注目の論文

生態学:バングラデシュの地下水汚染を予測する新しい帯水層モデル

Nature Communications

2016年9月28日

Ecology: New model predicts groundwater contamination in Bangladesh

Nature Communications

バングラデシュのダッカ付近に位置する深層地下水の帯水層が10年以内にヒ素で汚染される可能性のあることを明らかにした研究論文が、今週掲載される。今回の研究では、汚染された浅層地下水が市街地とその周辺地域の地下水源に流入する過程と考えられるものが、新しいモデルによって明らかになった。

世界の大都市の多くは、過剰利用され、汚染の恐れのある帯水層からの地下水に依存しているが、市街地での過剰揚水が郊外や周辺地域の地下水の水質に及ぼす影響については解明が進んでいない。その主たる理由としては、単純化された帯水層モデルを用いて地下水の流れを調べていることが挙げられる。天然の帯水層は、水が自然に閉じ込められた複数の岩石層からできており、これらの岩石層の組成によって、水の流れが影響を受け、汚染物質の分布が決まる。

今回、Holly Michaelたちは、バングラデシュのダッカで収集された地域的なデータに基づいて複雑な帯水層モデルを作成し、帯水層の不均一性と地下水の過剰利用がダッカとその周辺地域の地下水資源にどのような影響を及ぼすのかを調べた。その結果、市街地での過剰揚水によって地域的な(ダッカの周辺地域での)地下水位の低下が起こっており、帯水層の深い部分に向けて汚染された浅層水の下降流が起こりやすくなっていることが明らかになった。そして、ヒ素を含む汚染水が滞留する浅い帯水層からの地下水の選択流によって10年以内に周辺地域の深い帯水層(深さ150 m超)が汚染されることが、この帯水層モデルによって予測された。これまでは1世紀以内と考えられていた。

今回の研究では、複雑な帯水層モデルを使って都市部での地下水の流れを評価することの重要性が実証された。Michaelたちは、有効な汚染除去策と帯水層利用の適切な管理によって将来的なダッカとその周辺地域の地下水のヒ素汚染を緩和できる可能性を指摘している。

doi: 10.1038/ncomms12833

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度