Nature ハイライト
生体力学:安定性と不安定性を兼ね備えた鳥類飛行
Nature 603, 7902
最新鋭の戦闘機は、その機動性が不安定性の関数であるため、操縦できるのは反応速度が極めて優れた精鋭パイロットだけである。鳥類では、不安定な種ほど敏捷性に優れていることから、進化の過程で不安定性を増す方向に選択が働いてきたと広く考えられている。しかし、鳥類は飛行中に翼を変形させることができ、さらに、機動性は飛行中の鳥の重心および慣性モーメントに敏感に依存するため、それを実際に確認して理論化するのはこれまで困難だった。今回C Harveyたちは、鳥類22種の慣性特性を肘および手根の屈曲および伸展の全範囲にわたって調べ、鳥類は翼の変形によってロールおよびヨーの慣性を著しく変化させられるが、それによる重心の位置への影響は最小限であることを明らかにしている。また、こうした知見をすでに確立された鳥類系統樹にマッピングすることで、機動性の獲得に向けた単調な選択の不在が見いだされた。重要なのは、鳥類では安定と不安定を両立させるように選択が働いてきたということであり、そうした両立は時として同じ個体でも見られる。
2022年3月24日号の Nature ハイライト
量子物理学:自分を較正できるセンサー
デバイス物理学:マイクロホンにもなる生地
電子デバイス:伸縮性全ポリマー型高輝度LED
化学:準安定な六方最密構造の水素化パラジウム
化学:膜輸送担体として働くホウ素クラスター
生体力学:安定性と不安定性を兼ね備えた鳥類飛行
神経科学:これまでのBWASは試料数が足りていない
神経科学:競争的努力の制御
神経科学:社会的順位の符号化
免疫学:炎症性腸疾患における菌株の多様性と重症度
コロナウイルス:アフリカ南部でのオミクロン株の初期の伝播動態
コロナウイルス:齧歯類で確認されたオミクロン株の弱毒化
コロナウイルス:マウスモデルにおけるオミクロン株の複製と病原性の解析
コロナウイルス:オミクロン株の病原性は従来株より低い
コロナウイルス:オミクロン株の複製特性と病原性の解析
腫瘍生物学:腫瘍で見られる代替性のアミノ酸置換
細胞生物学:肝細胞小胞体の構造は代謝状態と関連している
生化学:菌類Gタンパク質共役受容体の活性化機構