Nature ハイライト
構造生物学:代謝の中心的酵素の解明
Nature 568, 7753
ATP-クエン酸-リアーゼ(ACLY)は、クレブス回路の代謝物であるクエン酸からアセチル補酵素A(CoA)を合成する働きをしていて、これによってアセチルCoAが不可欠な数多くの生化学反応(脂肪酸の生合成、タンパク質のアセチル化など)と糖質代謝とが結び付けられている。今回、ACLYの構造が2つの研究グループから報告された。K Verstraeteたちは、細菌、アーキアとヒトに由来するACLYの結晶構造を解き、酵素がATPを使ってアセチルCoA形成を進める様子を明らかにしている。また、この研究によって、中心的な炭素固定機構の進化の起源について情報が得られた。もう1つの研究では、L Tongたちが、新規に開発された阻害剤と複合体を形成したACLYの構造をクライオ(極低温)電子顕微鏡を用いて明らかにしている。ACLYは細胞の増殖に必要なため、抗がん剤の標的となる。この阻害剤はクエン酸結合部位の近くに結合し、その結合を妨害する。どちらの研究も、新しいACLY阻害剤の開発に役立つだろう。
2019年4月25日号の Nature ハイライト
地球化学:沈み込み帯前弧で失われる炭素
神経科学:音声を作る神経機能代替技術に向けて少し前進
微生物学:ヒト腸内微生物相の構成をこれまでにない分解能で明らかにする
医学研究:MSI腫瘍におけるWRNの合成致死性
惑星科学:火星にメタンは見つからなかった
惑星科学:火星大気への砂嵐の急速な影響
触媒:温和なアンモニア合成方法
細胞生物学:抵抗の最も少ない道に向かう
構造生物学:代謝の中心的酵素の解明