21世紀末に世界の人々が同時に複数の気候ハザードに直面する可能性
Nature Climate Change
2018年11月20日
Simultaneous climate hazards could beset future populations
温室効果ガス排出の積極的な削減が行われなければ、世界の人々は2100年に3~6種類の気候ハザードに同時に直面する可能性があるという見解を示すReviewが、今週掲載される。
気候ハザードが人間に及ぼす影響は多方面にわたるが、これまでの研究の大半は、それぞれの気候ハザードを個別に扱ってきた。単一のハザードに焦点を合わせた視野の狭い解析では、気候変動が人間に及ぼす同時的・統合的な真の影響が反映されない恐れがある。
今回Camilo Moraたちの研究グループは、人間に対する気候変動の広範な脅威の解明を進めるために3280編の論文を系統的に検討し、10種類の気候ハザード(温暖化、洪水、干ばつ、熱波、火災など)と人間システムの6つの性質(健康、食料、水など)の相互作用467例をカタログ化した。その結果、気候の影響のうち、人間システムにプラスの効果あるいは中立的効果のあるものはわずかで、人間システムに有害なものが圧倒的多数であることが明らかになった。
次に、Moraたちは、全球的な気候ハザードへの曝露の変化の予測を、さまざまな温室効果ガス排出量シナリオの下でマッピングして、21世紀末にどういった集団がどの程度の気候ハザードに直面するかを評価した。その結果、温室効果ガス排出の積極的な削減が行われなければ、世界の人々が同時に1種類以上の気候ハザードに曝露される可能性があることが判明した。Moraたちは、このまま温室効果ガス排出量の減らない状態が続けば、世界の人々が同時に3種以上の気候ハザードに直面し、沿岸域の一部では最大6種の気候ハザードに直面する可能性があるという見方を示している。
将来的に複数の気候ハザードが人間社会に同時に影響を及ぼす可能性があるということは、我々が温室効果ガス排出量を緊急に削減しなければならないことを明確に示しており、我々は多様な適応策を策定しなければならない、とMoraたちは結論付けている。
doi: 10.1038/s41558-018-0315-6
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