謎めいた疾患に関する遺伝的な手掛かり
Nature Genetics
2016年10月18日
A genetic clue to a mysterious disorder
診断が難しい疼痛性疾患である関節可動亢進型エーラスダンロス症候群(EDS III)の遺伝的基盤について報告する論文が、今週掲載される。
EDS IIIは、さまざまな疾患の複合体で、説明のつかない複数の症状(例えば、頭痛、体の痛み、皮膚潮紅、激しいかゆみ、胃腸障害)と関節の過可動性という特徴がある。こうした相互に関係がないように見えるさまざまな症状は、症状の間の根本的関係が確定していないため、心理的要因又はその他の要因によるものと考えられる傾向がある。
今回、Joshua Milnerたちは、EDS IIIと一致する遺伝性疾患を持つ米国の96人(35家系)を集めて研究を行った。これらの患者は、免疫応答の一環として産生されるタンパク質であるトリプターゼの血清中濃度が高かったが、それ以外の免疫細胞障害の徴候は見られなかった。Milnerたちは、遺伝子マッピング法と遺伝子コピー数検査を用いて、2種類のトリプターゼのうちの1つ(α-トリプターゼ)をコードする遺伝子(TPSAB1)のコピー数が通常よりも多いことを35家系全てで確認した。TPSAB1遺伝子のコピー数は、上記の症状の重度と相関していた。
次にMilnerたちは、米国の患者記録の大型データベースを調べて、血清トリプターゼ濃度が高かった患者の全てが、TPSAB1遺伝子のコピー数が通常より多かったが、EDSや免疫細胞疾患の診断はなかったことを明らかにした。また、Milnerたちがこれらの患者を問診したところ、最初の研究で対象となった患者の症状に類似した症状が判明した。
以上の新知見によって、EDSの場合に似た症状を示し、EDS類似の家族歴がある患者の診断が向上する可能性がある。α-トリプターゼの完全な欠損が一般に見られ、それによって既知の臨床上の問題が起こっていないため、今後、α-トリプターゼを標的とする治療法を模索する研究が行われる可能性があるとMilnerたちは考えている。
doi: 10.1038/ng.3696
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