既存技術だけでコスト的に無理なく米国の電力部門の二酸化炭素排出量を削減できる
Nature Climate Change
2016年1月26日
Existing technologies can affordably cut US electricity sector emissions
既存の再生可能エネルギー技術を用いることで、発電コストを上げずに米国の電力部門の二酸化炭素排出量を大幅に削減できるという結論を示した論文が、今週のオンライン版に掲載される。
再生可能な電気エネルギー源からの電力に主に依存する送配電網を構築するには高コストの新しいエネルギー貯蔵技術が必要になるという考えが示されてきた。ところが、そうした貯蔵技術は、発電コストを引き上げてしまい、送配電網における二酸化炭素排出量の削減に法外なコストがかかる可能性がある。これまでの研究は、再生可能エネルギーとエネルギー貯蔵の組み合わせによって送配電網を安定化させる方法に着目しているが、広大な地域にわたって既存の再生可能エネルギー技術による断続的な電力を供給して電力需要を賄うことが二酸化炭素排出量にどのように影響するのかを調べた研究はなかった。
今回、Alexander MacDonald、Christopher Clackたちの研究グループは、既存の技術のみを用いて米国全土で実現可能な二酸化炭素削減レベルを調べた。この研究では、断続的発電のシミュレーションを行って、再生可能エネルギーによる発電量が最も高い地域に応じて、最小コストで電力の需要と供給を調和させる方法を見つけ出した。
その結果、2030年に米国の電力部門の二酸化炭素排出量を1990年比で80%削減でき、その際に蓄電施設を増やす必要がなく、発電コストも化石燃料による送配電網より9%減ることが分かった。このシミュレーションによる二酸化炭素排出量の削減の大部分は、新しい高効率の送電システムによって数多くの低コストの再生可能エネルギー源とエネルギー需要の中心地を結びつけるだけでなく、一部の天然ガス、原子力、水力による発電によって再生可能エネルギー発電を補完することで実現された。
同時掲載されるMark JacobsonのNews & Views記事によれば、今回の研究は「これまでの概念の枠を超え、再生可能エネルギーによる断続的発電と送電システムを組み合わせることで、エネルギー貯蔵を考慮せずに、化石燃料による電力の大部分をなくし、化石燃料による送配電網より低コストで電力需要を充足できることを明らかにする」ものとされる。
doi: 10.1038/nclimate2921
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