Nature ハイライト 核物理学:陽子の魔法は有効 2005年6月16日 Nature 435, 7044 原子核に、その形や構造を乱さずに、何個の中性子を加えることができるだろうか。これがP Cottleたちが、今週号で扱った問題である。原子核は陽子と中性子からなり、原子中の原子核を取り巻く電子の殻と似た「殻」構造をもつと考えられている。陽子あるいは中性子の数が殻を充たすような「魔法数」であると、そうした核は特に安定になる。 しかし異常に中性子の割合が多い核の場合は、この魔法数自体が変わるのではないだろうか。軽い原子では、安定な原子核はほぼ同数の陽子と中性子を持つことが多い。陽子と中性子の比率が大きく異なる同位体(同一元素に属し、原子核中の中性子数だけが異なる原子どうし)は一般的に放射能を持ち、核崩壊を起こしてばらばらになりやすい。Cottleたちは、人工的に作ったケイ素の同位体42Siを調べた。この同位体は、硫黄原子の高エネルギービームをベリリウムに当てて作られ、陽子(14個)の2倍の中性子(28個)を含む。 14は一般に陽子の「準魔法数」で、充たされた副殻に対応する。しかし42Si原子核中の過剰な中性子によって、殻構造は変わるだろうか。Cottleたちは変わらないことを見いだした。さらに、この程度の中性子過剰ならば、核はひどくつぶれた球のように変形するだろうと考えられるにもかかわらず、陽子に対して副殻が閉じていると、この種の変形が防げられて核はほぼ球形に保たれるとCottleたちは指摘している。 2005年6月16日号の Nature ハイライト 神経生物学:神経細胞の多様化におけるレトロ転位 核物理学:陽子の魔法は有効 発生:腸での未分化細胞の維持に働くノッチ 宇宙:ほとんど融けていた初期小惑星 進化:巨鳥モアは成長に時間がかかった : 目次へ戻る