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医学研究:妊婦がアセトアミノフェンを使用する際に求められる慎重な対応

Nature Reviews Endocrinology

2021年9月24日

Medical research: A precautionary approach to using paracetamol during pregnancy

Nature Reviews Endocrinology

妊婦がパラセタモール(別名アセトアミノフェン)を使用するのは、医学的適応がある場合に限られ、できるだけ短い期間に最小の有効量で使用すべきとするConsensus Statementが、Nature Reviews Endocrinology に掲載される。著者たちは、パラセタモールが胎児の発育にどのように影響するのかを調べるための集中的な研究活動を求め、その際に取るべき一連の予防措置を提案している。

パラセタモールは、妊婦に広く用いられており、推定によれば、米国の妊婦の最大65%、全世界の妊婦の50%以上がパラセタモールを使用している。しかし、パラセタモールへの出生前曝露が胎児の発育に影響を及ぼし、特定の神経発達症、生殖障害と泌尿生殖器疾患のリスクが上昇する可能性があることを示唆する研究が増えている。

今回、David Kristensenたちは、妊娠中のパラセタモールの使用に関連した研究(実験動物を用いた研究と細胞を用いた研究)とヒトの疫学調査のうち、1995年1月1日から2020年10月25日までに発表された論文のレビュー研究を実施した。今回のConsensus Statementには、この研究の概要が記述され、パラセタモールへの出生前曝露が、男性の場合にも女性の場合にも有害な神経転帰、泌尿生殖器転帰、生殖転帰をもたらす可能性のあることが報告されている。これらの疫学的知見は、動物モデルと細胞モデルでの有害作用を示す実験的研究によって裏付けられている。

Kristensenたちは、このレビュー研究の結果に基づいて、予防措置を採用し、妊娠初期にカウンセリングを実施して、医学的適応がない限りパラセタモールの使用を控えることを妊婦やその他の関係者に伝えるべきであり、パラセタモールを使用すべきかどうか迷った場合や長期使用する場合には医師や薬剤師に相談し、できるだけ短い期間に最小限の有効量で使用することでリスクを最小化することを提案している。これらの推奨事項は、妊娠中の医薬品の使用に関する現在の一般的な助言と大きく異なるものではないかもしれないが、Kristensenたちは、パラセタモールが大量に用いられており、リスクは無視できると認識されているため、医療従事者と妊婦の両方に対してパラセタモールに特有のリスクコミュニケーションを行う必要があると考えている。

Kristensenたちは、米国食品医薬品局や欧州医薬品庁などの機関や関係学会に対して、疫学調査と実験的研究の両方に関する入手可能な全てのデータをレビューし、エビデンスに基づくリスク評価の結果を公表し、患者と医療従事者に有益な情報を提供することを求めている。また、Kristensenたちは、妊娠中のパラセタモールへの曝露の影響をさらに解明するため、今後のロバストなヒト疫学調査の設計に関するいくつかの提言を示している。

doi: 10.1038/s41574-021-00553-7

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