最上部に位置する他とは異なる層であり、分点後の2012年から2016年の間、消失した。この遷移の研究は、作用している力学的なマイクロ物理過程を理解することに役立つ。
Recent progress in simulating galaxy formation from the largest to the smallest scales
doi: 10.1038/s41550-018-0427-y
銀河形成シミュレーションは力学的な範囲が極めて広いため、体積と解像度の間の異なるトレードオフに依存している。これらのシミュレーションについての最近の進展をまとめ、次の10年間にさらなる進歩を牽引しそうな、いくつかの重要な領域に注目する。
On the verge of an astronomy CubeSat revolution
doi: 10.1038/s41550-018-0438-8
キューブサットは標準化された小型衛星であり、宇宙空間から天文観測を行う安価で順応性の高い、まさに今活用され始めた観測機器である。今月号のPerspectiveでは、キューブサットの利点と、現在のそして計画されたプロジェクトの概要を述べる。
Catastrophic disruptions as the origin of bilobate comets
doi: 10.1038/s41550-018-0395-2
本論文では、双葉状の彗星に対する始原的な形成の標準的なシナリオに疑問を投げかける。著者たちは、双葉状の彗星がさらに大きな天体の衝突を通じて形成されるとしても、この衝突はいつでも起こりうることであり、それらの特性を保持し得ることを示す。
The tumbling rotational state of 1I/'Oumuamua
doi: 10.1038/s41550-018-0398-z
6夜にわたって観測された恒星間天体オウムアムア(1I/’Oumuamua)の光度変化は、単一の回転速度と相容れずこの天体がタンブリング運動していることを示している。色の計測からは、広範囲の赤色の領域を伴う不均質な表面であることが示唆される。
Galactic bulge preferred over dark matter for the Galactic centre gamma-ray excess
doi: 10.1038/s41550-018-0414-3
新しい流体力学的なモデルを用いて、銀河系中心部のフェルミガンマ線宇宙望遠鏡のLATデータを合わせ込んだ結果、その領域の超過ガンマ線放射は非球面的な形状とすれば良く合うことが示され、この放射が暗黒物質に関連する現象によるものではないことを示唆している。
An Earth-sized exoplanet with a Mercury-like composition
doi: 10.1038/s41550-018-0420-5
水星内部における金属の存在度は、太陽系の岩石惑星の中で特異である。本論文で示す「スーパーマーキュリー」太陽系外惑星の特性は、水星のような惑星がどのように形成され進化するかに関する我々の理解を深めるだろう。
The detection of the imprint of filaments on cosmic microwave background lensing
doi: 10.1038/s41550-018-0426-z
宇宙フィラメントは、原初の宇宙で形成された密度ゆらぎから非線形的に進化する。宇宙フィラメントによる宇宙マイクロ波背景放射の重力レンズ効果を検出することにより、フィラメントからどのように大規模物質分布がたどれるか計測することが可能になる。
Tumbling motion of 1I/'Oumuamua and its implications for the body' distant past
doi: 10.1038/s41550-018-0440-1
2017年10月27〜28日のおよそ8時間にわたり、ジェミニ北天文台から行われたオウムアムア(1I/’Oumuamua)の観測から、この天体の等級変化が評価されタンブリング運動する特性が検出されており、これは、オウムアムアがまだもとの系に存在していたときの古い衝突によって引き起こされたものである。
Pyrene synthesis in circumstellar envelopes and its role in the formation of 2D nanostructures
doi: 10.1038/s41550-018-0399-y
多環芳香族炭化水素のピレンは、4つのベンゼン環が縮合して形成されたものであり、二次元の炭素質の構造形成における重要な分子である。Zhaoたちは実験およびコンピューターを用いた手法により、ピレンが星周条件で形成される可能性があることを示した。
Detection of hydrogen sulfide above the clouds in Uranus's atmosphere
doi: 10.1038/s41550-018-0432-1
天王星の近赤外スペクトルの地上観測により、主雲層(1.2〜3バールの圧力)で硫化水素が発見されたことから、天王星の大気における全体の硫黄/窒素の比率が1を超えており、雲はH2Sの氷が支配的であることが示唆される。
Atomic oxygen ions as ionospheric biomarkers on exoplanets
doi: 10.1038/s41550-017-0375-y
電離層のもっとも高密度の部分を酸素原子が占めている唯一の既知の惑星が、地球である。著者らは、この状態が光合成の存在に厳密に関連付けられると主張する。このように、電離層のO+は、太陽系外惑星に対する生物マーカーとして利用できる。
The split in the ancient cold front in the Perseus cluster
doi: 10.1038/s41550-018-0401-8
銀河団のコールドフロントは、密度と温度の鋭い飛びであり、その揺動は、銀河団のコアの運動の長期間にわたる歴史を保持している。チャンドラ観測衛星は、ペルセウス銀河団のコールドフロントが極端に鋭く、2つの境界に分けられることを示した。
Inward migration of the TRAPPIST-1 planets as inferred from their water-rich compositions
doi: 10.1038/s41550-018-0411-6
M型矮星であるTRAPPIST-1の太陽系外惑星系に、質量と半径から惑星の組成を求めることができるモデルを適用したところ、惑星fとgは相当量の水を含む一方で、惑星bとcはかなり乾燥しているという結果を得た。
Haze production rates in super-Earth and mini-Neptune atmosphere experiments
doi: 10.1038/s41550-018-0397-0
実験室での実験で、太陽系には存在しないがほかの系では一般的な惑星である、地球と海王星の間の半径をもつもので見いだされる条件におけるエアロゾルの生成について研究した。ほとんどの場合で、光化学的に生成されるヘイズが発生する。
A fast-evolving luminous transient discovered by K2/Kepler
doi: 10.1038/s41550-018-0423-2
わずか2.2日でピーク光度に達する高光度の短期変光現象(FELT)が検出されている。このことは、このFELTの光度曲線が、Ia型超新星のように放射性元素の崩壊によって駆動される可能性はないことを示唆する。
Magnetic field strength of a neutron-star-powered ultraluminous X-ray source
doi: 10.1038/s41550-018-0391-6
超高輝度X線源(ULX)の駆動源は、いまだ議論のあるところだ。ULXに対するチャンドラ観測衛星によるスペクトルに4.5キロエレクトロンボルトの吸収線が検出されたことで、スーパーエディントン降着率で降着を受け強く磁化した中性子星というシナリオが支持される。
A dual origin for water in carbonaceous asteroids revealed by CM chondrites
doi: 10.1038/s41550-018-0413-4
6個の炭素質コンドライトを実験室で分析した結果、原始惑星系円盤における異なる重水素(D)濃集レベルをもつ、2つの水の源の存在が示唆される。一つは重水素に乏しい円盤内側のリザーバー、もう一つは円盤外側から内側へ向かって輸送された重水素の豊富なものである。
Two peculiar fast transients in a strongly lensed host galaxy
doi: 10.1038/s41550-018-0405-4
2つの異常なトランジェント現象が、強い重力レンズ効果をもたらす銀河団の背後にハッブル宇宙望遠鏡によって発見され、これは、明るい青色変光星もしくは反復新星の別々の爆発として、または一対の無関係な恒星のマイクロレンズ現象として説明される可能性がある。
Extreme magnification of an individual star at redshift 1.5 by a galaxy-cluster lens
doi: 10.1038/s41550-018-0430-3
z=1.49の位置にある星が前方にある銀河団によって重力レンズ効果を受け、大きく増光された。恒星の放射の変動は、銀河団の恒星、高密度天体の質量関数、そして暗黒物質のサブハローの存在についての洞察をもたらす。
Surface clay formation during short-term warmer and wetter conditions on a largely cold ancient Mars
doi: 10.1038/s41550-017-0377-9
初期の火星の状態に関する地球化学モデルが示唆するところによれば、全般的に低温な気候での間欠的な短期間の温暖な時期に、アルミニウムに富んだフィロケイ酸塩が、地表に短期間存在した水塊中で形成され、マグネシウムに富んだものは、地下の熱水環境で形成された可能性がある。
Atmospheric reconnaissance of the habitable-zone Earth-sized planets orbiting TRAPPIST-1
doi: 10.1038/s41550-017-0374-z
トラピスト-1星系のハッブル宇宙望遠鏡による観測から、ハビタブル・ゾーンの内部あるいは周辺にある3個の惑星に対して、雲がないH2がほとんどの大気は存在しないことが確認された。この結果は、これらの惑星が事実上、地球型惑星であるという仮説を支持する。
Detection of a westward hotspot offset in the atmosphere of hot gas giant CoRoT-2b
doi: 10.1038/s41550-017-0351-6
全球的な循環理論は、赤道域の強力なジェットが東に向かって高温ガスを吹き流し、これが原因となって、東側にずれたホットスポットが生じることを予測している。Dangらは、西側にかなりずれているホットスポットの検出を明らかにした。
An infrared measurement of chemical desorption from interstellar ice analogues
doi: 10.1038/s41550-018-0380-9
擬似的な氷星間塵表面におけるH2S、HSおよびHの間の反応によって生じる反応性脱離の効率が、この表面の in situ での赤外線計測を用いて定量化され、非熱的な脱離過程を理解するための有益な情報が得られた。
The stellar orbit distribution in present-day galaxies inferred from the CALIFA survey
doi: 10.1038/s41550-017-0348-1
現在の宇宙における、太陽の108.7から1011.9倍の質量をもった300個の銀河内の恒星軌道の真円度の分布が、CALIFA探査によって直接的に観測され、銀河のシミュレーションに対するベンチマークがもたらされた。
The unexpectedly large dust and gas content of quiescent galaxies at z > 1.4
doi: 10.1038/s41550-017-0352-5
近傍宇宙におけるほとんどの恒星の故郷である、z ~ 1.8に位置する静穏な早期型銀河(ETG)のサンプルは、一定の恒星質量で塵の量が近傍のETGよりも2桁多い。このことは、ガスの量がより高いことを示唆しており、この赤方偏移での星形成がガスの除去によって止まるという考え方と対立している。
Order parameters for the high-energy spectra of pulsars
doi: 10.1038/s41550-018-0384-5
パルサーの非熱的放射に対するモデルは、たった4つの物理パラメータを用いてパルサーのγ線およびX線スペクトルに一致させることができる。このモデルはいくつかのスペクトルの特徴を説明し、このモデルを用いて、γ線放射が与えられたものとしてX線でのパルサーの検出可能性を予測することができ、またその逆もできる。
Capabilities and prospects of the East Asia Very Long Baseline Interferometry Network
doi: 10.1038/s41550-017-0277-z
東アジア超長基線電波干渉計観測網(EAVN)は、21基の電波望遠鏡で構成され、その設備と周波数は活動銀河核のジェットの詳細な撮像、メーザーやパルサーの精確な位置計測、探査機の位置調整を可能にするように設定されている。
Hydrogen escape from Mars enhanced by deep convection in dust storms
doi: 10.1038/s41550-017-0353-4
火星大気中の水と塵の垂直分布に関する火星気候サウンダの複数年に及ぶ観測は、塵の嵐による深い対流が下層大気から中層大気まで水を輸送し、宇宙空間への水の散逸を強めていることが示された。
Spectroscopy and thermal modelling of the first interstellar object 1I/2017 U1 ‘Oumuamua
doi: 10.1038/s41550-017-0361-4
恒星間天体オウムアムアの可視光と赤外線のスペクトルは、表面組成が不均質であり、長期間にわたって宇宙線に曝された後の有機物を豊富に含んだ物質が支配的であることを示唆している。氷の豊富な内部構造は排除されない。
Constraints on the spin evolution of young planetary-mass companions
doi: 10.1038/s41550-017-0325-8
ガス巨大惑星と惑星程度の質量の褐色矮星の角運動量は、似たような物理過程によって調整されている。自転速度は最初の2-3億年は変化せず、これらの物理過程は惑星進化の初期段階のほとんどの期間で有効である。
Characterization of methanol as a magnetic field tracer in star-forming regions
doi: 10.1038/s41550-017-0341-8
メタノールのメーザー輝線は、大質量の星形成領域における磁場強度の重要なトレーサーである。本論文では、内部回転に起因する超微細構造を含む、メタノールの詳細な磁場特性のモデル化を詳細する。
A recurrent neural network for classification of unevenly sampled variable stars
doi: 10.1038/s41550-017-0321-z
新しい教師なしのオートエンコードする再帰型ニューラルネットワークは、最新の教師あり分類モデルを生成する。このネットワークは、分類されていない新しい観測から学習を続けることができ、ほかの教師なしの課題にも利用される可能性がある。
Three-dimensional motions in the Sculptor dwarf galaxy as a glimpse of a new era
doi: 10.1038/s41550-017-0322-y
ガイアとハッブル宇宙望遠鏡に基づいた、ちょうこくしつ座矮小銀河の星の正確な固有運動は、銀河系周囲の細長く伸びた大きな傾斜角をもつ軌道を移動し、ちょうこくしつ座矮小銀河の質量分布に関する従来のモデルを考え直す必要を示す。
Demise of faint satellites around isolated early-type galaxies
doi: 10.1038/s41550-017-0332-9
孤立した大質量の早期型銀河周辺にある伴銀河に対する、rバンドの等級でM = −14 のカットオフは、これらの伴銀河の光度関数が親銀河の環境との相互作用でほぼ決められることを示唆している。
Reconfinement and loss of stability in jets from active galactic nuclei
doi: 10.1038/s41550-017-0338-3
磁気を帯びていない相対論的なジェットの再閉じ込めの間、遠心力不安定性が増大し、乱流状態を引き起こす。この不安定性は、活動銀河核のジェットを2つのファナロフ・ライリー型の分岐の背後にあると考えられる。
Our current knowledge of the Antikythera Mechanism
doi: 10.1038/s41550-017-0347-2
アンティキティラ島の機械は知られている限り最古の機械式計算機である。最新の技術による撮影から、この機械は太陽や月の天球上の位置を示すことが明らかになった。また、多数の刻印の解読により、機械は黄道十二星座内で移動する惑星の位置を示すことが判明した。
Dynamics of the global meridional ice flow of Europa’s icy shell
doi: 10.1038/s41550-017-0326-7
エウロパの氷殻とその下の海に結びついた全球的な流れのモデルは、子午線方向の氷の流れの存在を示す。対流と海の熱輸送は、流れの方向および強度、そして氷の厚さの勾配に影響を及ぼす可能性がある。
Phase-resolved X-ray polarimetry of the Crab pulsar with the AstroSat CZT Imager
doi: 10.1038/s41550-017-0293-z
インドの天文観測衛星AstroSatによる、かにパルサーの高感度X線偏光計測は、パルスからずれた強く偏光した放射の初期の兆候を確認するとともに、パルスからずれた領域での偏光特性の変動も明らかにした。
A dusty star-forming galaxy at z=6 revealed by strong gravitational lensing
doi: 10.1038/s41550-017-0297-8
現在まで発見された激しい星形成銀河よりも、宇宙誕生から10億年に形成された一般的な「通常の」星形成銀河であると考えられる高赤方偏移の銀河の検出について報告する。
The effect of nuclear gas distribution on the mass determination of supermassive black holes
doi: 10.1038/s41550-017-0305-z
降着円盤の特性から導かれるブラックホールの質量とビリアル質量の推測は、幅の広がった輝線の幅に反比例して数倍異なっている。傾斜した円盤面のガスが、この影響を説明する可能性がある。
Transition from fireball to Poynting-flux-dominated outflow in the three-episode GRB 160625B
doi: 10.1038/s41550-017-0309-8
極めて明るいGRB 160625Bは、静穏な間隔で分けられた3つのサブバーストからなっているが、火球からポインティング・フラックスの優勢なジェット組成へと変化することを示す、熱的放射から非熱的放射への遷移を明らかにした。
The nature of giant clumps in distant galaxies probed by the anatomy of the cosmic snake
doi: 10.1038/s41550-017-0295-x
z〜1に位置する銀河が、異なる解像度で強力なレンズ効果によって多重撮像された。銀河内の星の巨大な塊の特性は、画像の解像度に依存する。星形成における銀河モデルは、この観測上の影響を考慮する必要がある。
Discovery of massive star formation quenching by non-thermal effects in the centre of NGC 1097
doi: 10.1038/s41550-017-0298-7
NGC 1097の中心核領域は非熱的な圧力が優勢であることが発見された。分子雲の星形成効率と磁場強度の間の反相関は、大質量星の形成が抑制されることを示唆する。
Single photon detection of 1.5 THz radiation with the quantum capacitance detector
doi: 10.1038/s41550-017-0294-y
非常に高感度で消費電力が少なく、配列を構成することが可能な光子検出器がテラヘルツ天文学に適していることが示された。この装置は個々の遠赤外線の光子を確実に計測することができる。
The past, present and future of pulsars
doi: 10.1038/s41550-017-0323-x
パルサーの発見から50年という節目を迎え、ジョスリン・ベル・バーネルが、これらの天体の検出や現在の理解、それに次世代の電波観測の先駆けとなった新しい時代の発見について述べる。
The Lovell Telescope and its role in pulsar astronomy
doi: 10.1038/s41550-017-0292-0
ジョドレルバンク天文台のラヴェル電波望遠鏡は、パルサーの発見から今日まで、パルサー天文学に基本的な役割を果たしてきた。本論は、天文学および初期の宇宙開発競争でラヴェル電波望遠鏡の成し遂げた偉業を概説する。
Powering prolonged hydrothermal activity inside Enceladus
doi: 10.1038/s41550-017-0289-8
非常に多孔質(未固結)であるコア内部の潮汐力は、エンセラダスに観測される全球的な特徴のすべてを引き起こすのに十分なエネルギーを生じることができる。この活動は数十億年にわたって保持される可能性がある。
The shock-heated atmosphere of an asymptotic giant branch star resolved by ALMA
doi: 10.1038/s41550-017-0288-9
進化した恒星である、うみへび座W星の大気がALMAで解像され、衝撃波加熱されていることが示された。これらの観測から、星周辺の構造、対流、化学組成、そして脈動の理解にとって重要な観測に基づいた制約が得られる。
Optical pulsations from a transitional millisecond pulsar
doi: 10.1038/s41550-017-0266-2
自転からエネルギー供給される状態から降着円盤の状態へと遷移したミリ秒パルサーからの可視光パルスが検出されている。可視光の放射は自転からエネルギー供給される磁気圏における電子シンクロトロン放射によるものであると考えられる。
An elevation of 0.1 light-seconds for the optical jet base in an accreting Galactic black hole system
doi: 10.1038/s41550-017-0273-3
降着を受けているブラックホール連星系からの可視光フラックスの急速な変動とX線フラックスのものとの間に見られる時間差が、明るく輝く電波ジェットとともに報告された。このことは、放射ジェットの基部がブラックホールから0.1光秒という特徴的な高さにあることを示唆する。
A population of highly energetic transient events in the centres of active galaxies
doi: 10.1038/s41550-017-0290-2
これまででもっとも高エネルギーのトランジェント現象の発見が報告された。その分光学的な特性と時間的な変化から、この現象は、膨張する物質と大量の高密度な周辺物質との間の衝撃波相互作用によって駆動されていることが示唆される。
The evolution of Saturn’s radiation belts modulated by changes in radial diffusion
doi: 10.1038/s41550-017-0287-x
土星の陽子放射線帯は完全に孤立した系であり、惑星の放射線帯における内因的な影響に対する実験室として使うことができる。太陽周期にわたるこれらの進化は、磁気圏の動径拡散の変化に関係した変動を示す。
Magma oceans and enhanced volcanism on TRAPPIST-1 planets due to induction heating
doi: 10.1038/s41550-017-0284-0
トラピスト-1星系にある惑星のうち内側の4個は、それらの親星との磁気的相互作用による誘導加熱を受けた。これによりそれらの惑星に火山活動の増加やガス放出が生じ、そして地表下のマグマオーシャンも生じた可能性がある。
The local nanohertz gravitational-wave landscape from supermassive black hole binaries
doi: 10.1038/s41550-017-0299-6
今回、個々の超大質量ブラックホール連星系からの連続的なナノヘルツの重力波放射と、それらがつくり出す重力波背景放射の計算について報告されている。これらは今後、パルサータイミングアレイで観測可能なものだ。
The independent pulsations of Jupiter’s northern and southern X-ray auroras
doi: 10.1038/s41550-017-0262-6
木星の南極におけるX線オーロラが、ホットスポット(これまで北極のオーロラにのみあることが知られていた)に集中しており、北極のオーロラの明るさと時間変動とはまったく独立して振舞うことが明らかにされた。
Disruption of Saturn’s quasi-periodic equatorial oscillation by the great northern storm
doi: 10.1038/s41550-017-0271-5
土星の北半球中緯度に見られた2010年から2011年の嵐は、3年以上にわたって赤道での準周期的な大気振動を擾乱させ、嵐から遠く離れた風の構造や大気温度を様変わりさせた。
Detection of nanoflare-heated plasma in the solar corona by the FOXSI-2 sounding rocke
doi: 10.1038/s41550-017-0269-z
太陽の静穏な活動領域からの1,000万ケルビン以上に加熱されたプラズマが生成した硬X線放射が発見され、これにより、ナノフレアによるプラズマ加熱の明らかな観測的な証拠が得られたことで、コロナ加熱におけるナノフレアの重要な役割が示唆される。
Tidally disrupted dusty clumps as the origin of broad emission lines in active galactic nuclei
doi: 10.1038/s41550-017-0264-4
1型活動銀河核からの広輝線の起源はよくわかっていない。中心部のブラックホールによって潮汐破壊される塵に富んだガス塊からの輝線の計算によれば、これらのガス塊から広輝線が生じることが示唆される。
The star-forming complex LMC-N79 as a future rival to 30 Doradus
doi: 10.1038/s41550-017-0268-0
大マゼラン雲のまだそれほど探査されていない南西領域には、かじき座30の星形成効率に匹敵する、大質量で隠れた星形成複合体が存在している。その中のもっとも明るい天体は、形成中の超星団の可能性がある。
The unpolarized macronova associated with the gravitational wave event GW 170817
doi: 10.1038/s41550-017-0285-z
2個の中性子星の合体が重力波現象GW 170817を引き起こし、これに対応した可視光とガンマ線のスペクトルの電磁放射が伴っていた。可視光放射の偏光の測定からは、ランタニド元素を豊富に含むマクロノバが明らかになった。
Cluster richness–mass calibration with cosmic microwave background lensing
doi: 10.1038/s41550-017-0259-1
銀河団の可視光放射から質量をマップすることは難しい。大質量銀河団による宇宙マイクロ波背景放射の重力レンズ効果を用いて、銀河団の可視光でのリッチネス(optical richness)を10パーセントのレベルでそうした銀河団の総バリオン質量に較正した。
No hot and luminous progenitor for Tycho’s supernova
doi: 10.1038/s41550-017-0263-5
チコの(Ia型)超新星の周辺環境のイオン比率の評価から、高温で明るい白色矮星を除外するのに十分な前駆天体の特性が絞り込まれた。2個の白色矮星の合体が考えられる。
The Pluto system after the New Horizons flyby
doi: 10.1038/s41550-017-0257-3
ニューホライズンズ探査機は2015年7月、冥王星とその準惑星系を接近通過して、50ギガバイト超の高解像度画像とデータをもたらし、こうしたデータによって、この準惑星に対する我々の見解と理解は一変した。このReviewはその主要な発見についての要約である。
Extragalactic radio continuum surveys and the transformation of radio astronomy
doi: 10.1038/s41550-017-0233-y
電波天文学は、数千万個の電波源を研究することになる将来の探査によって変革され、天文学上のさまざまな未解決の問題への新しい知見が得られるだろう。このReviewでは、この変革とそこへに至るまでを概説する。
Nuclear obscuration in active galactic nuclei
doi: 10.1038/s41550-017-0232-z
降着を受けている超大質量ブラックホールを取り巻いている物質は、ブラックホールとその親天体とを結びつける。赤外線およびX線による研究から、この物質の構造は複雑で塊状であり、動的であることが明らかになった。
Polarization due to rotational distortion in the bright star Regulus
doi: 10.1038/s41550-017-0238-6
恒星大気における電子散乱を原因とする偏光が、高速で自転している恒星レグルスで検出された。この恒星が球形から歪んでいることにより、この効果を確認することができ、およそ50年前からの予測が的中している。
A nova outburst powered by shocks
doi: 10.1038/s41550-017-0222-1
新星ASASSN–16maにガンマ線と可視光放射の間の強い相関が見られたことから、可視光の起源が、放出物における衝撃波からの再生された放射であり、標準モデルで考えられているような、高温の白色矮星付近で解放されるエネルギーではないことが示された。
Protostellar and cometary detections of organohalogens
doi: 10.1038/s41550-017-0237-7
低質量原始星と彗星67Pでクロロメタン(CH3Cl)が観測されており、宇宙空間で最初に発見された有機ハロゲンとなった。この化学種はこれまで生物指標有機分子であると考えられてきたが、著者らは別の非生物的な形成方法が存在することを示唆している。
Millimetre-wave emission from an intermediate-mass black hole candidate in the Milky Way
doi: 10.1038/s41550-017-0224-z
中間質量ブラックホール候補天体が、銀河系中心のSgr A*付近にある分子雲内で報告された。ALMAによる高解像度の観測結果から、極端なガスの運動学と、静穏なブラックホールに一致するコンパクトな電波源が明らかになった。
Hydrogen-rich supernovae beyond the neutrino-driven core-collapse paradigm
doi: 10.1038/s41550-017-0228-8
超新星OGLE–2014–SN–073の分光測光学と流体力学による研究から、この超新星には、標準的な重力崩壊型でニュートリノによって引き起こされる爆発ではおそらく説明できないほど、極めて大きな質量とエネルギーの放出が推測されることが示された。
The origin of methane and biomolecules from a CO2 cycle on terrestrial planets
doi: 10.1038/s41550-017-0260-8
メタンは火星上で、メタン生成と呼ばれる過程においてCO2の光触媒反応を通じ非生物的に生成される可能性があることが実験的に示された。メタンはその後、(衝突による)衝撃を受けて、RNA核酸塩基とグリシンが形成される可能性がある。
A candidate sub-parsec binary black hole in the Seyfert galaxy NGC 7674
doi: 10.1038/s41550-017-0256-4
互いが0.35パーセクの射影距離だけ離れた2個の大質量ブラックホールからなる連星系の候補が、ガスの豊富な相互作用している渦巻銀河NGC 7674で発見され、およそ0.7キロパーセクのZ字形の電波ジェットとおそらく反転したスペクトルの2個のコンパクトな電波コアによって裏付けられた。
Tests for the existence of black holes through gravitational wave echoes
doi: 10.1038/s41550-017-0225-y
ブラックホールと時空の特異点は科学の基本的な課題である。観測によりブラックホールの証拠を手に入れることは難しいが、精度の高い重力波の観測によって他の候補の存在を除外したり確認したりすることが可能である。
The future of astronomy in Australia
doi: 10.1038/s41550-017-0221-2
大型の新しい望遠鏡や観測機器、研究センターへの最近の投資のために、オールトラリアの天文学の先行きは明るい。この過程でオーストラリアの関心は、国立の施設から新しい多国籍で世界的な協力へと、移行し続けている。
Archaeology of active galaxies across the electromagnetic spectrum
doi: 10.1038/s41550-017-0223-0
活動銀河核(AGN)がその親天体に及ぼす影響を定量化するには、それらのライフサイクルの知識が必要である。AGNの考古学に関するこの総説で、可視光と電波観測から得られた、AGNのライフサイクルに関する主要な最近の発見をまとめる。
Formation of diamonds in laser-compressed hydrocarbons at planetary interior conditions
doi: 10.1038/s41550-017-0219-9
海王星や天王星の高大気圧下では、メタンからダイヤモンドが凝集する。今回、炭化水素の試料のレーザー衝撃実験によって、ダイヤモンドが凝集するためにはこれまで考えられていたよりも10倍の圧力が必要であるかもしれないことが明らかになった。
The nature of solar brightness variations
doi: 10.1038/s41550-017-0217-y
数分から数十年までの時間スケールに及ぶ太陽の光度変化は、地球の気候や太陽類似星をめぐる系外惑星の検出に関わってくるものであり、太陽表面の磁場と粒状斑によって十分かつ正確に説明できる可能性がある。
The stardust abundance in the local interstellar cloud at the birth of the Solar System
doi: 10.1038/s41550-017-0215-0
星間塵の成分は、隕石からのプレソーラー粒子の試料の分析によって定量化されており、これまで考えられているよりも少なくとも2倍多いことが発見されている。ケイ酸塩の量は星間塵のサイズ分布に従っている。
Detection of microgauss coherent magnetic fields in a galaxy five billion years ago
doi: 10.1038/s41550-017-0218-x
ローカルボリュームを超える銀河における重力レンズを通じて、大規模で秩序だった磁場を発見し特性を解析することによって、そのような磁場がどのように発生したのかが明らかになり、平均場ダイナモ起源が支持される。
Dynamical dark energy in light of the latest observations
doi: 10.1038/s41550-017-0216-z
最近の観測により、さまざまな宇宙論的な探査結果の間で対立があることが明らかになっている。暗黒エネルギーが赤方偏移に依存しており一定でないと仮定すると、この対立が緩和する可能性がある。暗黒エネルギースペクトル分析装置(DESI)によるサーベイで、この結果を確認することができるだろう。
Gaps and length asymmetry in the stellar stream Palomar 5 as effects of Galactic bar rotation
doi: 10.1038/s41550-017-0220-3
銀河系中心部に位置する棒状構造の回転により、パロマー5の恒星ストリームに見られる間隙と非対称性が説明できる可能性がある。したがって、銀河系中心部付近の似たようなストリームは、銀河系における暗黒物質のサブハローの相互作用を研究するには不適当である。
Heliophysics at total solar eclipses
doi: 10.1038/s41550-017-0190
皆既日食は、太陽風の起源である低層の太陽コロナを研究する唯一の機会である。本レビュー論文では、日食から得られるコロナの科学の最近の進展と、今年の皆既日食に向けた科学研究計画と社会貢献計画が示されている。
Stationary waves and slowly moving features in the night upper clouds of Venus
doi: 10.1038/s41550-017-0187
夜側の金星の雲頂でのビーナス・エクスプレスによる風の観測から、昼側とは異なる描像が示されている。表面の起伏に関係する多くの定常波、および高速と低速の両方の運動(昼間は高速の運動のみが存在する)も確認された。
A Martian origin for the Mars Trojan asteroids
doi: 10.1038/s41550-017-0179
火星のトロヤ群小惑星は、この惑星と同じ軌道上を回っていて力学的に関連しており、したがってそれらの起源は共通である。スペクトル観測と力学モデルからの情報を組み合わせたところ、火星のトロヤ群は衝突のあと、火星自身から放出されたことが示唆された。
The link between magnetic field orientations and star formation rates
doi: 10.1038/s41550-017-0158
星形成率と分子雲の磁場の整列を組み合わせた研究から、主に磁場が星形成の調整役になっていることが明らかになった。磁場が垂直に整列したところでは星形成が抑制される一方、平行に整列しているところでは星形成が促進される。
Stars caught in the braking stage in young Magellanic Cloud clusters
doi: 10.1038/s41550-017-0186
大マゼラン雲内のいくつかの星団は、ひろがった主系列ターンオフを示しており、構成要素である星の年齢が異なることが示唆される。しかし、もし最初は自転の速かった青色主系列星が制動を受けたとすれば、見かけの年齢の違いは解消される。
Strong dipole magnetic fields in fast rotating fully convective stars
doi: 10.1038/s41550-017-0184
M型矮星は、星の内部の対流運動によって駆動される恒星ダイナモを有している。これまで、こうしたダイナモで生じる磁場の強さは 4キロガウスで飽和すると考えられていたが、この上限が今回、双極ダイナモ状態をもつ 4つの星で破綻した。
Blue large-amplitude pulsators as a new class of variable stars
doi: 10.1038/s41550-017-0166
これまで確認されていなかった種類の変光星がOGLE探査データで発見され、約30分の時間スケールの周期的な光度変化、約 0.3等級の振幅、そして約30,000ケルビンの温度という特徴があった。これらは進化した低質量星の可能性がある。
Formation of wide binaries by turbulent fragmentation
doi: 10.1038/s41550-017-0172
多重星は円盤の分裂あるいは乱流による分裂のどちらかを通じて形成されたと考えられているが、乱流の分裂は観測によって明確に確認されたわけではない。今回、乱流による分裂の証拠である、離れた連星系をとりまく整列していない円盤について報告されている。
A universal minimal mass scale for present-day central black holes
doi: 10.1038/s41550-017-0147
局所的に高密度な環境から星を降着させる低質量ブラックホールは、最初の質量に関係なく、ハッブル時間を通して太陽質量の105倍という最小質量以上に成長する。このことは、なぜ現在まで中間質量ブラックホールが存在しないのかという説得力のある説明となる。
Impact of supermassive black hole growth on star formation
doi: 10.1038/s41550-017-0165
活発に降着を受けている超大質量ブラックホールからのフィードバックは、銀河の進化において重要であると考えられる。銀河における星形成に及ぼすこのフィードバックの影響について、理論および観測の結果を概説する。
Silicate–SiO reaction in a protoplanetary disk recorded by oxygen isotopes in chondrules
doi: 10.1038/s41550-017-0137
非平衡エンスタタイト・コンドライトの酸素同位体は、3酸素同位体プロット上で急峻な勾配を示す。このことは、太陽系原始惑星系円盤初期の段階におけるケイ酸塩–SiO反応の発生によって説明できる。
Disk-driven rotating bipolar outflow in Orion Source I
doi: 10.1038/s41550-017-0146
速度のトレーサーに Si18O を用いて、大質量の若い恒星によって放出される磁気遠心力円盤風で駆動された、回転アウトフローについて報告する。この回転は、アウトフローにより角運動量が除去されている証拠である。
A rotating protostellar jet launched from the innermost disk of HH 212
doi: 10.1038/s41550-017-0152
原始惑星系円盤の表面から生じる円盤風は、円盤半径およそ10au外側から角運動量を除去する。Leeたちは、残りの角運動量が10auより内側の半径で除去され、これが、0.05auのスケールで放出される高度に絞り込まれたジェットによるものであり、その結果として降着が可能になることを明らかにした。
Constraints on pulsar masses from the maximum observed glitch
doi: 10.1038/s41550-017-0134
パルサーの回転数である「グリッチ」の最大値を用いるという革新的な方法により、この質量を絞り込むことができる。すなわち、グリッチが大きいほど質量は小さくなる。この手法は、グリッチの観測されるすべての天体の質量を推定するために用いられる。
Ten billion years of brightest cluster galaxy alignments
doi: 10.1038/s41550-017-0157
銀河団でもっとも明るい銀河は、近傍宇宙で銀河の集まっているフィラメントに沿っていることが知られている。本論文ではこの相関が、宇宙の年齢が現在のわずか3分の1であったころまで遡ることを明らかにする。このことから、もっとも明るい銀河団銀河に特有の歴史が確かなものとなった。
Differential neutrino condensation onto cosmic structure
doi: 10.1038/s41550-017-0143
N体シミュレーションTianNu中で数百万個の冷たい暗黒物質粒子とニュートリノを共進化させると、同程度の暗黒物質密度をもつ領域であっても、異なるニュートリノ密度をもつ可能性が示される。これらの密度変動は、宇宙構造に影響を及ぼす可能性がある。
In vacuo dispersion features for gamma-ray-burst neutrinos and photons
doi: 10.1038/s41550-017-0139
ガンマ線バーストから生じる超相対論的な光子とニュートリノは、伝搬時間がエネルギーに依存性する可能性を導く量子重力効果を検証する機会をもたらす。天体物理学データの統計解析は、この特性が観測された可能性があることを示している。
Quantitative evaluation of gender bias in astronomical publications from citation counts
doi: 10.1038/s41550-017-0141
性差別は、広く学術界で、そしてとりわけ天文学界で重要な問題である。女性が著者となっている天文学の論文の被引用数は、男性が著者となっている論文の被引用数よりも系統的に10パーセント低いことが、機械学習の手法を用いた研究で明らかになった。
A seven-planet resonant chain in TRAPPIST-1
doi: 10.1038/s41550-017-0129
恒星TRAPPIST-1をトランジットし大きさが地球程度である7番目の惑星の軌道パラメータが報告され、同時にこの惑星系の惑星すべてを結びつける複雑な三体共鳴の研究も報告されている。
Constraints on the magnetic field strength of HAT-P-7 b and other hot giant exoplanets
doi: 10.1038/s41550-017-0131
磁気流体力学モデルにより、風が変動する高温の巨大系外惑星HAT-P-7 bの大気において光度のピーク位置のずれが変動する理由を説明できる。観測結果を再現するためには、最小でも6Gの磁場強度が必要である。
A solar-type star polluted by calcium-rich supernova ejecta inside the supernova remnant RCW 86
doi: 10.1038/s41550-017-0116
超新星残骸の中心からずれた位置に見えないX線源を伴う連星系に、金属に汚染されたG型星が検出されたことにより、この星がRCW 86における中心核崩壊型超新星に隠れた前駆天体のペアであったことが示唆される。
Mass inventory of the giant-planet formation zone in a solar nebula analogue
doi: 10.1038/s41550-017-0130
ALMAによるうみへび座TW星の観測で、13C18OのJ = 3-2分子線を用いて、巨大惑星の形成が予想される星周円盤の中央面が調べられた。ほかの輝線も用いて、ガスの質量分布、温度、ガスの塵に対する比率が決定された。
Diffuse Galactic antimatter from faint thermonuclear supernovae in old stellar populations
doi: 10.1038/s41550-017-0135
対消滅してガンマ線放射を生成する銀河系内陽電子の起源は、いまだに議論のある問題である。2つの白色矮星の合体は、こうした陽電子の主な発生源の可能性がある。そのような合体は、低光度の熱核反応型超新星を形成する。
Too good to be true?
doi: 10.1038/s41550-017-0112
重力波の検出は、数十年にわたる理論的、観測的、そして技術的なたゆみない成果の頂点である。一方で驚きをもって受け入れられたのは、連星系のブラックホールに由来するこうした初検出の重力波が、実際に理論的に予測されていたことである。
Binary stars as the key to understanding planetary nebulae
doi: 10.1038/s41550-017-0117
惑星状星雲は、従来は単独星の終着点と考えられていたが、単独星のシナリオでは説明できない多様な形態を示している。ほとんどの惑星状星雲は、おそらく連星の相互作用の結果だということが明らかになりつつある。
High-resolution observations of flare precursors in the low solar atmosphere
doi: 10.1038/s41550-017-0085
磁気エネルギーは太陽面の爆発的なフレアにエネルギーを供給する。今回、これまでにない解像度の観測によって、太陽大気下部にそのようなフレアの前駆体を確認した。これらの発見は、フレア形成の理論モデルを絞り込む手がかりとなるだろう。
The bubble-like shape of the heliosphere observed by Voyager and Cassini
doi: 10.1038/s41550-017-0115
カッシーニと2機のボイジャーから得られたイオンと中性原子の計測結果がまとめられ、太陽圏が太陽周期に速やかに(2~3年の遅れで)応答することと、よく描かれているような尾を曳いた形ではなく泡のような形であることが明らかにされた。
The pristine interior of comet 67P revealed by the combined Aswan outburst and cliff collapse
doi: 10.1038/s41550-017-0092
2015年7月にロゼッタによって観測された、彗星67Pの核からの明るいアウトバースト的活動は、そのバーストと同時に部分的に崩落した崖が原因であり、これら2つの現象の間に関係性が確かめられた。その崩壊によって、表面下にあった当初のままの氷も露出した。
Bubble streams in Titan’s seas as a product of liquid N2 + CH4 + C2H6cryogenic mixture
doi: 10.1038/s41550-017-0102
タイタンの極領域には液体メタンの湖が点在する。数値モデルでは、リゲイア海と呼ばれる湖の湖床付近で窒素の離溶によって浮上する泡の発生が明らかになり、この湖表面にカッシーニで観測された一時的な発光を説明できる。
Titan brighter at twilight than in daylight
doi: 10.1038/s41550-017-0114
カッシーニのカメラで、異なる角度(0~166°)の軌道からタイタンを観測した結果、この衛星が日中よりも薄明時に明るく見えることが分かった。この効果はタイタンのもやの散乱特性と関係し、太陽系外惑星でも存在しうる。
The Galaxy’s veil of excited hydrogen
doi: 10.1038/s41550-017-0103
およそ75万に達するスペクトルを重ね合わせることによって、銀河系ハローのこれまで知られていなかった構成要素が明らかになり、これは、広範囲に分布する中性の励起水素の層で、そこには銀河系のバリオンのかなりの部分が存在する可能性がある。
Spectroscopic confirmation of an ultra-faint galaxy at the epoch of reionization
doi: 10.1038/s41550-017-0091
ごく初期の宇宙に暗い銀河が今回発見され、これは、深部観測とその銀河からの放射を増光させる大質量銀河団のおかげである。この銀河は、現在まで知られているそうしたわずか5個のうちの1個であり、この発見で、宇宙の再電離の様子が絞り込まれる。
The detection of Rossby-like waves on the Sun
doi: 10.1038/s41550-017-0086
全球規模のロスビー波は惑星大気に現れ、その惑星の天気に影響を及ぼす。今回、磁場によって駆動される似たような波が太陽で明確に検出された。もしかするとこれを、太陽の活動とそれに関連する宇宙天気の予報に役立てることができるかもしれない。
Early Solar System irradiation quantified by linked vanadium and beryllium isotope variations in meteorites
doi: 10.1038/s41550-017-0055
カルシウムとアルミニウムに富んだ包有物(CAI)は太陽系で最古の固体であり、この中のベリリウムとバナジウムの存在度から、太陽が若くてより活動的だったとき、短時間(300年間)かつ近距離(⋍0.1 au)でCAIが太陽フレアから段階的な放射を受けたことがわかる。
Thermally anomalous features in the subsurface of Enceladus’s south polar terrain
doi: 10.1038/s41550-017-0063
カッシーニ搭載のRADARにより、エンセラダスの「タイガー・ストライプ」付近の領域が探査された。その結果、表面下は温暖で温かな亀裂も存在することが明らかにされ、この衛星の氷の地殻がこれらの地点でわずか数キロメートルの厚さであることが示されている。亀裂が休止状態であることから、地質学的活動は間欠的であるようだ。
All planetesimals born near the Kuiper belt formed as binaries
doi: 10.1038/s41550-017-0088
異常な特性をもったカイパーベルト天体(KBO)がいくつか(同じタイプのKBOはふつう赤みがかっているが、これらは青みがかった色で、すべて連星である)発見され、太陽系のもっとも外側の領域での形成過程における制約が得られる。
Rapid formation of massive black holes in close proximity to embryonic protogalaxies
doi: 10.1038/s41550-017-0075
大質量のガス雲が収縮し、分裂や星形成を伴わずに直接ブラックホールを形成する重要な要因は、強い電離背景放射と周辺で非常にタイミング良く起こる星形成バーストである。
Magnetic origin of black hole winds across the mass scale
doi: 10.1038/s41550-017-0062
超大質量ブラックホール周囲のアウトフローに対する磁気流体力学的なモデルは、恒星質量ブラックホール周囲のアウトフローのX線特性も再現できる。このことは、磁力がこれらのウインドを駆動する上で普遍的な役割を果たすことを示している。
Spin alignment of stars in old open clusters
doi: 10.1038/s41550-017-0064
Corsaroたちは星震学を用いて、2つの老いた散開星団内の星の自転軸を計測し、多数の星の間で自転軸が整列していることを明らかにした。これは母体となった分子雲がもともと持っていた角運動量の痕跡であると考えられる。
Growth of the nonbaryonic dark matter theory
doi: 10.1038/s41550-017-0057
宇宙に見えない物質があることを示唆する最初の手掛かりから、暗黒物質について現在得られている多くの証拠まで、James PeeblesがInsight Perspectiveで、1970年代に大きく進展した観測と理論を概説する。
How dark matter came to matter
doi: 10.1038/s41550-017-0059
暗黒物質は、その存在量にもかかわらず、徐々に受け入れられていった。Jaco de Swartらは、暗黒物質が宇宙論へといかして発展してきたかの歴史を再構成し、暗黒物質について特集されたInsights中のReview Articleで概説している。
Two massive rocky planets transiting a K-dwarf 6.5 parsecs away
doi: 10.1038/s41550-017-0056
近傍の惑星系に、我々から見て親星の正面をトランジットしている2個の地球型惑星が発見された。トランジットする地球型惑星は、それらの大気を含め詳細な特性を評価することができるため、探し求められていたものだ。同じ惑星系にそのような2個の惑星をもつものは非常に珍しい。
A circumbinary debris disk in a polluted white dwarf system
doi: 10.1038/s41550-016-0032
Ferihiらによると、「汚染された」白色矮星を含む連星系には、安定で岩石質の周連星デブリ円盤が存在しているに違いないらしい。したがって、大きな微惑星の形成や、地球型惑星となりうる惑星の形成は、このような系では確実で一般的であるに違いない。
A tidal disruption event in the nearby ultra-luminous infrared galaxy F01004-2237
doi: 10.1038/s41550-017-0061
星が大量に形成されている環境は、星の潮汐破壊現象により大きく寄与するが、これは、スターバースト銀河内の超大質量ブラックホールに降着している星の残骸が検出されたことから明らかになった。
A likely decade-long sustained tidal disruption event
doi: 10.1038/s41550-016-0033
超大質量ブラックホールにより長期間にわたって持続するこれまで例を見ない星の破壊現象が、ここ10年ほどで明らかにされてきた。スペクトルの情報からは非常に効率的な降着が考えられるが、最近の観測ではもっと穏やかな降着モードへ移行しているような兆候が見られる。
The large-scale nebular pattern of a superwind binary in an eccentric orbit
doi: 10.1038/s41550-017-0060
ALMAによって撮像された原始惑星状星雲のほぼ球状の外側領域と非球状の内側領域は、楕円軌道をめぐる星からなる連星系が中に隠れているとして説明される。
Analogues of primeval galaxies two billion years after the Big Bang
doi: 10.1038/s41550-017-0052
中程度の赤方偏移を示す銀河を選び出すと、このグループは、原始銀河に似ているように見える。原始銀河に似てそれよりも近いこうした銀河のスペクトルを解析して化学組成とイオン化準位を求めることで、暗すぎてよく研究されていない銀河の理解が進展する。
Biogenic oxygen from Earth transported to the Moon by a wind of magnetospheric ions
doi: 10.1038/s41550-016-0026
月の土は地球からの酸素イオンを含み、この酸素は地球の大気を逃れて磁気圏の風を通じて月に届いたものであるという証拠が示された。月の表面は地球の大気の歴史についての手掛かりを有している可能性がある。
Rare meteorites common in the Ordovician period
doi: 10.1038/s41550-016-0035
地球に落下する隕石の組成が時代とともに変化するという初の実験的な証拠を、Heckたちが明らかにした。4億7千万年前の隕石の分布は、小惑星帯で起こった現象に関係した影響により、現在とかなり違っていた。
The Charon-forming giant impact as a source of Pluto’s dark equatorial regions
doi: 10.1038/s41550-016-0031
ニューホライズンズ探査機は、冥王星の赤道領域にあるおそらく有機物からできていると考えられる巨大で赤みがかった領域について明らかにした。本論文では、冥王星最大の衛星カロンを形成したまさに同じ巨大衝突によってその領域が形成されたことを明らかにする。
Origin of meteoritic stardust unveiled by a revised proton-capture rate of 17O
doi: 10.1038/s41550-016-0027
隕石小片の同位体分析は、その起源となる特定の天体をいまだに特定できていない。修正された17Oの陽子捕獲率は、中間質量(太陽質量の4倍から8倍)の恒星が大部分の隕石小片の源であると突き止めるのに役立った。
The dipole repeller
doi: 10.1038/s41550-016-0036
密度過少領域であるダイポール・リペラーの存在が、局部銀河群の速度場の研究に基づいて予測された。このスーパーボイドとシャプレー超銀河団の複合効果が局部的な宇宙の流れを調整している。
Direct evidence of hierarchical assembly at low masses from isolated dwarf galaxy groups
doi: 10.1038/s41550-016-0025
階層的成長について現在受け入れられているモデルである、暗黒物質が支配的な宇宙は、孤立した矮小銀河群がまれであることを予測している。そのような系が7つ発見されたことは、それらが現在の中間質量銀河の構成要素であることを示している可能性がある。
Polarimetric evidence of a white dwarf pulsar in the binary system AR Scorpii
doi: 10.1038/s41550-016-0029
偏光した放射の周期的なパルスと強い磁場が白色矮星の連星系に発見された。これらの発見は、これまで中性子星のみに関連するとされていたパルサー状の放射機構を裏付けている。
Three eras of planetary exploration
doi: 10.1038/s41550-016-0010
惑星の形成と進化において重要な未解決の問題を、水を基本的な共通主題として解説し、惑星や系外惑星の研究者たちがそれらを解決する上で互いにどのように協力できるかを述べている。
The case for electron re-acceleration at galaxy cluster shocks
doi: 10.1038/s41550-016-0005
銀河団同士の合体から得られた多波長観測データから、活発に降着を受けているブラックホール付近から放出された相対論的電子が、銀河団の衝撃波のところで効率的に再加速されて、拡散した電波放射を特徴的に生成していることが明らかになった。
Terahertz and far-infrared windows opened at Dome A in Antarctica
doi: 10.1038/s41550-016-0001
南極大陸のドームAで得られた20μmから350μmの間の大気スペクトルの解析により、地上からでは一般に水蒸気の波長帯に妨げられるテラヘルツ波長と遠赤外線波長の天文観測にとって、この地が年間を通じてきわめて好条件にあることが示された。
The superluminous transient ASASSN-15lh as a tidal disruption event from a Kerr black hole
doi: 10.1038/s41550-016-0002
トランジェント天体ASASSN-15lhはこれまで、発見された超新星の中でもっとも明るいものであるとされていた。しかし現在では、そのフレアが潮汐破壊事象であり、高速回転するブラックホールが隣接する星を引き裂いているものであるという説得力ある証拠が存在している。
Variability in the atmosphere of the hot gas giant Hat-P-7b
doi: 10.1038/s41550-016-0004
高温で巨大な太陽系外惑星HAT-P-7bの位相曲線におけるピークの時間変動は、この惑星大気の風速と雲量の変化で説明される。これまで、このような「天気」は太陽系外の巨大惑星では観測されていなかったものだ。
Surface water-ice deposits in the northern shadowed regions of Ceres
doi: 10.1038/s41550-016-0007
準惑星ケレスの北極領域にある10個のクレーターの永久影の中に明るい堆積物が発見され、そのうち少なくとも1つは水氷からできていることがわかった。このことは、ケレスが月や水星のように、高緯度域で水氷を逃さずに保持していることを意味する。
Water in the shadows
doi: 10.1038/s41550-016-0030
このビデオは私たちを太陽系の中でもっとも低温で、暗い場所であるケレスの極領域にあるクレーターへと連れて行ってくれる。ケレスは小惑星帯の中でもっとも大きな小惑星である。NASAのドーン探査機によって撮影された新しい画像は、太陽の光が決して当たることのないクレーターのいくつかにとらえられた水氷を明らかにした。ケレスは現在のところ永久影の領域に水氷が確認されている、月そして水星に続く三番目の惑星体である。ケレスの明るく輝いた水氷を理解することによって、将来の恒久的な月面基地の建設に備え、大気のない月やほかの惑星体の水についての理解を深めたいと望んでいる。
Experimental constraint on dark matter detection with optical atomic clocks
doi: 10.1038/s41550-016-0009
トポロジカルな欠陥(たとえば、宇宙ひも)の形で暗黒物質を検出するため、単一光原子時計を用いた実験装置が提案されている。検証ではこれまでと同様な実験に比べて、およそ3倍の感度が示された。
Large molecular gas reservoirs in ancestors of Milky Way-mass galaxies 9 billion years ago
doi: 10.1038/s41550-016-0003
恒星質量と星形成速度が、天の川銀河の85億年前の主な前駆天体と同程度である複数の銀河から得られた低温分子ガスの計測結果によって、星形成の物理が現在見られるものと同様であることが明らかになった。