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【惑星科学】前駆天体の溶融と蒸発によって決まった地球の化学組成

Nature

2017年9月28日

Planetary science: The melting pot that formed Earth

Nature

地球の独特な化学組成は、微惑星(惑星の前駆体)に由来する溶融岩石の蒸発によって決まった可能性のあることを示した2つの独立した研究が、今週掲載される。これらの研究によって得られた知見は、我々の太陽系における地球、火星とその他の岩石天体の形成過程を説明する上で役立つかもしれない。

コンドライト隕石は、太陽系の原始的状態を示し、地球の構成単位だったと考えられているが、その組成は、地球やその他の岩石惑星とは異なっている。この差異については、いくつかの説明が提案されているが、差異の全ての点を説明できていない。こうした理解不足を補う手掛かりの1つが、成長中の微惑星に由来する溶融岩石の蒸発というプロセスだと考えられている。今回、Remco Hinたちの研究グループは、分化した天体(例えば、地球やコンドライト隕石)におけるマグネシウム同位体の存在量に差があるという観測結果が、このプロセスによって説明できることを明らかにした。また、これとは別に行われたAshley NorrisとBernard Woodの共同研究では、地球上に特定の元素が枯渇している原因は、前駆天体上での溶融岩石の蒸発だった可能性があると結論付けられた。NorrisとWoodは、炉の中で岩石を溶融することによって、地球の形成期に生じた複数のプロセスを再現し、一部の元素が、溶融した岩石から生じた蒸気とともに流出し、その比率が地球で観測された比率に近かったという可能性を明らかにした。

この2つの研究グループは、微惑星同士の衝突(例えば、月を形成した衝突)によって成長中の天体の溶融と蒸発が起こった可能性があるという考えを示している。また、同時掲載のEdward YoungのNews & Views論文によれば、溶融と蒸発の物理化学的性質を理解することで、競合する惑星形成モデルの良し悪しを判断できるようになる可能性があるとされる。また、Youngは、衝突が特定の元素の枯渇に何らかの役割を担っているという考えを示したのは、この2つの研究が初めてではないが、今後、衝突によって惑星の化学組成が決まるプロセスに関する研究を活発にさせる可能性があると指摘している。

doi: 10.1038/nature23899

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