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【古生物学】恐竜を絶滅させた小惑星の衝突現場における生物の急速な回復

Nature

2018年5月31日

Palaeontology: Life found a way quickly at dino-ending impact site

Nature

恐竜を死滅させた小惑星の衝突現場で、生物が急速に回復していたことを報告する論文が、今週掲載される。

非鳥類型恐竜が絶滅したことで非常に有名な白亜紀末期(6600万年前)の大量絶滅では、全生物種の75%以上が絶滅した。この絶滅事象を引き起こしたのは、ユカタン半島(メキシコ)のチクシュルーブ近くの浅海に衝突した小惑星であった。この大惨事から全球規模の海洋生態系が回復する速度は地域によって差があり、メキシコ湾と北大西洋では最長30万年かかった。これは、チクシュルーブの衝突クレーターから離れた他の地域よりもかなり遅い。そのため、有毒金属中毒のような衝突に関連する環境効果によって、衝突クレーターに近い地域での回復が遅くなった可能性がある、とする学説が提唱された。

今回、Christopher Loweryたちの研究グループは、衝突クレーターの直下から掘削された岩石試料を分析した。この岩石試料には、衝突後20万年間の記録が保存されている。Loweryたちは、さまざまな微小化石(殻を持つ単細胞生物である有孔虫類や石灰質ナンノプランクトンなど)の変化を、生物学的活動の痕跡の化石とさまざまな元素の含有量(例えば、地球外由来のヘリウム3の流量からは堆積速度を推定できる)と共に調べた。

Loweryたちは、この衝突クレーターでは、大惨事のわずか数年後に生物が回復し、3万年以内にはチクシュルーブに多様で生産力の高い生態系が復活しており、その速度が衝突クレーターから遠く離れた場所と比べてはるかに高かったことを明らかにした。この新知見から、生物の回復に対して衝突関連の制御は働いていなかったことが示唆される。むしろ、衝突クレーター内では生物間の相互作用のような生態学的過程が生物の回復を制御していた可能性が非常に高く、Loweryたちは、このことが同様の急速な絶滅事象に対する海洋生態系の応答を解明する上で重要だという考えを提唱している。

doi: 10.1038/s41586-018-0163-6

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