Nature ハイライト
Cover Story:カエルのサウナ:太陽光に熱せられた隠れ家が両生類の致死的な真菌感染症との闘いに役立つ
Nature 631, 8020
真菌が原因のツボカビ症は世界中で急速に広がり、少なくとも90種の両生類を絶滅に追いやった。飼育下の両生類の治療には成功しているが、野生での疾病管理は依然として難しい課題である。今週号ではA Waddleたちが、野生の両生類がツボカビ症を克服するのに役立つ可能性のある単純な手法を提示している。この手法のカギとなるのは温度で、ツボカビ症の原因菌が28°C以上の環境に耐えられないことを利用している。著者たちは、太陽の光で温められた小さな温室の中に穴あきれんがを積み上げて微小生息地を作った。オーストラリアのキンスジアメガエル(Litoria aurea)を使って実験したところ、カエルたちは表紙の写真のように高温の場所でじっとしているのを好むことが分かった。この「カエルサウナ」で体温が十分に上昇したカエルは、真菌感染を軽減させて排除することができた。さらに、このようにして回復したカエルは、真菌の繁殖に最適な低温環境下でも、ツボカビ症に対する抵抗力を示した。
2024年7月11日号の Nature ハイライト
量子物理学:双極性分子で実現されたボース・アインシュタイン凝縮体
量子光学:ネマチック液晶によるエンタングルした光子の生成
スピントロニクス:ペロブスカイト材料を用いたスピン注入
ソフトマテリアル:靭性と変形能とひずみ回復性を併せ持つイオノゲル
有機化学:ラジカルを用いた天然の糖類の官能基化法
有機化学:SNV反応によるアルケン側鎖を持つ炭素鎖の合成
古海洋学:23億年前に始まった大気–海洋の連結した酸素化
地震学:地球内核の逆戻り
生理学:ハエの呼吸にも血球が関与する
神経科学:ハエの行動制御系のコネクトミクス
微生物遺伝学:肺炎球菌の地理的な伝播動態をモデル化
細胞微生物学:病原菌の新たなAMP化酵素ファミリーの特定
疫学:COVID-19アウトブレイク初期段階のSARS-CoV-2サーベイランス
細胞生物学:小胞体と細胞膜の接触部位の偏りが細胞の移動を方向付ける
細胞生物学:E2Fの中間的な活性状態が細胞の運命決定のカギとなる
分子生物学:mRNAの核外輸送と発現を支えるdsRNA形成
遺伝子調節:トランスポゾンの外適応で生じたRNA誘導型転写因子
計算生物学:膜タンパク質の可溶性バージョンの計算による設計
構造生物学:苦味受容体のクライオ電子顕微鏡構造