注目の論文

【加齢】アンチエイジング特性がさまざま種で保存されている天然化合物

Nature Communications

2019年2月20日

Ageing: Natural compound with conserved anti-ageing properties

酵母、線虫などの生物種やヒト培養細胞において、細胞を保護し、老化を遅らせる天然化合物が見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。

加齢は細胞に特異的な変化を生じさせるが、寿命を延ばす効果のあることが知られる操作の大部分は、オートファジーという細胞内過程を促進する。オートファジーは、細胞内の損傷した構成要素(タンパク質、細胞小器官など)を除去・分解して、新たな分子の素材を生成する再利用プログラムだ。オートファジーの不全が起こると、毒性のある分子や損傷した分子が細胞内に蓄積し、神経変性疾患などの老化関連疾患を発症することがある。

今回、Frank Madeoたちの研究グループは、細胞の健康を増進させる植物由来分子の一群であるフラボノイド類のスクリーニングを行い、酵母細胞において抗加齢作用を示すものを同定した。その結果、アシタバ(Angelica keiskei koidzumi)の葉に自然に含まれるフラボノイドの一種、4,4’-ジメトキシカルコン(DMC)が、酵母、線虫、キイロショウジョウバエに対して寿命延長効果を持ち、ヒト培養細胞の加齢関連の機能低下を軽減することも判明した。また、長時間の心筋虚血(心臓への血流の低下)を誘発したマウスにDMCを投与すると、心臓細胞が保護され、組織死の領域が縮小した。DMCの細胞保護作用にはオートファジーの活性化が必要で、こうした作用は、種を超えて保存されている全身性代謝を変化させることが明らかになった。

これらの観察結果は、細胞の保護と寿命の延長におけるオートファジーの保存された役割を裏付けており、アンチエイジング治療薬の同定と開発への一歩になった。ただし、この方法がヒトの老化に伴う機能低下を防止する有望な治療法となるかを見極めるには、さらなる研究が必要となる。

doi: 10.1038/s41467-019-08555-w

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