CO2除去はCO2排出量削減活動の代わりにはならない
Nature Climate Change
2015年8月4日
Carbon dioxide removal not a substitute for reducing emissions
人間の活動による二酸化炭素排出量の増加を原因とする海洋酸性化を元の状態に戻すには何世紀も要する可能性があるとした論文が、今週のオンライン版に掲載される。この研究では、現在の年間排出量の2.5倍の二酸化炭素を大気中から除去する作業を西暦2700年まで続けても二酸化炭素排出量を産業革命以前のレベルや低排出シナリオで予測された状態に再び戻すことはできないことが示唆されている。
今回、Sabine Mathesiusたちは、コンピューターモデルを用いて二酸化炭素除去(CDR)が海洋環境に及ぼす影響のシミュレーションを行った。(現在の年間排出量のおよそ半分に相当する)年間最大5ギガトンの炭素の抽出を実施するかなり大規模な計画とそれよりもはるかに規模が大きいがおそらく実現不可能と思われる年間最大25ギガトンの炭素の抽出を実施する計画が検討対象となった。
その結果分かったのは、積極的なCDRをもってしても、対策を講じない高排出シナリオにおける二酸化炭素排出量の影響を元に戻すには、人類が幾多の世代を経るという時間スケールが必要で、おそらくは千年もの期間が必要とされることだった。その一方で、Mathesiusたちは、海洋生態系とそれによって支えられた生物種が酸性度、温度、酸素量の摂動によって計り知れない危険にさらされる可能性が非常に高いことを指摘している。Mathesiusたちは、二酸化炭素排出量を削減するための意欲的な行動を直ちに実行することが海洋生態系に対する大規模な脅威を回避するための最も確実な方法だと結論づけている。
同時に掲載されるRichard MatearとAndrew LentonのNews & Views記事では、「端的に言うと、いったん海洋に入り込んだ炭素を抽出するのは容易なことではない。そもそも炭素が[二酸化炭素として]排出されることを回避することの方がはるかに有効な対策なのである」と記されている。
doi: 10.1038/nclimate2729
注目の論文
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが裏側の月火山活動の年代を特定Nature
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications