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【技術】エアコンの改造が二酸化炭素の除去に役立つかもしれない

Nature Communications

2019年5月1日

Technology: Keeping cool could aid carbon dioxide removal

Nature Communications

空調装置を改造して、二酸化炭素を貯蔵可能な合成燃料に変換するという方法によって、大気中の二酸化炭素を大量に除去できる可能性を示したPerspectiveが、今週掲載される。今回行われた予備的分析では、ドイツのフランクフルト・アム・マインに建つメッセタワーでこの方法を用いると、二酸化炭素の捕捉によって年間2000~4000トンの燃料が生成される可能性のあることが示唆された。

二酸化炭素の負の排出技術は、地球温暖化を抑制するために必要とされる。大気から二酸化炭素を除去することには、一般市民も科学者も関心を持っているが、その実現に対する産業界の意欲を高める要因がなく、政治活動も行われておらず、温暖化の抑制に必要な数十億トンスケールの実行可能な二酸化炭素除去技術が開発されていない。

このPerspectiveで、Geoffrey Ozin、Roland Dittmeyerたちの研究グループは、既存の再生可能エネルギーを動力源とする二酸化炭素除去技術を用いて空調装置を改造し、その場で大気中の二酸化炭素と水分を貯蔵可能な燃料に直接変換することを提案している。この研究では、大気中の二酸化炭素濃度を400 ppmと仮定し、事務所、食料品店、住宅での空気循環量を用いて二酸化炭素除去率を試算した。その結果、メッセタワーでこの技術を実施すれば、最大で毎時1.5トンの二酸化炭素が除去でき、ドイツ国内の食料品店(25000店舗)では、合計で毎時約1000トンの二酸化炭素を捕捉できることが明らかになった。今回の分析では、この技術を住宅に適用した場合、5~6部屋の住宅で毎時0.5 kgの二酸化炭素を捕捉できることが示唆されている。

このコンセプトは、太陽電池パネルを使った分散型エネルギー生成の場合と同じように、個人が「合成石油」を収集して消費することへの意欲を高める要因になる可能性があるとOzin、Dittmeyerたちの研究グループは主張している。

doi: 10.1038/s41467-019-09685-x

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