【生態】南極の陸上生物多様性を無視してはならない
Nature
2017年6月29日
Ecology: Don’t overlook Antarctica’s terrestrial biodiversity
21世紀の気候変動が南極の不凍地帯に与える影響を初めて定量的に評価した結果を報告する論文が、今週掲載される。この不凍地帯は、南極大陸のわずか1%にすぎないが、陸上生物多様性のほぼ全てが揃っている。ところが、大半の研究者から注目されず、気候変動が南極の生物種、生態系、それらの今後の保全に与える影響を解明する上で重大な欠落部分が生じている。
気候変動が南極の氷床と海水準に与えた影響の研究には多くの資源が投入されてきた。これに対して、気候変動とそれに関連した氷床の融解が南極の在来種(アザラシ類、海鳥類、節足動物、線形動物、微生物、植生を含む)に与える影響の評価は比較的最近になって始まったばかりだ。
今回、Jasmine Leeたちの研究グループは、今後の気候変動の予測において南極半島での変動が最も大きいことを明らかにした。気候変動に関する政府間パネルの2つの気候強制力シナリオのうちの強烈なシナリオによると、不凍地帯の面積が21世紀末までに17,000 km2以上増加する可能性がある(約25%の増加)。南極大陸で不凍地帯が3倍増するという予測に基づくと、生物多様性生息地の利用可能性と連結性が大きく変わる可能性がある。
予想される生物多様性に対する負の影響が、メリットを上回るのかどうかは分かっていないが、南極での生息地の拡大と連結性の増大は、生物多様性にとってプラスの変化だと一般に解釈される可能性がある。Leeたちは、こうした変化から最終的には地域レベルの生物群集均質化の進行、競争力の弱い生物種の絶滅、侵入種の分布拡大につながる可能性があるという仮説を示し、温室効果ガスの排出量を削減でき、人間活動による気温上昇を摂氏2度未満に抑えられれば、不凍の生息地とそれに依存した生物多様性に対する影響を軽減できる可能性があると結論づけている。
doi: 10.1038/nature22996
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