Nature ハイライト
Cover Story:死がもたらす進路:捕食者の大量死が湖の生態系に及ぼす隠れた影響
Nature 626, 7998
表紙は、米国テキサス州のコーパスクリスティ湖で発生した魚の大量死の様子である。こうした事象はますます増えているが、食物網に対する捕食者の死の影響は完全には分かっていなかった。今回S Tyeたちは、いささか直観に反しているが、実際には湖生態系における捕食者の大量死が食物網を安定化し、捕食者除去の影響を隠し得ることを明らかにしている。著者たちは、植物プランクトン、動物プランクトン(植物プランクトンを餌にする)、魚(動物プランクトンを餌にする)からなる人工的な湖環境を作って実験を行った。その結果、魚が大量死すると、捕食の減少によって動物プランクトンが急激に増加する代わりに、死んだ魚の分解が植物プランクトンへの栄養供給を助けるため、植物プランクトンの数が増えて食物網の安定化に役立つことが分かった。
2024年2月8日号の Nature ハイライト
惑星科学:土星の衛星ミマスに存在する氷殻下の海
極低温気体:マイクロ波場によって弱く結合した極低温四原子分子
量子物理学:ユニタリー・フェルミ気体に観測された擬ギャップ
有機LED:青色りん光有機LEDの長寿命化
材料科学:放電状態で放置することによる孤立リチウムの回復
電池:室温で動作するカルシウム–酸素電池
気候科学:氷期の南半球は湿潤だった
環境社会科学:パルプ・製紙工業の国別ネットゼロ戦略
考古学:ホモ・サピエンスの北方への拡大は予想より早かった
神経科学:敗北を学ぶ脳内機構
発生生物学:ヒトの着床前後の自然な発生を再現する三次元胚モデル
発生生物学:造血系の出現も反映したヒト初期胚発生モデル
微生物学:未培養微生物の新規タンパク質ファミリーの特定
免疫学:粘膜免疫増強のためのワクチンブースター接種法の比較
免疫学:組織常在型記憶T細胞による水際対策
がん:フェロトーシスから逃れるために腫瘍が悪用する代謝物
生化学:未知の代謝物の発見に使える逆メタボロミクス
構造生物学:臨床薬と複合体を形成しているヒトVMAT2の構造
生化学:生物活性ペプチドに強く結合するタンパク質のde novo設計法