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2023年7月号Volume 20 Number 7
プラスチック汚染危機を解決する3つの方法
プラスチック製品が誕生して約150年。生産量は今後も増え続けると予測されるが、不適切に廃棄されたプラスチックが地球環境の至る所で問題を引き起こしている。プラスチック汚染を食い止めねばならない。そうした思いから、世界中の研究者たちは、政策、リサイクル技術開発、新素材開発という3つのアプローチから、解決策を探っている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「グリーン水素製造プラントが記録的変換率を達成」「世界最大のチョウとボトルネック効果」「恐竜の羽毛を食べていた甲虫の幼虫」「JWSTが遠方の巨大ガス惑星の砂嵐を発見」、他。
News in Focus
ウェッブ宇宙望遠鏡で系外惑星の大気の有無を確認
地球サイズの惑星を7個も持つことで話題になったトラピスト1系の惑星の1つ、トラピスト1b。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で「大気はないとみられる」という結果となったが、この知見は系外惑星研究の新時代の到来を告げるものだ。
研究活動のCO2排出量はいか程?
天文学から生物学まで、さまざまな分野の科学者が 研究活動のCO2排出量を意識し始め、脱炭素化に取り組んでいる。
光を「時間スリット」で干渉させる
光を二重スリットを通過させて干渉させる実験の「時間スリット」版が行われ、周波数スペクトルに干渉縞が観測された。
安価な光学顕微鏡で超高分解能を実現
安価な顕微鏡と技術の力を組み合わせることで、数億円の顕微鏡を上回る高分解能画像を得られることが報告された。
中世の月食記録が火山噴火を照らし出す
古い文書に見つかった「消える月」という言葉と詳細な記述。こうした歴史的文書に記された月食の色を手掛かりに、1100~1300年における 火山噴火の気候への影響が明らかにされた。
ティラノサウルスの顔が変わる?
現生爬虫類の頭蓋や歯との詳細な比較研究によって、非鳥類型獣脚類恐竜の歯が鱗でできた唇で覆われていた可能性が示された。
タコはこうして足で味わう
タコやイカが吸盤で物の表面を味わうことができるのは、飛び抜けて特殊化されたタンパク質のおかげと分かった。そしてこのタンパク質は、動物が生きる状況に合わせて進化してきた。
てんかん手術をバーチャル脳で支援
脳スキャンデータを用いて作られたデジタルモデルは役立つか? 現在進行中の臨床試験でその真価が検証されている。
老化を食い止めるには? 5つの生物種から手掛かり
老化には、RNAポリメラーゼⅡの移動速度を減速させる「スピードバンプ」の摩耗が関係していることが報告された。
大気汚染ががん化を促進する仕組み
微粒子による刺激が炎症環境を作り出し、それが引き金となって、肺に既に存在している遺伝子変異を持つ細胞の増殖が促進されることが、マウスを使った研究で示された。
Features
プラスチック汚染危機を解決する3つの方法
研究者たちは、政策、リサイクル技術、新素材という3つのアプローチからプラスチック廃棄物問題の解決策を探っている。
メンタルヘルスケアにもAI時代が到来?
今日のメンタルヘルスケアアプリの数々は、メンタルヘルスケアの自動化に向けた70年に及ぶ努力の成果である。今、GPT-3をはじめとする大規模言語モデルが、その利用について新たな倫理的問題を突き付けている。
Japanese Author
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胎児の造血幹細胞は血液をほとんど作らない!
血液細胞は、造血幹細胞が細胞分裂を繰り返すことで作られると考えられている。横溝智雅・熊本大学特任助教(現在、東京女子医科大学講師)らは、全ての血液細胞の源であるはずの造血幹細胞が、胎児でどのように発生し、造血が行われているかをマウスで詳しく調べて、驚いた。胎児の血液細胞の大部分は、造血幹細胞から作られていなかったのだ。
News & Views
金属酸化物のケージでアメリシウムを捕らえる
使用済み核燃料から放射性元素アメリシウムを分離できれば、核廃棄物の長期的な危険性を低減できると思われる。今回、高酸化状態のアメリシウムと選択的に結合する無機分子ケージによって、新たな分離戦略の可能性が開かれた。
細菌の収縮注入系を改変して細胞内へタンパク質を送る
細菌の収縮注入系を再設計することで、タンパク質を哺乳類細胞内に送り込むための「プログラム可能な系」が開発された。このシステムはカスタマイズ可能であることから、多数の生物医学用途への扉を開く。
ガンギエイの「翼」の起源が明らかに
ゲノムの塩基配列を解読し、さらにゲノム領域間の相互作用がどのように行われるかを推定して、ガンギエイなどエイ上目魚類に特徴的な翼状のヒレが、2億年以上前にどう進化したのかに関する知見を得た。
髪色を維持する幹細胞は上下に動いて分化のドグマに逆らう
メラノサイト幹細胞は、毛髪の成長に合わせて毛包で上下に移動し、存在する場所によってメラノサイトに分化したり、幹細胞のアイデンティティーに戻ったりすることが観察された。この観察結果は、成体幹細胞についての長年の仮説に疑問を投げ掛けている。
染色体外DNAはがん化の前から出現している
染色体外DNAと呼ばれる環状DNAの一種は、がん組織でのみ観察されると考えられていた。このDNAが、がん化する前段階の組織から見つかり、早期から悪性化に積極的に関与している可能性が示唆された。
Advances
ペットにウイルス
インフルエンザウイルスがイヌに感染し変異株が生じている例が見つかった。
Where I Work
上田二郎
上田二郎(うえだ・じろう)は、スミソニアン国立アジア美術館(米国ワシントンD.C.)の修復師
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