注目の論文
【気候科学】米国の国有林からの水の全流出量が減っている
Scientific Reports
2016年4月21日
Climate science: A reduction in water yield from US National Forests
今週掲載される研究論文によれば、米国において給水源となっている国有林と国有牧草地からの真水の量(全流出量)が気候変動によって減る可能性があるとされる。
米国の森林地帯は、国土全体の約29%にあたり、国内の真水供給量の半分以上をまかなっており、現在の米国の化石燃料由来の温室効果ガス排出量の10~20%を相殺している。米国の国有林は、国土面積の9%を占め、国内の給水源の14%に相当する。
今回、Ge Sunたちは、20の全球気候モデルから導き出された気候予測を用いて、米国内の170か所の国有林と国有牧草地による水供給と炭素隔離に対する気候変動の影響可能性を調べるためのモデルを作製し、2100年の生態系の生産力(バイオマス生成速度)が最大24%上昇する一方で、全流出量が4~7%減少するという推定結果を得た。Sunたちは、2100年までの間に降水量が増加する可能性が高いが、気温の上昇を原因とする蒸発量と蒸散量の増加によって相殺されてしまうという考えを示している。
炭素隔離の増加と生態系生産力の上昇は森林の成長を促進すると考えられ、それが乾燥傾向と結びつくと野火のリスクが高まる恐れがあるとSunたちは警告している。また、Sunたちは、全流出量の減少によって給水源と水中生息地が脅かされる可能性があるとも主張している。
doi: 10.1038/srep24441
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