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神経科学:嗅覚のない人間は呼吸が異なる

Nature Communications

2024年10月23日

Neuroscience: Humans without a sense of smell breathe differently

Nature Communications

嗅覚を持たない人間は、嗅覚を持つ人間と比較して呼吸パターンが変化していることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この発見は、嗅覚を失った一部の個人に特定の健康状態が見られる理由について、洞察をもたらすかもしれない。

嗅覚の喪失(無嗅覚症)は、うつ病、孤独、および感情の平板化(感情反応の減少)と関連していることが多い。さらに、無嗅覚症は、嗅覚が正常に機能している人と比較して、平均寿命が短いこととも関連している。嗅覚と呼吸には複雑な相互関係があることから、Lior GorodiskyおよびNoam Sobelらは、嗅覚障害が呼吸パターンの変化と関連している可能性があるという仮説を立てた。

著者らは、24時間にわたって嗅覚のある21人と嗅覚のない31人を評価し、鼻腔内の気流を測定する装着型装置を使用して呼吸パターンをモニタリングした。その結果、すべての参加者の呼吸速度は、ほぼ同じであるものの、嗅覚のある参加者は、呼吸ごとに小さな吸気のピークが追加されており、1時間あたり合計で約240回多く吸気のピークがあることが分かった。この追加の吸気のピークは、参加者が無臭の部屋に置かれた場合には発生しなかったことから、この違いは嗅覚に関連しており、探索的なにおいを嗅ぐ行為を反映している可能性があることが示唆された。無嗅覚症の参加者は、この探索的なにおいを嗅ぐ行為を行わず、起きているときも寝ているときも、呼吸パターン全体に変化が見られた。

また、著者らは、参加者の呼吸パターンのみに基づいて、嗅覚を持つ参加者を83%の精度で予測することができた。著者らは、嗅覚を失った人々に見られる呼吸パターンの変化が、脳の活動の変化につながり、特にうつ病や不安感といった、嗅覚を失った人々に見られる精神および身体的な健康状態と関連しているのではないかと示唆している。

この発見は、嗅覚が人間の呼吸パターンに影響を及ぼす仕組みを明らかにしており、これは、無嗅覚症の一部の人々に観察される健康上の悪影響の一因となっている可能性がある。
 

Gorodisky, L., Honigstein, D., Weissbrod, A. et al. Humans without a sense of smell breathe differently. Nat Commun 15, 8809 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-52650-6

doi: 10.1038/s41467-024-52650-6

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