注目の論文
植物の病原性真菌を介した炭素収支への影響
Nature Climate Change
2011年6月20日
A push from pathogens
北極圏ツンドラ地帯の生態系で発生した植物の病害が、植物の組成を変えることを通じて、炭素収支に対する気候変動の影響を変化させ、逆転させうることが明らかになった。その詳細を報告する論文が、Nature Climate Change(電子版)に掲載される。
気候変動は、植物の成長に直接影響することがあるが、捕食と病害への影響を通じて間接的に影響することもある。そして、植物の成長は、炭素貯蔵に影響するが、将来の気候に応答して放出される炭素量の予測は、いまだに不確実性が高い。
J Olofssonらは、スウェーデンのツンドラ地帯における積雪深さの増加が植物群落に及ぼす影響を7年間にわたって調べた。実験区域内では積雪深さを増加させたことで断熱効果が生じ、これが植物の成長に有利に働いたが、7年の研究期間中に寄生性真菌Arwidssonia empetriが大発生し、植物のバイオマスは減少した。積雪深さを増加させてから6年後には、この真菌による病気で、この地帯の優占植物種であるEmpetrum hermaphroditumのシュート(苗条)の大部分が死滅した。その後すぐに炭素交換量の瞬間値が測定され、その値は有意に減少していた。
doi: 10.1038/nclimate1142
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