【環境科学】メキシコ市の自動車運転規制が土曜日にまで適用拡大されたが大気汚染抑制効果はなかった
Scientific Reports
2017年2月2日
Environmental science: Saturday driving restrictions have no effect in Mexico City
メキシコ市で実施されている自動車のナンバープレートによる運転規制は平日だけでなく、土曜日にも適用されるようになったが、それが大気環境の改善につながらなかったことを報告する論文が、今週掲載される。
メキシコ市では1989年11月に自動車の運転規制制度(“Hoy No Circula(今日は運転しません)”)が導入され、ナンバープレートの末尾の数字に応じて毎週月曜日から金曜日までのいずれか1日について自動車の運転が禁止された。その後約20年間にわたって、この運転規制は平日のみ適用されていた。ところが、2008年7月になって運転禁止が毎週月曜日から土曜日までのいずれか1日に改定された。
今回、Lucas Davisはメキシコ市に点在する29カ所の大気汚染測定所で毎時測定される大気汚染データを2005~2012年にわたって調べた。そして、8種類の大気汚染物質(一酸化炭素、オゾン、二酸化硫黄、二酸化窒素など)の濃度の解析が行われ、この運転規制の適用拡大によって大気環境が改善したことを示唆する証拠がほとんどないことが判明した。また、Davisは、自動車の運転規制によって住民が別の公共交通機関を利用するようになったかどうかも調べた。今回の研究では、2005~2012年の地下鉄、バス、路面電車の利用者数を調べた上で、車両運転者が運転規制を理由として大気汚染物質排出量の少ない交通機関に乗り換えたことを示す証拠がないという結論が示されている。
Davisは、運転規制の有効性が、代替的な移動手段を利用できることと車両運転者が別の大気汚染物質排出量の少ない交通機関に乗り換えることに前向きであることに依存している点を指摘しているが、その一方で、住民の収入が増え続けると、時間をさらに貴重なものと感じるようになり、その結果として、自家用車を好むようになるという考えも示している。
doi: 10.1038/srep41652
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