生態学:樹木種の多様性が森林の耐乾燥性を強化する
Nature Geoscience
2022年9月20日
70万種以上の森林地を分析し、世界中の森林のほぼ半数において、樹木種の多様性は乾燥に対するレジリアンスを高める可能性があることを示した報告がNature Geoscience に掲載される。今回の発見は、現在の森林の復元政策や植林政策に影響を与える可能性がある。
極度の干ばつは、森林の成長を著しく減速させ、枯死させることもある。樹木種の多様性はは乾燥に対するレジリアンスを増大させる可能性があるが、これは、地域的かつ少数の森林地に対してしか立証されていない。樹木種の多様性が、極度の干ばつにおいて、世界中のさまざまな種類の森林を安定させることができるかは現在のところ分かっていない。
Tao Wangたちは今回、全球の人工衛星データと70万種以上の森林地から得られた樹木種の多様性に関する証拠を用いて、樹木種の多様性が世界中の森林の、乾燥に対するレジリアンスに与える効果を見積もった。乾燥に対するレジリアンスは、湿潤熱帯広葉樹林のような、森林地内の平均的な樹木種数が65種である樹木種に富む森林で最も高くなり、湿度の低い林地のような樹木種が少ない森林(平均的な樹木種は2〜3)で最も低くなることが分かった。著者たちは、樹木種の多様性を高めることは世界中の44%の森林で乾燥に対するレジリアンスを強化させ、湿度の低い林地や亜熱帯乾燥森林のような乾燥して干ばつに弱い森林で最も効果が高いと予測している。研究チームはまた、現在の植林地を単一栽培から4種類の混合へと変換することで、全球の植林地の耐乾燥性を3.2%増加させることができると推定するのモデルを開発した。
著者たちは、今回の知見は地球温暖化の結果として起きる可能性のある頻発する強い干ばつに対して森林の耐えられるようにする上での、樹木種の多様性を回復させることの重要性を強調していると結論付けている。
doi:10.1038/s41561-022-01026-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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