注目の論文
南極の積雪量が増えて海水準上昇が鈍化した
Nature Climate Change
2018年12月11日
Antarctic snowfall mitigates sea-level rise
南極の積雪量増加が21世紀の全球的海水準上昇の緩和に役立ってきたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、南極氷床が短期的および長期的な海水準の変動を制御する重要な役割を果たしている点を強調している。
全球的海水準が上昇していることの主な原因は、海水温が上昇して海水の体積が増えたことと、氷河や氷床の融解が進んでいることにある。しかし、海水準の変化には積雪量の変化も関与している。これは、南極などの氷河地帯に「貯蔵」されている自然氷の量が影響を受けることによる。
今回Brooke MedleyとElizabeth Thomasは、氷床コア記録を用いて、1901~2000年の南極全体の積雪を再現した。著者たちは、南極大陸全体で平均すると、21世紀を通して積雪量が増加したことを明らかにし、この積雪量の増加が、気温上昇によって大気に含まれる水分が増加したことと結び付いているという考えを提唱している。また、積雪量の増加によって、1901年以降の全球的な海水準上昇が約10ミリメートル緩和されたという見解も示している。ただし、著者たちは、降雪による氷質量の増加分が海洋温暖化による氷質量減少の約3分の1に過ぎない点に留意する必要があるとし、人為的気候変動に関連した現在と将来の氷質量減少を降雪だけで十分に緩和することはできないとする考えを示している。
doi: 10.1038/s41558-018-0356-x
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