2012年11月号Volume 9 Number 11
固体メーザーの室温発振が実現
レーザーは光通信に使われ、現在の情報社会の大黒柱となっている。レーザー技術の爆発的展開のきっかけとなったのが、1970年にベル研究所の林厳雄たちが実現した固体レーザーの室温発振だった。今回、歴史的にはレーザーの兄貴分にあたるメーザー(マイクロ波領域の指向性の高い電磁波)が、40年以上も遅れたが、ついに、室温発振に成功した。具体的な物質名は、ペンタセン分子分子をドープしたp-テルフェニルである。通信、電波天文学、分光学など、幅広い応用が期待されている。
Editorials
科学的根拠に基づいた銃規制をめざせ
米国の国会議員は、銃器に関連した暴力に関する研究を奨励し、イデオロギーではなく、事実に基づいた銃規制法制定の環境整備をめざすべきだ。
News
幹細胞バンクの構築で治療法開発の道を開く山中教授
山中教授が、臨床試験に用いる人工多能性幹細胞の備蓄を計画している。
治療可能な珍しい自閉症
代謝経路の遺伝子の変異で起こる自閉症が見つかった。このタイプの自閉症は、栄養補助食品(サプリメント)で治る見込みがある。
男性用ピルの実現が近い?
ホルモン剤を使わずに、雄のマウスを可逆的に不妊化できる方法が見つかった。
深海トロール漁が大陸斜面を削ると?
小型エビを捕獲する深海トロール漁は、起伏に富んだ海底を平坦にして、そこに住む生物の種類を大きく変えてしまうおそれがある。
父親の年齢が高いほど、多くの変異が子に伝わる
最新のゲノム研究により、子どもの自閉症などが、父親の年齢と関連するらしいことが明らかになった。
がん幹細胞を初めて追跡した
遺伝学的技術を使って腫瘍を観察した結果、腫瘍のごく一部の「がん幹細胞」が、腫瘍の増殖を推進していることが明らかになった。今回の発見が新しい治療法につながるかもしれない。
カロリー制限しても長生きすることはない
寿命に影響を与えるのは、遺伝と食事の質のようだ。
超高額の『基礎物理学賞』が誕生!
ロシアの億万長者が、1人300万ドル(約2.4億円)という科学賞を創設した。第1回の受賞者は9名で、総額2700万ドル(約21.6億円)。受賞した理論家たちは目を白黒させている。
News Features
科学としての歴史
過去の出来事を科学的に分析することで、未来を予想できるとする「歴史動態学」が登場した。既存の歴史学者は懐疑的だが、このアプローチは興味深い。
Japanese Author
霊長類の脳で、“下等な”動物の神経回路が果たしていた役割とは?
高度に発達したヒトやサルの脳神経系にも、ネコなどの“下等”な動物が持つ神経回路が残存している。神経生理学者の伊佐正・生理学研究所教授は、そうした“古い脳”にも重要な機能があることを新しい手法を用いて実証し、神経科学に新たな局面を切り開いた。
News & Views
進化の空白を埋める昆虫化石
デボン紀の完全な昆虫化石と思われる化石が発見された。これにより、有翅昆虫がいつ進化したのかについて、断片的だったさまざまな知識や情報が有機的につながるかもしれない。
ついに実現した固体メーザーの室温発振
メーザー(レーザーのマイクロ波版)の技術展開がこれまで限られてきたのは、極低温が必要であるなど、動作条件が実用にそぐわないからであった。しかし今回、ついに室温で動作する固体メーザーが開発された。
News Scan
ちょうどよい形のギター
厚さ68mmが最高の響きを持つことがわかった
転移前のがん細胞をキャッチ
超高速カメラにより、血液検査が可能になった