注目の論文
【地球科学】鉱物の新しい測定法でマントルの謎を解き明かす
Nature
2019年1月10日
Earth sciences: Novel mineral measurements explain mantle mystery
主要なマントル鉱物の1つで、地球表面では不安定なケイ酸カルシウムペロブスカイトに適用できる初めての室内測定法について報告する論文が、今週掲載される。この新知見により、地震波が異常な速度で移動すると考えられている沈み込んだ海洋地殻領域が上部マントルの底部に存在しているという見解が裏付けられた。
地震波が地球内部を通過する過程に関しては、モデルと実験室試験の結果がいくつかの点で一致しないことから、上部マントルと下部マントルとの境界(深さ560~800キロメートル)に化学的に異なる物質が存在し、それが沈み込んだ海洋地殻かもしれないことが示唆されている。その主要成分は、ケイ酸カルシウム(CaSiO3)ペロブスカイトという鉱物だと考えられている。しかし、CaSiO3ペロブスカイトは、地球表面よりも内部の高温の条件下では、地球表面の場合とは異なる立方晶構造となるため、実験室内での超音波速度測定はこれまで行われていなかった。
今回、Steeve Greauxたちの研究グループは、実験室内で立方晶CaSiO3ペロブスカイトを作製し、地球の上部マントル底部に相当する条件に至るさまざまな圧力と温度の条件下で、超音波速度測定を行った。その結果、CaSiO3ペロブスカイトの剛性が理論予測値より約25%低く、そのため、超音波はこれまで考えられていたよりもゆっくり移動することが明らかになった。Greauxたちは、この結果が、下部マントル最上部に海洋地殻が蓄積しているというこれまでの仮説の証拠になると考えている。
doi: 10.1038/s41586-018-0816-5
注目の論文
-
1月17日
進化:初期の人類は100万年以上前に過酷な砂漠の条件に適応したCommunications Earth & Environment
-
1月16日
人類学:鉄器時代のブリテンにおけるケルトの「ガールパワー」Nature
-
1月16日
環境:ノルドストリーム海底パイプラインの漏れによるメタン排出量の調査Nature
-
1月9日
古生物学:パンクとエモの化石が軟体動物進化の理解を揺るがすNature
-
1月9日
生物多様性:淡水生物の約4分の1が絶滅の危機に瀕しているNature
-
1月2日
地質学:イエローストーンの火山活動は北東方向に移動しているかもしれないNature