注目の論文

【考古学】アイスマンの衣服は何からできていたのか

Scientific Reports

2016年8月19日

Archaeology: The Iceman’s clothes

チロルのアイスマンの衣服と矢筒に関して、その製作に用いられた動物種を明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究は、その衣服と矢筒が少なくとも5種類の動物の素材を用いて作られており、帽子にはヒグマが用いられ、矢筒はノロジカの毛皮でできていたことを示唆している。

5,300年前の自然のミイラで、「エッツィ」という愛称で知られるチロルのアイスマンは、1991年にイタリアのエッツタールアルプスで発見され、20年間の分析によってエッツィの祖先、食事、道具、生活様式、健康状態、服装に関する手掛かりが得られた。エッツィの保存状態は比較的良好なのだが、どのような動物種を使って衣服を作ったのかという点がほんど分かっていない。

今回、Niall O’Sullivanたちは、エッツィの衣服と矢筒に由来する9点の皮革断片のミトコンドリアゲノムの塩基配列を解読、解析することで、どの動物種の皮革断片なのかを明らかにした。そして、エッツィの帽子と矢筒には、それぞれ野生のヒグマとノロジカが用いられていることが判明した。エッツィが畑作と牧畜を行っていたことは、これまでの研究で断定されているが、O’Sullivanたちは、この帽子と矢筒が野生動物の狩猟と捕獲が行われていたことの証拠だとする見方を示している。

また、エッツィが着ていたコートが2種の動物(ヤギとヒツジ)の少なくとも4種類の毛皮を寄せ集めたものであることも判明したが、このことは、当時入手可能だった素材を使って場当たり的に縫い合わせて衣服を作っていたことを示唆している。エッツィのゲートルはヤギの革でできていることが分かったが、以上の研究結果は、銅器時代の人々が衣服を作る際に衣服の特質に応じて素材となる動物種を選んでいたとする仮説を裏付けている。

doi: 10.1038/srep31279

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度