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サメの視覚と嗅覚がゲノムから明らかに

Nature Ecology & Evolution

2018年10月9日

Shark’s sight and smell revealed through genomes

Nature Ecology & Evolution

ジンベエザメとトラザメは、青色光に合わせた視覚系を有し、嗅覚関連の遺伝子が少なくなっていることを明らかにした論文が、今週掲載される。研究チームは、サメ類と哺乳類に共通する調節遺伝子と生殖遺伝子も見いだしている。

サメ類を含む軟骨魚類は、その他の有顎脊椎動物から約4億5000万年前に分岐しており、独特な生殖形質や感覚形質を有する。しかし、軟骨魚類のゲノム資源は乏しく、その独特の生活様式を理解する妨げとなっている。

工樂樹洋(くらく・しげひろ)たちは今回、イヌザメおよびトラザメに関してゲノムとトランスクリプトームの塩基配列解読を行い、最大の現生魚類であるジンベエザメのゲノムアセンブリーを改善した。そして、サメのゲノムを他の脊椎動物のゲノムと比較することにより、軟骨魚類の進化が硬骨魚類よりも低速であることを明らかにした。調べた3種のサメのうち2種(ジンベエザメおよびトラザメ)では、光を感知するオプシンの遺伝子のレパートリーが少なく、短波長と緑青色を感知するオプシンが欠如していることが分かった。工樂たちは、ジンベエザメとトラザメでオプシン遺伝子の数が少なくなっている理由として、青色光しか届かない深度での生活への適応であることを挙げている。また、これら3種のサメは、いずれも嗅覚受容体ファミリーの遺伝子を3個しか持っておらず、嗅覚に関して通常とは異なる分子機構に依存していることが示唆された。

工樂たちはまた、サメにおいて、哺乳類で食欲、消化、繁殖力、および睡眠に関わるホルモンや受容体の遺伝子と類似の遺伝子も見いだしており、こうした分子機構が現生有顎脊椎動物の最終共通祖先よりも前から存在していたことが示唆されている。

doi: 10.1038/s41559-018-0673-5

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