免疫:「スペイン風邪」ウイルスの威力
p.267
1918年に起こった「スペイン風邪」インフルエンザの世界的大流行は異例に深刻なもので、およそ5000万人が死亡した。しかし、なぜそれほど壊滅的だったのだろうか。二次的感染治療用の抗生物質がなかったことや、社会経済的な諸要因が関係していた可能性もあるが、再構築された1918年ウイルスをヒト以外の霊長類に感染させた実験から、このウイルス自体のもつ致死的な性質が大きな要因であったことが今回示唆された。実際、このウイルスは、ヒト以外の霊長類に実験的に感染させた場合に死をもたらす唯一のインフルエンザウイルスである。そして、1918年ウイルスはほかのヒトインフルエンザウイルスと異なり、自然免疫を抑制する。最近広まっているH5N1ウイルスも、1918年ウイルスに似た重症の肺感染を引き起こし、また自然免疫応答を抑制するので、宿主の自然免疫応答を保護するような治療により、こうしたインフルエンザウイルスによる感染の重症度を軽減できるかもしれない。doi: 10.1038/445267a