医学研究:米国の遠隔医療による中絶の安全性を評価
Nature Medicine
2024年2月16日
Medical research: Assessing the safety of US telehealth abortions
薬による妊娠中絶を遠隔医療で提供することの有効性および安全性の評価が、米国で行われた。6000人を超える患者が参加したこの研究によれば、遠隔医療での薬による妊娠中絶の安全性と効果は、これまでに報告されている対面での薬による妊娠中絶の場合に匹敵するという。
2021年に米国食品医薬品局(FDA)は、薬による中絶に使われる経口妊娠中絶薬ミフェプリストンについて、医療者との対面で投与するという要件を緩和した。これによって臨床医は、薬による中絶医療を「検査なしに」遠隔医療で提供できるようになった。すなわち、診察は完全にリモートで行われ、超音波検査や他の検査を行う代わりに、患者自身が申告する医療歴を用いて適格性を判断する。薬は、郵送で処方することも可能である。しかし、これまでの研究では対面投与によるミフェプリストンの有効性と安全性は裏付けられているものの、検査なしの遠隔医療における患者への直接投与による中絶に関する根拠は限定的でしかない。
今回、Ushma Upadhyayらは、カリフォルニア遠隔医療による在宅中絶(CHAT:California Home Abortion by Telehealth)研究で得られたデータを用いて、2021年4月から2022年1月までに米国の20州とワシントンD.C.で運営中の3カ所のバーチャル診療所から遠隔医療(ビデオ診療あるいは安全なテキストメッセージのやり取り)によって薬による中絶を受けた妊婦6034人について、彼らの追跡調査を行った。患者はミフェプリストンとミソプロストールを投与され、投与3~7日後と2~4週間後に、リモートで経過観察を受けた。その結果、97.7%はそれ以上の医療介入を必要とせずに中絶に成功したことが分かった。この数字は、対面での薬による中絶医療を調べた米国での以前の研究と同等である。また、深刻な有害事象の発生率は0.25%(輸血や大手術が必要になった例を含む)、子宮外妊娠の発生率は0.14%であった。これまでの対面での中絶医療の研究では、有害事象の発生率は0.2~0.5%、子宮外妊娠率0.2%とされているので、これも同等と言える。
Upadhyayらは、遠隔医療モデルは、電子機器を持っていない人や妊娠第一期が過ぎてしまった人など、どのような人のニーズや希望にも応えられる訳ではないが、遠隔医療モデルという選択肢を人々に提供することで、アクセスの幅を広げ、高まる需要に応じられる可能性があると述べている。Upadhyayらはまた、安全性に関する懸念や主張のために遠隔医療での妊娠中絶を制限する政策を再検討し見直すことが必要であることは今回の知見によって明確であり、中絶医療への公平なアクセスは確保されるべきであるとも述べている。
doi: 10.1038/s41591-024-02834-w
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