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2023年8月号Volume 20 Number 8
更年期の女性の脳で起きている変化
女性は閉経後に人生の約3分の1の時間を過ごす。閉経への移行期は、アルツハイマー病など、閉経後の神経変性疾患のリスクに影響を及ぼし得ることが近年分かってきた。しかし、その仕組みの解明に向けた研究はまだ始まったばかりである。
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自然の恩恵を、都市の全ての人に平等に届けるには
世界有数の大都市、東京。この地で2023年2月28日、都市と自然との間の複雑な問題を解決に導く方法、そして人と自然が共存共栄する方法を探るシンポジウム「都市、自然、持続可能な開発目標(SDGs)」が開催された。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「白く輝く仕組みは、色素粒子中の分子の『スポーク』」「古代のハンターが参照した最古の『設計図』」「『スマート』縫合糸登場」「蚊の食欲をそそる石鹸の香りはどれ?」他。
News in Japan
柳町隆造氏、エリオット・リーブ氏、ナリニ・マラニ氏に京都賞
2023年京都賞は、哺乳類の受精を体外で再現した柳町隆造氏、 量子多体系の解析手法を築いたエリオット・リーブ氏、 声なき者の声を表現する美術家ナリニ・マラニ氏に贈られる。
News in Focus
ブラックホール画像が捉えた深淵の渦とその正体
M87銀河の観測結果の最新の分析で、その中心にある超大質量ブラックホールと強力な物質ジェットとの関係が見えてきた。
思考がのぞかれる?人の心を読む機械登場
頭の中のつぶやきを、脳スキャンとAIで読み取る研究は、心のプライバシーを脅かすだろうか?
アルツハイマー病の発症を遅らせるまれな変異
早期発症型認知症の素因がある人で見つかった遺伝的レジリエンス(回復する力)が、新しい治療法を切り開くかもしれない。
「息を止めて」潜るアカシュモクザメ
冷たい深海での捕食行動を有利にするため、アカシュモクザメは潜水時に鰓を閉じて体温を維持しているらしい。
経口避妊薬のOTC医薬品化をFDA諮問委員会が支持
米国でも経口避妊薬が処方箋なしで購入できるようになれば、女性の健康に恩恵をもたらすと、諮問委員は述べている。
RSウイルスワクチン世界初承認
数十年にもわたる探求が実を結び、米国の規制当局がRSウイルスワクチンの使用を承認した。
サウジアラビアの大学による大学ランキング操作の手口
サウジアラビアの大学が、論文被引用数の多い海外の研究者に「主たる所属先」を変更するよう働き掛け、さまざまな世界大学ランキングの順位を上げていた。
トポロジカルな量子コンピューターに必要な粒子を生成
エラーが起こりにくいトポロジカルな量子コンピューターの実現に必要な、非可換エニオンと呼ばれる新奇な粒子が作り出された。
Features
更年期の女性の脳で起きている変化
女性は閉経後に人生の約3分の1の時間を過ごす。閉経への移行期は、その後の女性の脳の健康に影響を及ぼし得ることが分かってきたが、その仕組みの解明に向けた研究は始まったばかりだ。
「性差のある疾患」への研究助成のジェンダーギャップ
患者に女性が多い疾患の研究には、助成額が少ない傾向が見られる。しかし、こうした疾患への投資を増やすことで、男女を問わず大きな恩恵がもたらされる可能性がある。
Japanese Author
脳のタウ異常蓄積を脳脊髄液で検知し、原発性タウオパチーを鑑別
生前に確定診断できるタウオパチー(脳内にタウタンパク質が異常蓄積する疾患)は現在、遺伝性のものと、アミロイドβタンパク質の異常蓄積を特徴とするアルツハイマー病のみだ。ワシントン大学医学部の佐藤千尋氏と堀江勘太氏らは、この疾患のバイオマーカーを求め、 脳と脳脊髄液中のタウ種について、相関関係を詳細に解析。脳脊髄液中の特定のタウ種が、原発性タウオパチーの指標となり得ることを見いだした。
News & Views
ヒトのパンゲノム参照配列が得られた
「パンゲノム」とは、個体間の遺伝的多様性も考慮に入れたDNA塩基配列の集積である。ヒトパンゲノムの構築と、そこから得られる知見について、4人の科学者が議論する。
光合成の水分解過程を最新技術でひもとく
結晶構造解析、分光法、量子化学計算の最新ツールを用いることで、光合成の水分解反応を触媒する複合体の、これまで謎に包まれていた一連の中間状態が明らかになってきた。
全能性幹細胞の誘導と維持が可能になるかもしれない
哺乳類の発生の最初期段階では、個々の細胞が新たに個体全体を形成する無制限の潜在能力を持っている。研究者らは、こうした細胞を実験室で増殖させるという目標に近づきつつある。
思考そのものが腫瘍増殖を促進する仕組み
腫瘍細胞は脳の神経細胞(ニューロン)との結合を形成できる。ヒトの脳腫瘍に関するさまざまな種類の証拠が検討され、腫瘍とニューロンのこのような相互作用が、認知や生存期間に与える影響についての手掛かりが得られている。
Advances
葉緑体のダイナミックな変化
細胞内でガラス状態に転移して光の吸収を高めている。
Where I Work
Andrea Terán-Valdez
Andrea Terán-Valdezは、ハムバトゥ両生類研究保全センター(エクアドル・サンラファエル)の保全生物学者