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神経科学:類似した脳波が、現実と想像のナビゲーションを促進するかもしれない

Nature Human Behaviour

2025年3月11日

Neuroscience: Similar brainwaves may fuel real and imagined navigation

Nature Human Behaviour

現実世界の環境における実際の動きと想像上の動きは、脳内では同じ神経メカニズムが使われているかもしれないことを報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。この発見は、現実世界の状況における人間の記憶をよりよく理解するのに役立つかもしれない。

空間的な記憶を形成し、想起する脳の能力は、空間を移動したり、将来の経験を想像したりする上で重要である。これまでのネズミを使った研究では、海馬(側頭葉内側にある)と呼ばれる脳の領域におけるシータ振動(theta oscillations)として知られる特定の脳波が、ネズミが空間を移動したり、移動を記憶したり想像したりするのに役立つ可能性があることが示唆されている。しかし、人間にも同様のメカニズムが存在するかどうか、特に現実世界の移動中に存在するかどうかは不明である。

Martin SeeberとNanthia Suthanaらは、臨床モニタリングを目的として内側側頭葉に電極を慢性的に移植したてんかん患者5人の脳活動を測定した。著者らは、現実世界での移動と想像上の移動の際に、この領域から発生するシータ振動を比較した。想像上の移動試験では、参加者はトレッドミルの上を歩きながら、現実世界のルートを移動することを頭の中でシミュレーションした。SeeberとSuthanaらは、現実のナビゲーションと想像上のナビゲーションのどちらにおいても、外部からの手がかりがないにもかかわらず、同様の脳波パターンが発生することを発見した。現実のシナリオでは、道路標識や地図などがこれに該当する。著者らはまた、神経データからルート上における個人の相対的位置を予測するためにモデリングも使用した。

この発見は、ナビゲーションと想像力に共通する神経学的枠組みを示唆しており、現実世界の状況における記憶の理解にも影響を与える可能性がある。しかし、著者らは、これらの発見を検証するには、より大規模で多様な母集団が必要であると指摘している。

Seeber, M., Stangl, M., Vallejo Martelo, M. et al. Human neural dynamics of real-world and imagined navigation. Nat Hum Behav (2025). https://doi.org/10.1038/s41562-025-02119-3
 

doi: 10.1038/s41562-025-02119-3

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