【保全】陸上の保護区を少し広げるだけで生物多様性が大きく向上する
Nature
2017年5月25日
Conservation: A little bit more land could do a lot for biodiversity
世界中の生物保護区の面積を少し増やせば、地球全体の生物多様性に大きなプラスの影響が及ぶ可能性があることを明らかにした論文が掲載される。今回の研究が着目した生物多様性の指標は、これまで一般的な研究対象ではなかったが、今後は保全計画や保全政策に携わる人々のために役立つと考えられている。
生物多様性は、特定の地域内に存在する生物種の数(種数)によって測定するのが一般的だが、この他にも生物多様性の側面として同じように重要なものがある。今回、Laura Pollockたちの研究グループは、種数だけでなく、系統的多様性(進化的関係の指標)と機能的多様性(栄養相互作用と資源獲得と関連した形質の指標)にも研究対象を広げた。今回の研究では、鳥類と哺乳類に対象が絞られているが、世界中の保護区の面積をわずか5%広げるだけで保護される生物種の範囲、系統的多様性または機能的多様性が3倍以上に増大することが明らかになった。
保護区は世界の生物多様性を守る機能を果たし、今では、全世界で保護区を協調的に増やすことが生物多様性の目標を達成するために必要なことを示す証拠が世界中で得られており、この目標を達成するためにさまざまな政策が実施されている。しかし、拡張すべき保護区を決める際にはそれぞれの地域に特異的な保全目的を考慮することが大事だ。Pollockたちは、多くの保全優先地域(例えば、マダガスカルと東南アジア)が生物多様性ホットスポットとして有名だが、生物多様性ホットスポットであるかどうかを手掛かりに保全優先地域の指定を行うと、保全計画によって達成可能な成果が十分に得られないことを指摘している。例えば、多様性が最も高い地域を優先的に保護するというやり方ではなく、空間的保全の最適化アルゴリズムを用いて保護区を5%拡大すれば、鳥類の種数が1,500以上多くなり、82億3600万年分も多くの進化的多様性が得られるという。
doi: 10.1038/nature22368
注目の論文
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが裏側の月火山活動の年代を特定Nature
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications