北極海の海氷減少に対する自然要因の寄与を定量化する
Nature Climate Change
2017年3月14日
Quantifying natural contribution to Arctic sea-ice decline
1979年以降、9月の北極海の海氷面積が全体的に減少していることについて、原因の半分まで(30~50%)が自然変動である可能性について報告する論文が、今週のオンライン版)に掲載される。今回の研究では、自然の内部変動と主に関連する大気循環の変化が北極海の夏季の海氷面積に影響を及ぼしていることが明らかになった。
今回、Qinghua Dingの研究チームは、夏季(6~8月)の大気循環が9月の海氷面積にどのような影響を及ぼすのかを調べた。この研究では、大気大循環モデルと海洋海氷モデルと再解析データを併用して、大気循環すなわち海氷に影響を及ぼす3つの要因(気温、湿度、下向き長波放射)の解析が行われた。その結果、海氷減少の最大60%に対して大気循環の変化が寄与していることが判明した。
次にDingたちは、大気循環の変化が自然現象なのか、人間活動の影響によるものか、という論点に取り組み、大気循環の変化の約70%が自然の内部変動を原因としていることを明らかにした。この新知見では、高緯度の大気循環が海氷に影響を及ぼしており、10年トレンドの解明が進めば、季節スケールや10年スケールで海氷面積を予測する能力が高まる可能性のあることが明確になっている。
同時掲載のNeil SwartのNews & Views記事には以下のように記されている。「最近の北極海の海氷の変化は、主として温室効果ガスの増加などの外部強制力に応じた全体的な長期的海氷減少とそれより短期的で気候の内部変動を原因とするランダムな変化という2つの要素によって引き起こされている。……これまでは、北極海の海氷の長期的減少という観測結果に対する人為的な温暖化と気候の内部変動の相対的寄与度が明確に理解されていないことが課題となっていた」。「Qinghua Dingたちは、観測された夏季の北極海の海氷減少の約半分が、大規模な大気循環に自然に起こった変化を原因とするものだったと説明している」。
「人為的な温暖化が北極海の海氷減少をもたらしたことは、広範な証拠によって明らかになっており、Dingらの研究結果では疑問視されていない。むしろ、これまでに観測された全ての海氷減少が人為的な原因によると考えるのではなく、人為的な強制に対する北極海の海氷の感受性がそれほど高くないと考えるべきことがこの研究の意義である」。
doi: 10.1038/nclimate3241
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