現在の電気自動車は米国の1日の運転の大半に対応できる
Nature Energy
2016年8月16日
Today's electric vehicles could handle most US driving days
今週報告される論文によると、米国全体の自動車を使った個人の1日の移動の90%近くが、現世代の電気自動車によって1回の充電で行われるようになる可能性がある。この結果は、ニューヨークやヒューストンなどの、1人当たりのガソリン消費量がかなり異なる米国のさまざまな都市で当てはまっていることが見いだされた。
バッテリー式電気自動車(BEV)は、米国の輸送分野の温室効果ガス排出量の34%を劇的に減らすのに役立つ可能性がある。しかし、1回の充電でBEVが走行できる距離が限定されていることに対する懸念、いわゆる走行距離不安は、BEVの普及を妨げる最も大きな要因の1つである。
今回J Trancikたちは、米国における数百万の自動車を使った個人の移動に必要なエネルギーを評価して、既存の比較的安価なBEVが米国の運転習慣の要求を満たすことができるかどうかを判定している。その結果、2013年型日産リーフをモデル自動車として用いて、典型的な1日の走行距離分布の87%を走るのに必要なエネルギーを、BEVが満たしうることがわかった。さらに著者たちは、米国で最も人口の多い12の大都市圏を調べて、移動に使うエネルギー消費量、公共交通機関の利用者数、自動車への依存性に大きな違いがあるものの、こうした都市圏におけるBEVの普及可能性は84%から93%であることも見いだしている。こうした移動のために従来の自動車をBEVに置き換えれば、ガソリン消費量が60%減ると思われる。それでも著者たちは、走行距離がより長くより速い速度で走行する日がかなりの割合であり、祝祭日に多く見られるが、こうした日は、バッテリーが改善され充電インフラが拡大しても、BEVに置き換えることはできない可能性があることを指摘している。
関連のNews & ViewsでW Kemptonは「Trancikたちの今回の研究は、移動のニーズの大半を電気自動車がどのように支えるか示し、まだあまり普及していない理由を説明している」と述べている。
doi: 10.1038/nenergy.2016.112
注目の論文
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications
-
11月12日
気候変動:南極の氷が人為的な温暖化が1.5℃の温暖化の限界に近づいていることを示唆しているNature Geoscience
-
11月12日
惑星科学:ボイジャー2号が天王星をフライバイしたのは太陽の異常現象の最中だったNature Astronomy
-
11月8日
気候変動:プライベート航空による二酸化炭素排出量の大幅な増加Communications Earth & Environment
-
11月7日
地球科学:インドプレートとユーラシアプレートの収束の加速を説明するNature
-
10月25日
保護:深刻な絶滅の危機に瀕するスマトラトラに対してより大きな保護が必要Scientific Reports