Nature ハイライト
Cover Story:社会的な絆:優先順位の変化がキンカチョウの脳のドーパミン報酬系の動的な再同調を促進する
Nature 623, 7986
飢え、渇き、孤独、野心の全てが、私たちが食料、水、社会的相互作用、自身のパフォーマンス結果をどの程度高く評価するかの決定に役割を果たしている。報酬が得られた瞬間、神経伝達物質ドーパミンが大量に脳に放出されるが、こうしたドーパミンシグナルが、個体の優先順位が変わる際にどのように変化するかはまだよく分かっていない。今回J Goldbergたちは、雄のキンカチョウ(Taeniopygia guttata;表紙写真)で、水分摂取、さえずりの評価、求愛などの行動をしている際のドーパミンシグナルの変化を調べている。その結果、ドーパミン応答は、その時の優先順位に基づいて動的に調節されることが見いだされた。例えば、雌への求愛に集中しているときには、水への欲求が低下し、水とさえずりのパフォーマンスの両方に対するドーパミン応答が弱まった。その代わり、雄のドーパミンシグナルは、雌からの社会的フィードバックによって駆動された。重要なのは、雌に駆動されるドーパミン放出が、社会的コミュニケーションに充てられた雄の脳の一部に特異的に観測されたことであり、これによって求愛時の社会的報酬シグナルの新たな特異性と優先順位が明らかになった。
2023年11月9日号の Nature ハイライト
天文学:銀河系外縁部に存在するリンを含む分子種
天文学:矮小銀河と星団のギャップを埋める天体群の発見
物性物理学:三次元材料で確認された平坦バンド
熱物理学:ナノ構造の熱伝導を大幅に増強する表面フォノンポラリトン
太陽光発電:ペロブスカイト太陽電池の実性能を実験室で予測する
化学:イオンの溶媒和の初期段階が初めて観測された
材料化学:水和物結晶と無水物結晶の自由エネルギーの計算精度向上
生物地球化学:岩石中有機炭素の酸化による大量のCO2放出
地球科学:水を含む酸化的な島弧マグマから作られた初期大陸地殻
保全生物学:天然ゴム関連の森林減少の現実
細胞生物学:雑種マウスの雌が不稔性となる細胞生物学的機構
神経科学:アメをムチに勝たせる神経機構
腫瘍生物学:神経活動はBDNFを介して腫瘍プログレッションを増強する
神経科学:失神の分子機構
免疫学:ヒト脳発生でミクログリアが神経発生に果たす役割
神経科学:線虫頭部におけるシナプス単位での信号伝播アトラス
免疫学:膵臓がんの病因となる免疫炎症病態への腫瘍関連マクロファージの関わり
生物工学:より良い疾患モデルマウスを作製する
がんゲノミクス:多様ながんの進行を促進するエピジェネティック因子