Nature ハイライト
Cover Story:大脳皮質を読み解く:マウス脳における神経接続と機能の詳細なマッピング
Nature 640, 8058

Allen Institute
脳の働きを明らかにすることは、ニューロンの機能とそれらが位置するシナプスの構造を理解することに他ならない。今週号のMICrONS(Machine Intelligence from Cortical Networks)コンソーシアムからの7報の論文によって、この目標が近づいている。これらの論文は、マウスの視覚皮質に存在する20万個の細胞間の5億2300万に上るシナプスの詳細な地図に加え、マウスが多様な視覚刺激を受けた際に記録された約7万5000個のニューロンの機能画像を提示している。基幹論文では、S Seung、C Reid、A Tolias、X Pitkow、J Reimer、F Collman、N da Costaたちの各研究チームが、データセットを紹介(表紙画像参照)しており、da Costaたちはさらに、視覚皮質の皮質コラム内におけるニューロン間の接続性を詳細に解析して配線図を作成している。また、Toliasたちは2報の論文で、ニューロンの機能に基づいた普遍的な配線規則を明らかにするとともに、理論を検証するためのデジタルモデルを開発し、新規刺激に対する脳の反応を予測するアルゴリズムを生成している。一方、Collmanたちは、異なるニューロンのタイプを構造に基づいて分類する方法を調べ、S Sorensenたちは、遺伝子発現データと照合したニューロンの接続パターンを解析している。そしてReimerたちは、大規模な電子顕微鏡再構築データの解析と自動校正を可能にする新たなツールを報告している。
2025年4月10日号の Nature ハイライト
天体物理学:M67の恒星の音響振動で対流層の進化を知る
量子物理学:量子コンピューターによる認証済みランダム性
磁性:スピン空間群で分類できる非従来型の磁気状態
物性物理学:遍歴電子から生じる磁性の予想外の挙動
コンピューティング:超低レイテンシーのコンピューティングチップ
医療技術:皮膚上の気化物質を測定する非接触型ウエアラブルデバイス
高分子化学:解重合によるブタジエンゴムの分解
地球化学:地球の冥王代の原始地殻の微量元素の特徴
生態学:育つ場所を選ぶ「高成長」樹木
考古学:アフリカ熱帯林における人類居住の最古の記録
遺伝学:ジャガイモ育種の壁をパンゲノムグラフで打破する
がん遺伝学:胃上皮はユニークな体細胞変異過程をたどる
神経科学:インコが口まねを得意とするわけ
ウイルス学:ウイルスの膜タンパク質に結合して、ウイルス粒子を作らせない
免疫学:マクロファージはファゴサイトーシスで取り込んだ細菌を免疫代謝的な宿主応答に役立てている
がん:がん細胞は周囲の細胞と一致協力して栄養素不足を乗り越える
細胞生物学:細胞周期に合わせてクロマチンをダイナミックに変化させるSMC複合体