Nature ハイライト
Cover Story:脳の排液系:脳脊髄液を流出させるハブ
Nature 625, 7996
脳脊髄液(CSF)は、脳と脊柱を循環して、機械的支持と栄養をもたらすとともに不純物の除去を助けている。CSFがリンパ系を通して流出することはかねてから知られていたが、この過程におけるリンパ系の接続と調節の詳細については解明が難しかった。今回G Kohたちは、マウスで蛍光トレーサーを用いて、鼻咽頭リンパ管叢と呼ばれる鼻の奥のリンパ管網が、脳から頸部リンパ節へのCSFの流れを促進していることを明らかにしている。表紙はこれを示した画像で、リンパ管叢(上部)と深頸部のリンパ管(中間部と下部)の直接的なつながりが緑色で強調され、青色が血管を、赤色が平滑筋を示している。著者たちは、このリンパ管叢は加齢に伴い退縮して機能を失い、アミロイドβなどの疾病関連タンパク質の除去を妨げる可能性があると指摘しているが、深頸部リンパ管を薬理学的に刺激することで、加齢に関連するこのハブの機能低下を抑制できることも示している。
2024年1月25日号の Nature ハイライト
原子物理学:ウランを使った強電場量子電磁力学の実験的検証
量子シミュレーション:共振器を用いて超伝導をシミュレートする
ナノフォトニクス:リング半導体レーザーに生成された光ソリトン
光物理学:イオン伝導体におけるイオンホッピングと記憶効果
材料科学:負の混合エンタルピーがもたらす高い強度と延性
冶金学:水素プラズマ還元で赤泥をグリーンスチールに変える
化学:分子イオンの生成と構造緩和の追跡
環境科学:全球の帯水層の急速な地下水位の低下と回復
気候変動の影響:自然資本に対する気候変動の影響
生態学:世界の熱帯林に共通した樹種の構成パターン
ゲノミクス:霊長類で特異的に制約を受けている配列エレメント
神経科学:トップダウン指令で動物は逃げる
細胞生物学:植物における鉄利用の局所的な調節を介した栄養免疫
がんゲノミクス:ctDNAを用いたホジキンリンパ腫の非侵襲性プロファイリング
発生生物学:単一細胞レベルでの哺乳類小脳の比較発生学
微生物学:不稔感染を誘導するCRISPRエフェクター
免疫遺伝学:塩基編集による変異誘発によりT細胞機能を調整する対立遺伝子を見つけ出す
遺伝学:ヒトの血液型は腸内微生物群の構造に影響している
構造生物学:短い原核生物アルゴノートの形成と活性化の構造基盤