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2015年2月号Volume 12 Number 2
うつ病研究の最前線
世界中で深刻な問題となっているうつ病。その治療は、薬物療法と認知行動療法と呼ばれる精神療法が一般的だが、効果が見られる患者は一部のみで、抗うつ薬に至っては50年以上大きな進展がない。現状を打開しようとさまざまな視点から研究が行われており、特に、高い効果が認められる認知行動療法の神経科学的検証や、統合失調症などの遺伝子多様体の発見につながった遺伝子解析の手法には注目が集まっている。確実な治療法を見いだすため、そしてうつ病を根本から理解するための、最新の取り組みを紹介する。
Editorials
再現性向上を目指して論文誌が団結
生物医学研究の品質管理を改善し、科学に対する国民の信頼を高めることを目指して、主要な学術論文誌が研究成果の報告に関する諸原則に合意した。
News
キュリオシティ、火星のメタンを嗅ぎつける
NASAの火星探査ローバー「キュリオシティ」が火星表面でメタンを検出した。量はわずかだが、そこには明らかな「動き」があった。
グラフェンの新たな利用価値:プロトン透過能と防弾性
注目の素材グラフェンに、プロトンを透過する能力と、「弾丸」の衝撃を吸収する能力があることが、新たに明らかになった。
ヒトは赤外線を見ることができる
ヒトは、いわゆる「可視光」ではない赤外線を視認できるようである。実際に赤外線を見た研究者がその謎に挑んだ。
フィラエの64時間
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した彗星着陸機フィラエは、電池切れまでの64時間で、彗星に関する我々の認識を大きく変えた。
自然保護区の世界標準へ、「グリーンリスト」の取り組み
保護区の選定基準は曖昧で、中には無意味な保護区も存在する。こうした問題を解決し生物多様性を増進するため、国際自然保護連合は保護区の基準を新たに設けた。
「プラチナ」ゲノムで疾患に迫れ
公式ヒトゲノム配列には記されていない疾患に関連する領域を突き止めようと、完成度の高いヒトゲノム配列の組み立てに複数の研究チームが取り組んでいる。
増えつつある脳腸相関の証拠
腸内細菌が心の健康に影響を与えるという説に支持が集まっている。
News Features
認知行動療法の効果を検証するには
認知行動療法は最もよく研究されている精神療法だが、この治療法がうつ病患者に効く仕組みはいまだに解明されていない。
とっておき年間画像特集2014
この世界を解き明かそうとする研究者らの絶え間ない探求によって、2014年も素晴らしい発見がたくさんありました。この特集では、そうした研究成果や自然災害について、宇宙のはるかかなたから地球の深海まで、2014年に得られた画像の中から選りすぐりのものを紹介します。
Comment
うつ病の分子機構解明に向けて
世界的に深刻な問題となっているうつ病の分子機構を解明するためには、10万人以上の人の遺伝的データを分析する必要があると、米国立精神衛生研究所のディレクターを務めたSteven Hymanは提案する。
Japanese Author
網膜内部に血管が入り込まない仕組みを、分子レベルで解明!
生体には血管網が張り巡らされており、血管を介してさまざまな物質が供給される。血管新生はがんなどで異常に活性化されるため、新生メカニズムの研究は世界中で盛んに行われている。一方で、血管が入り込まない組織(軟骨や発生期の網膜など)があることも知られているが、その排除メカニズム解明は全く進んでいなかった。このほど、久保田義顕・慶應義塾大学医学部准教授らは、血管網の可視化研究から、思いがけない仕組みによって血管が排除されていることを突き止めた。
News & Views
治療法改善のための最善の戦略とは
うつ病の研究には、抑うつ様行動を示す従来からのマウスモデルがよく使われているが、ヒトのうつ病の全体像を従来のマウスモデルで完全に把握することは不可能である。このフォーラムでは、治療法の改善を目指した戦略について、専門家たちが提案する2通りの見解を紹介する。
解明が進むがん免疫療法
PD-1経路の遮断により抗腫瘍免疫を回復させる免疫療法は臨床で目覚ましい成果を挙げているが、作用機序には不明な点が多い。今回、この治療法に対して特に反応性の高い患者の特徴や、この治療法が有効ながん種が新たに明らかになった。さらに、この治療法の標的が腫瘍の新抗原であることを裏付ける結果も得られた。
加速器研究にやってきた最高の波
「プラズマ・アフターバーナー」と呼ばれる、わずか30cm長の小型加速器を使って、従来の巨大な加速器の500倍の効率で電子を加速することができた。この研究結果は、低コストの加速器の開発につながる可能性がある。
News Scan
ステライルニュートリノ見つからず
中国で進む最新の検出実験は空振り
冬眠する動物からの健康アドバイス
クマやリスの冬眠の仕組みを、人間の健康に役立てようという取り組みが始まっている。