【惑星科学】冥王星の表面に見える多角形の地形の説明
Nature
2016年6月2日
Planetary science: Explaining Pluto’s polygons
準惑星の1つである冥王星の氷表面上に奇妙な多角形の地形が観測されているが、厚さ数kmの固体窒素層の内部における対流によって形成されたものである可能性が高いことを報告する2編の論文が、今週掲載される。
冥王星の赤道域にある広大な楕円形の盆地(非公式名「スプートニク平原」)は(主に窒素からなる)氷で満たされており、中心部が周辺部より数十メートル盛り上がった幅10~40 kmの多角形が数多く見られる。この地形の幾何学的形状を説明するための機構としては、熱収縮と対流が提唱されている。
今回、William McKinnonたちは、ニューホライズン探査機による測定結果を用いて、推定された現在の冥王星上の熱流状態を説明するためには厚さ1 km以上の窒素氷の層の内部で対流が起こっていなければならないことを明らかにした。また、McKinnonたちは、数値モデル化によって、この多角形の横幅が長いことを対流の逆転によって説明できることを明らかにし、スプートニク平原の表面の氷の水平速度の計算結果をもとに、この表面が更新される期間を約50万年と推定した。McKinnonたちは、カイパーベルトにある他の準惑星でも類似の対流過程が起こって、氷の層が絶えず若返っているという考えを示している。カイパーベルトは、海王星の軌道の外側にある円盤状の領域で、彗星、小惑星やその他の小型の氷天体が含まれていると考えられている。
これと関連するAlexander Trowbridgeたちの論文では、スプートニク平原上の窒素氷の数値モデルを用いて、冥王星で激しい対流が起こっているという結論が示されている。また、Trowbridgeたちは、窒素氷の層の内部で脆性変形が起こっていないことが熱収縮と矛盾している点も指摘している。
これらの論文に関連してNature Geoscienceに掲載されるPaul Schenk and Francis NimmoのCommentary記事では、「冥王星とカロンは、太陽系のどこでも惑星過程が同じように働くことを明らかにしている。...そうした多様性と複雑性が観測される一方で、見覚えのあるものが地球のはるか彼方でこれほど観測されるのは愉快なことだ」と述べられている。
doi: 10.1038/nature18289
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