Nature ハイライト

神経生物学:神経細胞の多様化におけるレトロ転位

Nature 435, 7044

ゲノム中を跳び回る遺伝因子が、個体ごとに独特な神経回路の特徴の決定に重要な役割を果たしている可能性があるという。発生の際に生じる神経細胞の多様性は、遺伝的要因と環境的要因の組み合わせによって決まると考えられているが、この多様性をもたらす仕組みは解明されていない。  今回、F H Gageたちは、遺伝子操作したヒトのレトロトランスポゾン(移動可能な遺伝因子の一種)によって、ラットの神経幹細胞由来の前駆細胞で遺伝子の発現が変化し、神経細胞の運命が変わりうることを明らかにした。  また著者たちは、このヒトの遺伝因子がマウスの脳の染色体中を動き回れることも報告しており、人によって脳の構成や機能に違いがあるのは、動く遺伝因子がその原因となっている場合もあるのではないかと推測している。

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